【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

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犯人

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 アーサーとエリザベスの元に、王太后となったマルガレーテが訪ねてきた。

「これは母上。どうされた」

 王太后の傍にはローズマリーが付き添っていた。足を悪くしたという王太后の為に、腕を取って支えていた。

 ここは私室で、もう直ぐ乳母がセシルを連れてくる事になっていた。王宮では子供は乳母が育てる慣習だ。それでも、出来るだけアーサーはセシルと共に過ごせるように配慮してくれた。

 エリザベスはそっと自分の女官に耳打ちをした。セシルと乳母がやって来たら隣の部屋で待機するように。女官は礼を取り知らせるために部屋を出ていった。

「いやね」王太后が言う。「随分警戒されてるのね」
「母上の過去の行いを鑑みた結果です」
「言っておきますけど、先王の毒殺は私ではありませんよ」
「そうでしたか。

 暗に、王太后が犯人だろうと告げる。王太后は持っていた扇子を投げつけた。

「何故私が自分の夫を殺さねばならないのですか!」
「自分の息子に毒を盛っておいてよく言う」
「動機がありません!」
「知るか。自分の胸に聞いて、俺にも教えてくれよ」

 投げやりになってアーサーはネクタイを外す。エリザベスはネクタイを受け取った。
 何の毒かは、調べが続いていたが、未だに特定されていない。

 エリザベスは以前のやり取りを思い出していた。

『──おそらく犯人は母上では
『それは…どうして?』
『毒の取り扱いは難しい。確実に殺そうとするなら慣れた毒を使うはず。母が俺に使ってきた毒ではなかった』
『では、誰が怪しいと?』
『前の時と現在、両方で生きていた人物だ。セシルは除外。レオンも生きていたが、当時は外遊していて不在だったから除外。母上も先の理由で除外。となると残っているのは──』


「ローズマリー嬢」

 アーサーの声で、エリザベスは我に返る。

「母上の女官も嫌になってきたろう。いつ殺されるか分からんしな。母上に仕えるのをやめたらどうだ」

 話を振られたローズマリーは、にこやかな笑みを崩さない。

「叔母上様は私を大事にしてくださいます。どこまでもお仕えするつもりです」
「いつまでも未婚では向こうにいる両親も気を揉んでいるだろう。相手を探してやろう」
「まぁ陛下、優しいのですね。でも私は、誰とも結婚するつもりはございません」

 アーサーは鼻で笑う。

「私の愛人になるかと言ったら?」

 思いがけない言葉にエリザベスがアーサーを見る。アーサーは澄ました顔でローズマリーを見ている。ローズマリーの表情は変わらない。

「ご冗談を。陛下には可愛らしい王妃さまがいらっしゃるではありませんか」
「お前は役に立つ。宮廷の華と言われているそうじゃないか」
「王妃さまを差し置いて、出過ぎた真似をいたしました」
「自覚があるなら自重しろ。王宮の支持を得て何を企んでいる」

 答えようとするローズマリーを王太后が止める。

「何を勘違いしているの?」

 王太后は冷たく言った。

「何を自重しろと言うの。企みなど何もありません。そこにただ立っているだけの王妃の力不足でしょうが」

 視線はエリザベスに向けられている。
 王太后はこう言いたいのだ。王宮の主としての役目を果たせていないと。ローズマリーの方が向いていると。

「そうは見えないから、こうして話をしているんだ」
「あなた方が戴冠式でダッカン国に行っている間、王宮のホステスを務めたのは、他でもないローズですよ。感謝こそされ、非難される言われは無いです」
「そうして見事、王宮での実権を握ったと」
「ああ言えばこう言う!もういいです。可愛い孫にも会わせてくれないんだもの。私はお払い箱ね」

 王太后は嘆くように頭を振る。そのまま踵を返していった。



 扉が閉まって、エリザベスはホッと胸を撫で下ろした。

「やはりあれくらいの揺さぶりでは、ローズマリーさんは尻尾を出しませんね」
「愛人にする気は無いぞ」
「知ってます」
「の割には随分動揺してたじゃないか」
「びっくりしただけです。もういいですから」

 アーサーは使用人にセシルを連れてくるように言った。直ぐに隣から乳母に抱えられたセシルがやって来て、アーサーは抱き上げた。

「まーま」
「ぱーぱと言いなさい」
「まーま」

 セシルは気まぐれだ。言葉を喋るようにはなっていたものの、喋らないときは喋らない。気がついたらどこまでも走ってしまうから、掴まえるのが大変だった。

「何にしろ、母上にくっついてる時点で、我々もローズマリーには手を出せない。何か決定的な証拠を見つけないと」
「この国の実権を握ろうと考えているのでしょうか。でも、いくら王太后さまが後ろ盾となっても、女性一人では国を治められません」
「俺と瓜二つだが、グレア人だしな。目的が分からないな」

 いろいろと話をしても、全ては憶測だった。ローズマリーが犯人という証拠は一つもない。他にも黒幕がいるのかもしれないが、とにかく王太后とローズマリーの力を削ぐのに注力しなければならない。

 アーサーが声を上げる。セシルに耳を思いっきり引っ張られて悶えていた。エリザベスは考えるのを止めて、二人に近寄った。
 

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