【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112

文字の大きさ
46 / 63

毒酒

しおりを挟む

 国王陛下の崩御に伴い、盛大な葬儀が営まれた。それに伴いアーサーが王に、エリザベスは王妃となった。即位式はアーサーの指示で簡素に行われ、戴冠式も身内だけで吉日を選んで後日、執り行うことになった。全てがあっという間で、矢のように慌ただしく過ぎ去っていった。


 前国王は急死だった。毒殺だった。ワインに毒が入っていたという。検分した医師から話を聞いていたアーサーは、直ぐにそのワインを持ってくるように言った。

 運ばれてきたワインのラベルを確認し、蓋を開ける。その匂いを嗅ぐと、グラスにワインを注ぎ、何と飲み始めた。

「アーサー!!」

 エリザベスはグラスを払おうと手を伸ばす。だが間に合わなかった。

「アーサー!吐いて!吐いて!」

 エリザベスは力の限り彼の背中を叩く。アーサーは直ぐにグラスに口に含んだワインを戻した。口を拭って、うなだれるように、ワインに目を落としている。
 
「アーサー…」
「──ははっ」

 肩を震わせたかと思えば、アーサーは顔を上げて笑い出した。この状況にそぐわない快活な笑い方だった。
 狂ったような姿に、エリザベスと同席する医師も、どう対応すればいいものか、言葉をかけあぐねた。

 アーサーはひとしきり笑い終えると、大きく息を吐いた。

「──リズ」
「は、はい」
「これだ。探していたが、向こうからやって来た」

 アーサーが何を言っているのか分からなかった。また彼がワインのボトルを手に取ったので、エリザベスはまた飲みやしないかとひやひやした。

「間違いない。この味だ」
「…どういう…?」
「俺を殺した毒だ」
「え…?」
「このワインに毒を入れた奴が、俺を殺した犯人だ」

 殺した。まさか、前の時にアーサーの死因となった毒入りワイン。それが、今まさにここにあるなんて。

「セシルじゃなかったんだ。あの子が、そんなだいそれたこと出来るわけがない」

 噛みしめるように、自分に言い聞かせるようにアーサーは静かに言った。

 医師は水の入ったグラスをアーサーに手渡した。

「直ぐにゆすいでください。少量でも体内に入ればお体に障ります」
「これの毒の種類を直ぐに特定しろ。大抵は知ってるが、これは知らない味だ。おそらくはこの大陸に自生している毒ではないだろう」
「は。しかし、大陸のものでないとすると、私の手に負えません」
「私のツテを使う。毒を小分けにしてくれ。毒の保管を任せる。私以外に決して触らせるな」

 アーサーがいつまでも口をゆすがないので、エリザベスが促す。それでようやくグラスに口をつけた。

 医師を下がらせる。
 二人きりになった部屋で、アーサーはエリザベスの両手を握る。

「──リズ、こんなに早く王位が転がり込むとは思わなかった。君とセシル。出来れば王宮ここに置きたくないんだが」
「アーサー…陛下、私たちが王宮に不在というわけにはまいりません。セシルは私が守ります。どうか、真相を解明してください。それが貴方のためにも、先王の弔いにもなります」

 自分の父親が毒殺されたというのに、アーサーは涙も、悲しむ素振りも見せない。王になったとことで、たとえ二人きりだとしても、見せられなくなったのだろう。

 アーサーの代わりに、毒殺された先王。きっとアーサーは自分を責めている。エリザベスはそっと身を寄せた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします

リオール
恋愛
私には妹が一人いる。 みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。 それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。 妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。 いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。 ──ついでにアレもあげるわね。 ===== ※ギャグはありません ※全6話

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

処理中です...