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9・人を呪わば、穴二つ?
しおりを挟む―――――アズ、誰かが結界内に侵入して来たよ。神獣だ。瀕死の重傷。
『お家君』が、警戒警報を発令した。
その時の私は地下でマジックポーションを錬成中で、後もうちょっとで《最高級》値を出せるまでになっていた。
知識があっても、使いこなせる訳じゃないんです!レシピを知っていても、初めての調理で高級レストランのシェフ並みの料理が作れる訳じゃないのと一緒。あくまで意識や経験は『英』ですから。
「神獣??」
手を【浄化】して、一気に外へ駆け出す。走りながら腰のダガーを確認し、妖魔公のマントを羽織って目標地点へ急いだ。
【神域結界】は、不可視の結界。外からみると迷彩機能で敷地内は見えないし、無意識に回避行動を誘う。もしも見つけて入ろうとしても、敵意や害意・負の興味持ちは侵入不可だし、入れても悪心を持った瞬間に問答無用で排除だ。そんな結界内に侵入出来て、未だ排除もされない。その上に重傷の神獣とあっては、急がないと。
―――――あれは神獣ディグシスだ。
結界に入ってすぐの木の根元に、真っ黒な虎に似た魔獣がヒューヒューと異常な呼吸音を漏らしながら横になっていた。そろりそろりと忍び足で注意深く近づく。
聖域指定されているからか、傷口から悪寒のする気味悪い黒い霧が立ち上っては消えて行く。そんな狼煙の様なものが1.2.3…6カ所。
「ガウッ…キューウ」
やっと開けた薄眼で私に気づいたのか、苦しい息の中で助けを求める様に鳴いた。
「しっかりしなさい!神獣でしょ!すぐに助けるから頑張るんだよ!」
「グゥ…」
えーとえーと【看破】
なに!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:ー
年齢:846才
種族:ディグシス
称号:神獣・漆黒の王
LV:994
HP:18,594/689,000
MP:12,450/850,000
ST:24,854/422,000
状態:即死呪汚染・刺傷・魔力低下・体力低下・生命力限界
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あー…やはり呪いかぁ。毒と呪いのどっちかなと思ったけど、質の悪い方だったかぁ。
地下から飛び出す際に、とっさに作り置いたポーション瓶を腰袋に押し込んでおいた。それを出して、色を見ながら傷口に振りかけ、体力回復薬を荒い息に空いた口蓋へ突っ込んだ。
そして、立ち上がって少し離れる。【看破】を継続してステータスを見ながら、脳裏に浮かべた方陣を神獣の上から描き降ろした。
【呪紋開示】
指先を上に向けてちょいちょいと糸でも引き上げる様な動きで、敷いた方陣から呪いの紋を引っ張り出した。
「汚い紋ねー!まっ、それがあって即死せずにすんだのだから、良しとするか!」
――――――人の描いた呪紋かい?
「そう、人族の魔術師が呪術で描いた紋よ。どこかで昔の呪術師が書いた方陣でも写して来たんじゃない?劣化だけどさ。【解呪】」
意味も解らず描き込んであるため、古代文字のあちこちが欠けたり抜けたりしていて、即発動するが迎えたのは死じゃなく衰弱に変化したらしい。その古代文字を魔力で紡いで丸めて、空へ放り投げて行く。手編みのセーターをほどいて毛玉を作る要領で。
魔法陣に描き込まれる紋は、指定する文言を続け字でぐるっと方陣の円に沿って入れ、最初と最後を繋げて完成だ。どこかが切れてたり欠けてたり間違えてたりすると、指定した術は発動しないし、全く別な術になってたり暴発したり(自爆術)する。ことに、呪術は、《死の言語》を使わなくてはならないから、呪術師はほとんど古代文字を使用する。だがしかーし、この呪術仕様の古代文字って言うのが厄介で難しいんですよー。
大昔から呪術ってのは国が管理していて、個人的に使うと『禁術使い』ってことで重い罪に罰せられてた。それは今でも続いている約定で、決定は各国の首相や国王や皇帝の命が必要な魔術だ。そんなモノだけに、目で見て簡単に盗める紋だと危ない。それゆえ昔の国家呪術師達は、蔓草の模様を基本にしてその中に古代文字の呪を描き込んで作った。グネグネクルクルあちこち葉っぱが生えていて~、一見で覚えられないように暗号化したんだ。そして、それを代々の最高権力者の保護下で、見本なんて作らずに描いて見せるだけにして護り伝えて来た。方陣は、魔力持ちが描いただけで発動するからねー。
でもねー、やはり人の脳でってのは、時と共に限界が来るんだよねぇ。誤認や思い込み、老化による物忘れなんてのは、どこの世界でも皆同じだ。それに、昔の禁術使いが秘密の迷路や遺跡の壁にこっそり見本代わりに描いた方陣を見つけ、試験や研究もせずに使う馬鹿も出て来てるし~。
それにね、呪いは解呪されたら術者に返るんだよ。呪いを消せるのは、呪われた相手が亡くなった場合と呪った術者だけ。自分の放った呪いを返されて、呪われながら自分で消さないとならない。
それが世の理。
【浄化】と【治癒力活性】
ふい~っ。これで安静に養生してりゃ快癒だ。
ぐいっと額の汗を腕で拭い、散らばったポーション瓶を回収しながら神獣の容態を確かめた。上がっていた呼吸は少し穏やかになり、呪いの気が立ち込めていた傷口は塞がって、すでに薄くキレイな皮膚が盛り上がって来ている。
「後は体力回復だね。ポーションより食べ物で付けた方がいいから、なんか持って来てあげる。ゆっくり眠ってて」
―――――――契約したらどう?回復が早くなるよ?
「今は意識が朦朧としてるから、だめ。そんな状態で契約したら、詐欺でしょ?契約ってのは、お互いの認識が一致した後に交わすものなの。だから、だめ」
契約は怖い物なの。あちらでもこちらでも。
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