この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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29・ggksと言われそう…

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 入り込んだ書庫は、思いもよらず広大だった。某市の図書館なんて目じゃない広さだよ。それに加えて、書棚の高さと言ったら…。
 どこから漏れるか知れないから灯りは使わず【夜目】を使って書棚を眺めた。巻物状になってる物が半分に紐閉じと背表紙に装丁のある本が半分。う~んと唸ったきり動けない。まさかこれを一つ一つ中を確認する訳にはいかないし、見ないと分からないし――――と、眺めていた時、部屋の端にある小型の机の上に視線がとまった。
 足音を忍ばせて近づき、その上に積まれた書を手にして広げてみた。ああ、これは私にみせるために用意された物だなと見当がついた内容で、せっかくだけれど先に見せてもらうことにした。ざっと目を通して重要な部分だけを読み込む。それを続けて、用意された物だけは読み終えた。

「…召喚陣が破壊された事柄が書かれていない…」

 確かに召喚術には興味の無いような話しをした。が、壊された事件を秘匿する意味はないはず。この書を見せてもらった後にでも、すっとぼけて訊いてみようか…と思いながら、この巻物が収められていたと思われる空間を開けた書棚をあさった。
 で、出て来たよ。奥の方に隠すように布袋の中に入れられて二本の巻物が。封印の術まで掛けられてましたよ。これじゃ、『この書が確信です』とバラしてるようなもんだ。あっはは。
 インベントリから錬金で作ったパルプ製用紙に【転写】で内容を全て写し、火急速やかに部屋へと戻った。これを読むのは、この国を去ってからだ。


 翌日は午後からのお迎えで、昨日通された部屋へ招かれた。出してくれた書は、やはり深夜に覗き見た物ばかりで、嬉しさ満点笑顔を装いながら礼を述べて書を丁寧に開いた。
 この国が召喚した神子は四人。それぞれ召喚した年代と容姿の特徴と年齢。側に付いた者たちの名と彼らが見た奇跡や神子の行いが、事細かに綴られていた。四人の内の一人がどうも日本人らしく、黒い髪と黒い目に黄味がかった肌と書いてあり、年齢に至っては十歳と。なんだか心が重く切なくなった。

「この方々は、神子様として一生を終えたのですか?」
「それは…どういった?」
「その…勇者様も聖女様もお役目を終えると、ご結婚なさったり叙爵されて貴族になったり、あるいはご自分の好きな道を歩まれたりとお聞きしてますので、神子様はどうなのかと?」
「ああ、それはですね。神子様は何年か過ごされるとお力が弱まりまして、そうなったら退位なさって貴族のご養子にお迎えされたり教会へ身を寄せたりとなさったようです」

 お茶で喉を潤して頷き、最後の書を眺める。

「なるほど…お幸せにお暮しでしたのね。――――ところで、この方以降は神子様はご降臨なされないのですか?」

 私が最後の神子の書を手にしながら尋ねると、ブロン氏に動揺が見て取れた。

「ええ…我が国は、幸いにも神子様は必要ないほど豊かに過ごしておりますからな」
「それは、とても喜ばしいことですわね」
「はい…」

 他意はないよーってな笑みで返してみたが、ブロンおじいちゃんは歯切れの悪い返事をするのみだった。隠してるつもりが隠れていないって、マジで大変なことがあったとしか思えないって。外交官が相手じゃなくて良かった。
 それからは何気ない雑談でお茶を濁し、深くお礼を述べお暇を告げて部屋へ戻った。

「守備はどうだった?」
「後で整理してみないと分からないわ。楽しみにしてて」

 なぜか私の部屋でお茶をしてるアレクに冷たい視線を投げながら、真っ赤にのぼせた顔で慌てて部屋を飛び出して行ったリアンを視界の隅で見送った。

「アレク……女遊びは私の目の届かないところでやって。じゃないと、ここでお別れするわ」
「女遊びって…おいおい、ただちょっと口説いてただけだろう?まさか嫉t」
「リアンには何事もなく本国へ帰ってもらいたいの。あんたの十人目になんかさせたくないわっ!」
「なんだよー妬いてくれてんのかと思えば、小娘の心配かよ」
「当然でしょ?バカと手癖の悪い男は、大嫌いなの」

 暇にあがけてリアンを構っていただけだろう事は見て取れたが、表向きは私はアレクの婚約者として紹介されているんだ。この先の旅の間、私に対するリアンの態度が居心地悪いものになったら面倒だろうが!せっかく癒しの女の子なのに!お姉さんの目の黒い内は、絶対に手を出させないからね!

「さて、ちょっと家へ帰って来るから少しの間、誤魔化しておいて」

 手を上げて了解を示してくれたアレクの前で、家へ転移した。
 いきなり現れた私に、出荷作業中だったリュースが目を丸くして手を止めた。

「無事に昨日到着したわよー。明日は街へ出るから、商会の支店へ卸す荷物を受け取りに帰ったの」

 私の報告に、リュースが猛然と用意を再開した。その間に、チーズとサラミの試作品をインベントリへ投げ込み、コーヒーで一息つく。
 デッキに転がって昼寝をしていたルードが、薄眼を開けて私を見た。

『何か分かったか?」
「…まだ、帝国だしね。ただ、私と同郷の子供が一人だけ召喚されてた…。明日は、その子のお墓参りに行ってくる予定」
『そうか……』
「しっかしさーーーー!書庫へ侵入してみたはいいけど、量が半端ないのよ!どうやって目的の情報が記されてる物をみつけたらいいか途方に暮れたわ!」

 帝国でこれだ。パレストなんてどれだけあるやら…。

『ん?書を探す方法に悩んでいるのか?』
「うん。一つ一つ開いて確認してる訳にいかないじゃない?時間はないし面倒だし…」
『そんなものは【看破】と【捜索】でいけるだろうが?』

 ………。あ、私ってバカだ。アレクよりバカだ。

「アズー、荷造り終わったよー」

 リュースの呼び声に居間へ駆け込み、あれこれと荷物をインベントリへ叩き込む。

「まず店員にこの証明書を見せて、この届書にサインと代金を貰ってきてね」
「ほーい」

 一つ悩みが消えた所為で、面倒なお仕事も気持ちよく引き受けた。

「では、再度いってきまーす」
 
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