この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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48・傷心旅行は、大魔境大陸へ

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 今、私の心は、右に左にと揺れている。今更なんだと言われても…ねぇ。
 リュースを巻き込んで、《赤目の民》の真相を知ることになって良かったのかぁ、と。彼に問えば、きっと「良かった」と答えるのは分かり切っている。
 でも――――知らなかったら心に何の憂いもなく、ここでなら差別されることなくやりたいことをやって、伸び伸びと暮らしていられる。お腹の底から笑って怒って喜んで、誰になんの遠慮もなく。

 今の彼の心には、きっと陰が差しているだろう。すでに、アレクを真面まともに見返すことができていない。アレクもまたそんなリュースを見て、彼らしくもなく遠慮気味に気配を消す。そして、そんな自分たちの不甲斐なさを知って、私に複雑な表情で接する。私もきっと、それに同じような表情を返しているんだろう。切ないーーーーっ!もう!!

「失敗したかな…もうちょっと慎重に…ん~」

 こんな時は薬草の手入れと摘み取りだ!とばかりに、土いじりをしているんだが。丸まった背中に、もっふもふが覆いかぶさって、頭の上に顔を乗せている。

『知れる時に、知る。後じゃろうが今じゃろうが、変わりゃあせん』
「うー…」
『あの魔獄の地を、あそこに残されたモンは早よう知って欲しかったじゃろ。彼らの悲しみと無念を、同じ民が知ってくれた…それだけでも弔いになったじゃろ。後は浄化するだけじゃ…』
「うん…お爺ちゃん、知ってたんだ?」
『見てはおらんが、知っておった…彼奴等が話しておったからのぅ。情けない話じゃ。だーれも助けられんかった…』
「何言ってんのっ。リリアをちゃんと守ってたじゃん!」

 むふーと鼻から溜息を漏らされて、私の前髪が舞い上がる。

「あー、そう言えば、リリアの親も探さないとなー」
『うむ。半分は人族で、後の半分は妖精じゃな』

 過去は動かせない。すでに終わったことだ。だから、これからのことに目を向ける。どんなに過去の残滓が後ろ髪を引こうとも、起こってしまったことを無しにはできない。ただ、元凶は生きてどこかに存在する。それは、何を置いても必ず討つ。
 今はまだ魔女わたしの存在には気づかれていないはず。でも、パレストから神獣と幼女を助け出しちゃったし、あの外道聖人に探られたらバレるだろうなー。だから、その前に私の弱点になりそうなことは、さっさと片づけるのが吉だ。

「お家君、リリアの一族を知ってる?」

 ――――――知っているよ。緑の妖精族だ。僕と同じ一族だね。
 ――――――ただし、僕は大昔に嵐に巻き込まれてここに飛ばされ根付いた。
 ――――――それきり故郷には帰っていないから、今の一族は分からない。

「そうかぁ…ご両親は、魔境大陸にいるのかこっちにいるのか…もしかしたら亡くなって…ん~」

 ――――――妖精族は、本体からは離れて生きられない。
 ――――――小枝に魔力を送りながらなら移動は2,3年は大丈夫だけど、それ以上は無理。

「なら、両親でこちらにってのは無しかぁ。そなると、やっぱり大陸に行ってみるしかないかなぁ?」

 ――――――行くなら、僕が案内するよ?僕も帰ってみたいし…。

「おお!それなら、まずは私達だけで探索に行ってみるのがいいかしらね」
『儂もいってみ』
「お爺ちゃんにはリリアの世話をしてもらわないと。それに養生もね」

 がさりと近くで草を踏む音がした。顔を上げると、収穫したココの籠を持って立つリュースがいた。

「僕も行く!いつもルードかアレクばっかりと行ってさっ」
「あらら、アレクみたいなこと言ってぇ。営業と卸しはどーすんの?」
「【空間門】で繋げてもらえばいいよ?アズだって、そのつもりだっただろ?」
「―――――それじゃ、気晴らしも兼ねて行きますか!」
「…うん」
 
 気分を変えるためにって気持ちを私に見透かされ、リュースは口を尖らせながらも頷いた。そんなことで不満そうに膨れたって、お姉さんには可愛いだけだぞ。

 集めた資料で、調べることはまだまだある。御子の召喚術が壊されたことや、大国だけに召喚術を渡したのは何故なのか。そして、消滅したはずの女神や神の《愛し子》と別名を持つ者が、召喚されるのは何故か。
 また、新たな疑問も沸いて出て来た。あの外道の本当の称号は、『聖人』なのか『大魔導士』なのか。何故、女神や神はあんな外道の召喚を許したのか。そして―――――私の称号が何を意味しているのか。
 前半はともかく、後半は資料集めも糞もないね。これらは本人に会って訊くしかない。外道と女神様にね。

「…お爺ちゃん。パレストには今でも聖人召喚の陣はあるの?」

 もふもふ爺ちゃんは私の頭から梃でも動かず、そのまま移動しても乗っかり続けている。なのに、軽いのは、ジジィだから?まだ体調が戻っていないから?

『パレストには聖人の召喚陣は残っておらん。あやつは、己を呼んだ陣を弄り回して別の者を呼ぶ陣を作っておったからのぅ』
「やはりねー」

 自分以外の聖人だか大魔導士だかを、再度召喚されたら困るもんね。仲間になってくれるならいいだろうけれど、敵に回られたら大変だ。あんな外道はそうそういないだろうし。
 それに、どうも奴は自己顕示欲が強いタイプみたい。自分より強い者の存在が許せないって性格だわね。

「じゃあ、他の召喚陣は?」
『少し前まではあったが、今はすべて消滅しておる。誰じゃったかがのぅ、部屋ごと壊して行きおった』
「はぁ!?……誰?」
『覚えておらん』

 ナイスだ、誰か!ざまぁ!パレスト!
 
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