この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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54・みどりのようせいおうさま

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 なんですか?これは…。
 幼い子が粘土遊びをしている様な仕草で、リリアは微笑みながら掌の中の光の塊りを弄んでいた。私に抱かれていることさえ忘れたのか、ただただ面白い物を手に入れた嬉しさに夢中で遊んでいた。
 小さな掌の中に閉じ込めた光球を、いきなりぎゅっと握りつぶし、そろそろと手を開いて覗き込む。すると光球が消えた掌の中に、またパチパチと光が弾けて大きくなって行く。それの繰り返しを楽しんでいる。

「リリア嬢は、妖力の操作を覚えたようだな」
「操作…これが操作なんですか?」

 樹の中は、それとは思えないほどの広さを持ったフロアだった。そこから外壁の沿って階段が螺旋状に上っている。けれど、グリア氏が案内したのは、フロアの中央だった。
 何もないただ樹の年輪の透ける床があるだけの中央に立つと、そこがいきなり浮き上がった。まるで壁のない円形のエレベーター。
 この時ほど、結界で空を飛んだ経験があって良かった、と後でリュースが囁いた。
 ゆっくりと上昇する中、グリア氏はリリアを眺めながら、感心したように頷いた。

「方法はいくつもある。が、みな幼い頃に手の中で妖力を溜めたり消したりを繰り返す。リリア嬢は、王の妖力の流れに触れただけで、そのような遊びとして始めた。たぶん、以前から自らの中に妖力の気配を感じていたのだろう。ただ、それが何なのか分からず放置していたところで王の妖力に触発されたのか…」
「なるほど。そんな部分は魔力制御と同じですのね」
「力の源は違えど、扱いは同じような物だからな。訓練も同様なのだろう」

 音もなく床だけエレベータがゆっくり停止した。これもきっと妖力なのね。
 グリア氏が先に進み、私たちを手招いた。正面には重厚で大きな二枚扉が聳え立ち、グリア氏が近づいて行くと、これも音もなく勝手に開きだした。室内に兵でもいるの?
 妖力遊びに夢中のリリア、少々及び腰なリュース、そして鼓動が煩いくらいにドキドキの私。三人三様な状態で、グリア氏の後ろから扉を潜った。

 
 確か、そこは謁見の間のはず。でも私の知るそこじゃない。
 天井は遥か彼方にあり、そこから燦々と陽の光が広間に差し込む。そこは教会の聖堂の様だった。
 そして、王座はその天井から幾筋も垂れ下がった虹色に光る木の根が、その場だけを繊細な細工で編み上げた夢の様な玉座となっていた。
 その座に、緑色を薄く刷いた銀の長い髪に真っ白な衣装を身に纏った、壮年の男性がいた。なんという覇気。他の妖精族とは異なり、まるで武をたしなむ騎士のような偉丈夫だった。
 さすがのリュースも圧倒され、無意識に怯えている。そして、リリアもその覇気を浴びて、手遊びを放って顔を向けた。

「―――よう来た。魔女とその弟子よ」
「お初にお目にかかります。ア・コール大陸の西の大樹海に住まう魔女アズと申します」
「その弟子、リュースと申します」

 リリアを横に降ろし、片膝をついて頭を下げた。

「儂は、この大陸の緑の妖精族を束ねる王エント。名は秘されておるゆえ名乗れんが許せ。時に、儂の血族の娘を保護したと聞いたが…?」
「はい。人族の国に囚われておりました。幼き頃より監禁されていたと聞き、術にて素性を確かめましたところ、半人半妖の幼子。それに緑の王の加護を持っておりました。人族の身内を探すのは容易ではなく、先にこちらへと参った次第で」

 私が事情を話し終えると、王は何度か頷きながらリリアへと視線を向けた。
 マントの端を握るリリアの拳が、ぴくりと震えた。

「名はなんと申す?」

 王は、私にかけた声よりも、いくぶんか和らいだ声音でリリアに問いかけて来た。
 リリアは、少しだけ唇をもごもごさせた後、また綺麗なカーテシーを見せた。

「はじめまして。リリアリスティリアともうします。6さいです」

 さわさわと川のせせらぎに似た囁き声が、あちらこちらから立ち始めた。ちらりと視線をやると、グリア氏と同じかそれ以上の位の者達が、木の根の陰に何人も立っているのが見えた。
 薄い色合いに白い衣装だけに、隠れるように佇まれていると気が付かなかった。それくらいに気配が薄い。いえ、薄くしているんでしょうね。

「おお…間違いないようだの。儂の加護を持っておるわ。正式な名はーー・・-・==-だ。其方の母は儂の末の娘だ」
「お…かあさま?」
「ああ、そうだ」

 ええ?母親が王の娘だとぅうう!王にとっては、孫になるのね!

「では、リリアの母親は…」
「間違いなく儂の末の娘だ。が…娘は10の昔に行方不明になっている」
「10年前…。こちらに人族の男が来たことは?」
「無い。この大陸には、人族はただでは入れん」

 またもや驚きの事実が。ただでってことは、私たちはエンデの案内があったから?それとも私が魔女だから??

「詳しい話は、ここでは…」

 思わず考え込んだ私の思考を遮って、グリア氏が謁見の終わりを告げた。王も頷き、立ち上がって樹の根の束の影へと姿を消して行った。
 消えた覇気に、私とリュースが深い溜息をついた。
 もう、驚きと緊張の連続で、肩こりどころかいらんところの筋まで痛いよぅ。

「では、皆様、こちらへ」

 今度はグリア氏の脇に控えていた妖精族の女性が、案内を継いだ。そして、とても自然な流れで、グリア氏がリリアを抱き上げた。ちょっとびっくりした様子だったけれど、グリア氏がまた蕩ける笑顔を見せたら、リリアは大人しく抱かれて移動した。えー、もっと駄々をこねろ―…。

 そして、私たちはまたエレベーターに乗り、もっと上へと案内されたのだった。
 ところで、このエレベーターは何て言うんだろ?
 
 
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