この称号、削除しますよ!?いいですね!!

布浦 りぃん

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65・戦いを欲する者 2

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 元はと言えば、勇者の剣は魔女を駆逐するための剣として創られた。
 鞘があって完全なモノになるのだけれど、今ここに無い以上は不完全な状態の剣で戦うことになる。結果は、私もアレクも見えている。
 女である私としては、奥さんが9人もいる旦那と戦いたくはない。無傷で帰すことなんて無理だから、後で恨まれるのは辛いのよね。
 でも、そこは元勇者であり英雄の矜持ってヤツが、不戦敗を許さないのだろうね。それに、やはり長年付き合って来た愛刀だろうし、ただ折ってお終いじゃなく、思い切り戦って終わりにしたいんだろう。

「分かったわ。では、明日の早朝にここへ来て。勝負するのに最適な場所へご案内するから。そこで再起不能にしてあげるわ」
「言ってろ!クソ魔女が!…明日早朝に――――今日みたいに逃げるなよ!」
「逃げないわよー。あ、召喚陣の破壊に関して、黙っててね?」

 緊張のきの字もなく、人差し指を唇に当ててお願いする私に呆れてか、アレクは冷めた流し目をくれると転移して行った。

 天中の陽も少し傾き、昼過ぎのぽかぽかとする陽気は北には珍しい。そんな中での物騒な会話の気配を消して、アレクを見送った。
 一つ溜息をついて家へ戻ると、なんと見慣れない青年が居間のソファでくつろいでいた。

「――――え?ええええええ!?もしかして、リュー!?」

 顔立ちと紅い瞳は間違いなくリュースだけれど、髪はアッシュブロンドに変わり、それが腰の辺りまで波打って伸び、190近い長身痩躯ながら、発達した胸板としなやかな筋肉を備えた四肢を持つ美丈夫に変身していた。
 どーして、こーなった!?ウチの儚げな美青年貴公子は、どこへ行った!?

「…やっぱり驚くよね?僕も朝起きて吃驚したよ。鏡に映ったヤツが自分とは思えなかったよ」
「こ…声まで…」

 いつもの少し高めのテノールが、マジで声変わり後のテノールバリトンになっている!ああ、少年が青年になった時の、お母さんの心に湧く残念な気持ちって、これかぁ…。

『アズ、顔がキモチワルイぞ…』
「なんだか、私の可愛い弟が…どっか遠くへいっちゃったみたいな…。嫁が9人もいるチャラ男な長男も、とうとう姉に反抗しはじめたし…って言うか、ルード!さっき聞いた時は、こんなに変わってるって言わなかったじゃない!!」
『リューに、黙っていてくれと言われていた。面白そうなんで黙っていただけだ』

 がっくりと頽れ独り言を呟く私を見て、横たわって毛づくろいをしていたルードはさっと立ち上がるとリュースの足元へと避難して行った。
 そんな私たちを目を細めて眺めていたリュースは、腕組みをするとニヤリとほくそ笑んだ。

「アズも人の事は言えないだろう?髪の色も目の色も変わって来てるよ?」
「へ?」
『なんだ?気づいてなかったのか?帰って来た時から変わっていたぞ』

 はぁ!?ちょっ!
 不穏な二人の発言に、私はすぐに立ち上がると洗面所へ走った。私が造った大きな横長の鏡が備え付けられているその前に立ち、唇を「O」の字に開けたまま見入った。

「ちょっと!ナニコレ!?誰?誰よ!これ!!なんでもっと早く教えてくれなかったのーーー!!」

 鏡の向こうには、謎の女が映っていた。この色合いに見覚えがあった。そう、あの暗闇に囚われている古の神だわ。
 私の頭部から黒い髪と瞳の色は消え失せ、代わりにシルバーブロンドの髪とゴールドの瞳に変化していた。転化の兆しは感じていた。一度味わった感覚だったから、痛みが来ないのはそれほどの変化じゃないと思っていたから。それが――――こう来るか!?

「色々と確認した方がいいよ?僕も凄くおかしなことになってて、とにかく自分を把握しないと始まらないって慌てたし」

 くるっと後ろを振り返ってリュースを見つめ、すぐに顔を戻して鏡の中の自分を眺めた。

『何をそこまで驚いてる?いつも【偽装】で色合いなんぞ変えてるだろうが。リューの様に、姿形まで変化した訳じゃあるまいに』
「えー!でも、それとこれは違う!私の自慢の黒い髪と目があぁぁ!還る時に戻るかなぁ…」

 私が【偽装】の際に望む色合いは、第一に目立たないこと。髪も目もありふれた同系色を選ぶ。次に、私の顔に似合うかどうかだ。だいたい基本的平たい顔民族の私に、派手な色合いはバランスが悪かった。厚化粧でもしないと、髪色と釣り合いがとれないのは無理。
 で、鏡の中の私だが、これに黒い三角帽子をかぶったら、まさに童話に出て来る老婆の魔女そっくりなのが泣ける。なまじ無精してストレートの髪をのばしていたのが仇になった。

「もっと小顔で切れ長なクールな目をしてたら、きっとこの髪も目もに合うんだろうなぁ。大体だ!リューは外見的変化だったのに、私にそれがちっとも無いって何!?ふざけるな!」

 あー、こんな色に変化させるなら、顔も体系もビシッと変えてよぅ。女神様の力で出来てるんだからさ、女神様みたいな――――あ、それじゃ帰還したら困るな。これでいいか。
 とぼとぼと肩を落として自室へ着替えに行き、階下へ戻るとリュースがコーヒーを入れていた。

「それで、リューは何がどうしたの?」

 入れたての香りが心を沈めてくれる。コーヒーのお供は、木の実がたっぷり入ったパウンドケーキ。リリアに届けた残りだってことだけれど、美味しければなんでもいいわ。

「握って横になっても何も起こらないから、どうしようかと悩んでたらさ、いきなり頭の中に魔力を通せって声がして、慌てて魔力を通したら――――」

 《転化》が始まってしまったんだそうだ。最初の私と同じだな。
 とにかく全身がきしんで痛くて死ぬかと思った。なんて物をよこすんだ!と怒り心頭で、それが耐えるための原動力になった。気が付いたら朝で、眠るに眠れなくて汗をかいたから流しに行くかと、身を起こした所で恐慌状態に陥ったと。

「これだけ急に伸びると満足に動けなくなるって知ったよ。階段を降りるのも一苦労で、アズを探してたらルードとエンデが出かけたって言うし、弱ってたらエンデが回復みたいな術をかけてくれて、妖精族の誰かに相談してみろって」
「へー、エンデはすぐに気づいたのかぁ…」

 ―――――だって、妖力が溢れ出てるんだよ?気づくさ。それよりも驚いたけどね。

「だからグリア様にお会いして、でもアズに事情を聞いた方が早いって結論が出てさ。アズは外出してるって言ったら、その間に肉体の調整をするといいって提案されたんで、妖精族のナイトの方々と色々訓練して来た」

 少しだけ子供じみた話し口調が残っているせいか、声が変わってもリュースだと安堵する。でも、視線を向けると、そこには一端に育った男がいる。真っ当に育つと、こうなるのかーと感心したよ。

 リュースはイケメンに変身してんのに、なんで私は老けて見える方向に行ったんだ!うぎっ!
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