推理先輩は推理できない!

さいだー

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消えた課題

消えた課題5

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 真悟は一人、犯人像について考えていた。

 机の上に広げられたまっさらなノートには時間が経っても何かが記されることはなく、シャープペンが接触した、点が無数に散りばめられているだけだ。

 真悟が思うに、現状もっとも怪しいのは推理。

 放課後に別れたあと、再度鍵を開き、課題を持ち出すのは可能だったはず。

 次は綾。

 昨日の段階で推理の目を盗んで掠め取るのは、そう難しくなかったはず。

 葵木に至っては人の影もまばら早朝の、鍵が開いた部室前に立っていたわけだから、盗み出すことは難しくないが、課題がどういうものなのか知らない。

 真悟が知らないだけで、葵木が知っていた可能性はあった。
 またはたまたま盗み出したものが課題であったという、可能性はなくはない……

 真悟自身は何もしていないのは自明であるが、他の三人から見れば、同じく犯人に見られてもおかしくはない。

 つまり、四人が四人、アリバイというアリバイを持ち得ない。

 外部の犯行まで考えたら……

 何度サイコロを振っても、スタートから進むことのできないスゴロクをやらされている気分だった。


「阿部くん。ずいぶんと難しい顔をしているね。先生の話も聞いてほしいものだけど」


 不意の声かけに真悟は我に返る。

 顔をあげたその先には、金縁が怪しくキラリと光る、屋敷先生の姿があった。


「……聞いてましたよ」


「今はホームルーム中ですよ。内職もいいですけど、話し合いにもしっかり参加してくださいね」

「……はい」

 屋敷は真悟の返事を聞いて一つ頷くと、小鳥のさえずりにも満たない声量で呟いた。

「楽しんでくれているようでよかったよ」

「えっ?」

「あっ、そうだ。阿部くんは真理部に入部するということで間違いないんだよね?」


「はい。昨日、推理せ────雨宮先輩に入部届けは提出しました」

 真悟は慌てて言い直した。昨日知り合ったばかりの先輩を、先生の前で名前呼びしているのはいかがなものかと思ったからだ。

「うん。しっかりと受け付けたからね。安心してくれたまえ」

「ありがとうございます」

「顧問は僕だから、これからよろしくね」
 

「こちらこそよろしくお願いします」

 屋敷が差し出してきた手に応じて堅い握手を交わした。

「真理先輩にそっくりだ」

「えっ?」

「なんでもないよ。さて、僕はこれから職員室に戻る。もし何か用があるなら、職員室にいると雨宮くんには伝えてくれないかな」

「はい。わかりました」

 屋敷は一つ頷くと、教室をゆっくりとした足取りで出ていく。

 それを見送っていると、葵木が声をかけてきた。

「犯人わかったかい?」

「いや、さっぱりだね」

「僕もさっぱりなんだ。何かヒントがあればいいんだけどね」

 爽やかな笑顔を浮かべながら葵木は机横のリュックに手を伸ばす。

 それを見て、真悟は机の上に広げていたノートを慌てて片付けてリュックに放り込む。


「じゃあ、部室に行くか」


「うん」

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