22 / 50
2
夜の海岸に現れる龍の謎2
しおりを挟む
奏ちゃんの置いていった紙に手を伸ばし手に取ろうとすると、なんと!紙が二枚に分かれた。
「えっ、あれ……分裂した!?」
愛華は一つため息のように吐息を吐き出すと、もう一枚の方の紙に手を伸ばした。
「そんなわけないでしょ。汐音が二枚置いていっただけ。私達にそれぞれ一枚づつ用意してくれたのでしょう。お互い集中して読みましょう」
「お、おう」
どうせ愛華がしっかり理解してくれるはずだから、ざっと目を通した。
内容はこうだ。由比ヶ浜付近に五頭龍と見られる飛翔体が夜に目撃された。
大きさなどは不明。由比ヶ浜から陸地の方へ消えていった。
伝承にある龍なのではないか、なにかの前触れなのではないかと心配している。
だから、念の為、飛翔体の正体を暴いてほしい。と。
丁寧にふりがなを振ってくれているのは、国語が苦手な自分にはとてもありがたい。
ある程度読み終えた所で顔をあげ、愛華の方へ視線を向けると、かなり微妙な顔をしていた。
なんというか、まるで給食で楽しみにしていたカレーの入った容器を目の前でぶちまけられてしまったような顔だ。
「どうかしたのか?」
「どうかしたのかって、これと龍がどう関係あるって言うのよ?」
愛華の言っている意味が全くわからなかった。
五頭龍が目撃され、その正体を探ってほしい。
龍しか関係していないと思うんだけど。
アホな俺にはわからない高度な行間を読む的な何かがあったのだろうか?
「関係しかなくね?ごずりゅう?の正体を探るんだろ?とりあえず由比ヶ浜に張り込みかな」
愛華と二人で夜の由比ヶ浜。それはもはやデートみたいなものじゃないか。
仕事をしながら愛華とデートをできるなんて……ちょっとワクワクしてきたぜ。
「はあ?あなた何を言っているの……ってまさか」
奥二重の切れ長の目を細めて、愛華は呆れたような口調で俺を諌めた後、急に目を見開くと、俺から紙をひったくった。
「な、なんだよ!?」
サラサラっと概要を流し見をした後、愛華はテーブルの上に紙をそっと置くと、両手で頭を抱えた。
「はあ、汐音にしてやられたわ」
「やられた?」
「こっちの紙を見てみなさい」
愛華が最初に見ていた方の紙を見てみると、俺が見た紙とは全く違う内容が書かれていた。
『由比ヶ浜近くに在住の方からの依頼
以前はピンクの花を咲かせていたあじさいが今年から急に青い花を付けるようになった。
青い花もキレイで悪くはないのだが、以前のようなピンクの花を咲かせる為にはどうしたら良いのか調べて教えて欲しい』
と書かれていた。
下の方には依頼人の連絡先、住所、名前。そして『愛ちゃん宜しく』と横にハートマークが描かれていた。
「ん?奏ちゃん間違えたのかな?俺達にお願いしようとしてたのは龍の正体を探る事だけだよな?」
「それはないわね。汐音がそんな事を間違えるはずがない。それに、私によろしくって書いてあるでしょ」
「そっかぁ。まあ仕事だし文句は言えないよな。それにしても忙しくなるな。二つも同時に案件を抱えなきゃならないなんてさ」
昼も夜も愛華と居られるというのは悪くないな。いやむしろ嬉しいまである。
ありがとう奏ちゃん!
「それはパス。私、大学もあるし、プロットも仕上げなきゃならないの。……そうね、汐音からの指名だし、こっちのあじさいの方は私が引き受けるわ」
「えっ、だったら俺は?」
「立花君は一人で五頭龍の正体を探ってちょうだい」
「いやいや、俺もあじさいの方手伝うよ」
「……」
愛華は何も答えずに、黙って俺を睨みつけてきた。
「……わかりました」
俺に拒否権はない。そう。これは惚れたものの弱みなのだ。
「えっ、あれ……分裂した!?」
愛華は一つため息のように吐息を吐き出すと、もう一枚の方の紙に手を伸ばした。
「そんなわけないでしょ。汐音が二枚置いていっただけ。私達にそれぞれ一枚づつ用意してくれたのでしょう。お互い集中して読みましょう」
「お、おう」
どうせ愛華がしっかり理解してくれるはずだから、ざっと目を通した。
内容はこうだ。由比ヶ浜付近に五頭龍と見られる飛翔体が夜に目撃された。
大きさなどは不明。由比ヶ浜から陸地の方へ消えていった。
伝承にある龍なのではないか、なにかの前触れなのではないかと心配している。
だから、念の為、飛翔体の正体を暴いてほしい。と。
丁寧にふりがなを振ってくれているのは、国語が苦手な自分にはとてもありがたい。
ある程度読み終えた所で顔をあげ、愛華の方へ視線を向けると、かなり微妙な顔をしていた。
なんというか、まるで給食で楽しみにしていたカレーの入った容器を目の前でぶちまけられてしまったような顔だ。
「どうかしたのか?」
「どうかしたのかって、これと龍がどう関係あるって言うのよ?」
愛華の言っている意味が全くわからなかった。
五頭龍が目撃され、その正体を探ってほしい。
龍しか関係していないと思うんだけど。
アホな俺にはわからない高度な行間を読む的な何かがあったのだろうか?
「関係しかなくね?ごずりゅう?の正体を探るんだろ?とりあえず由比ヶ浜に張り込みかな」
愛華と二人で夜の由比ヶ浜。それはもはやデートみたいなものじゃないか。
仕事をしながら愛華とデートをできるなんて……ちょっとワクワクしてきたぜ。
「はあ?あなた何を言っているの……ってまさか」
奥二重の切れ長の目を細めて、愛華は呆れたような口調で俺を諌めた後、急に目を見開くと、俺から紙をひったくった。
「な、なんだよ!?」
サラサラっと概要を流し見をした後、愛華はテーブルの上に紙をそっと置くと、両手で頭を抱えた。
「はあ、汐音にしてやられたわ」
「やられた?」
「こっちの紙を見てみなさい」
愛華が最初に見ていた方の紙を見てみると、俺が見た紙とは全く違う内容が書かれていた。
『由比ヶ浜近くに在住の方からの依頼
以前はピンクの花を咲かせていたあじさいが今年から急に青い花を付けるようになった。
青い花もキレイで悪くはないのだが、以前のようなピンクの花を咲かせる為にはどうしたら良いのか調べて教えて欲しい』
と書かれていた。
下の方には依頼人の連絡先、住所、名前。そして『愛ちゃん宜しく』と横にハートマークが描かれていた。
「ん?奏ちゃん間違えたのかな?俺達にお願いしようとしてたのは龍の正体を探る事だけだよな?」
「それはないわね。汐音がそんな事を間違えるはずがない。それに、私によろしくって書いてあるでしょ」
「そっかぁ。まあ仕事だし文句は言えないよな。それにしても忙しくなるな。二つも同時に案件を抱えなきゃならないなんてさ」
昼も夜も愛華と居られるというのは悪くないな。いやむしろ嬉しいまである。
ありがとう奏ちゃん!
「それはパス。私、大学もあるし、プロットも仕上げなきゃならないの。……そうね、汐音からの指名だし、こっちのあじさいの方は私が引き受けるわ」
「えっ、だったら俺は?」
「立花君は一人で五頭龍の正体を探ってちょうだい」
「いやいや、俺もあじさいの方手伝うよ」
「……」
愛華は何も答えずに、黙って俺を睨みつけてきた。
「……わかりました」
俺に拒否権はない。そう。これは惚れたものの弱みなのだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる