万年ネタ切れ作家、勇利愛華の邪推録

さいだー

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モンブランの悪魔10

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 1-Cクラスの後輩達から話を聞いた後、私、立花くん、汐音、杉浦くんの四人で校舎裏に移動した。
 三人を校舎裏口のコンクリートの階段に座らせて、私はその正面に立つ。

「……まったく。本当にあなた達には呆れたわ」

 言葉の通り、眼の前の三人には呆れ果てていた。
 なぜ呆れているのかといえば━━━━

「あなた達、模型を飛ばすのはやめるって話しだったわよね?」

 数日前、三人は私と約束をした。
 大型ドローンを使って、杉浦くんが制作した模型を大勢の観衆の頭上で飛ばす。

 一歩間違えば怪我人を出しかねない危険行為だ。

「……でもよ、実際には飛ばしてねえわけで━━━━」

 恐る恐るといった様子で右手を小さく上げながら立花くんは発言をするが、私はそれを許さない。

「黙りなさい!飛ばさなかったのはたまたま無くなってしまったからでしょう!もし模型がなくなっていなかったらどうなっていたの?操作をミスしたら怪我人が出ていたかもしれないのよ!?」

 立花くんは少し肩をビクつかせた後、視線を落とし黙って私の話を聞いていた。

 杉浦くん、汐音の二人もまずいと思っているのだろう。視線は地面に固定されている。


「本当にあなた達は……」

 言いながらふと廊下の方に目をやると、腰高祭にやってきたお客さんや後輩達がこちらをチラチラと見ている事に気がついた。

 校舎裏だから誰にも見られていないものと思い込んでいたけれど、あまりさらし者にするのは良くないのではないかと思って言葉をそれ以上続ける事はできなかった。

「……はあ、話の続きは帰ってからにしましょう」

 恐る恐るといった感じで汐音が右手をあげる。

「あの」


「なに?汐音さん」


「……推理の方はいかがでしょうか?」

 今そんな事を聞く場面場面だった?
 立花くんが聞いていたのなら、私は叱責した上で折檻していたに違いない。

 だけどそれを聞いてきた相手は汐音。

 同性であってもあどけなさの残る不安げな瞳を向けられたら無下に扱えるはずがなかった。

 もちろん不満はあるからその意味を込めて、伝わるようにあえて大きくため息をついてから立花くんのつま先を踏みつけた。

「イテテテテテ!愛華踏んでる。踏んでるって」

「……私は探偵ではないのだけれど、何を調べれば良いのだったかしら?」

 私がこれで許したと思ったのか、汐音は途端に瞳を輝かせ、矢継ぎ早に話しだした。

「まず、五頭竜の模型とドローンが消失してしまった理由と物を探し出す事、そしてもう一つ、愛ちゃんが持ってきてくれた差し入れが玉砂利に入れ替えられていた謎を解き明かして欲しいの」


「その二つは関係のある事なのかしら?」

 汐音は両手を体の横に広げるとヒラヒラと振りながら答える。

「今のところは関係ないと思うけど?」

 疑問に疑問で答えないで欲しいところね。汐音の言葉尻は不自然に跳ねていた。

「つまり━━━━何もかもがわからないってことね」

「うん。そういう事!」

 考えれば考えるだけめんどくさそうな事案ね。放棄して帰りたい気分だわ。

 でも、つい先ごろ、拓真に弁護をすると勢いで宣言してしまった以上、知らぬ存ぜぬでは済まないだろう。

 足先に感じる、嘘だけはつかない不甲斐ない男を救ってあげなければならないしね。

「だったらまずは、消えたモンブランについてから調べましょうか」
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