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ナナケンジャ4
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「マリエス!?」
マリエスの後をすぐに追ってきた。それなのに家の扉の先にマリエスの姿はなかった。
おそらく、屈折魔法を全身にかけて他者から視認できないようにして走り去ってしまったのだ。
母さんに対する憤りはあるけれど、今は母さんに構っている場合じゃない。
「そう遠くには行ってないはずだ……」
マリエスが行きそうな場所。
小さい頃からずっと一緒に過ごしてきたからこそ、僕にはわかる。
こんな時マリエスなら____
僕は踵を返す。家に入り直し、呆けている母さんには見向きもせず自室を目指した。
マリエスになんて言葉をかけるのが正解なのか僕には良くわからない。でもそばに居てあげる事はできる。
自室の前に立ち、一度深呼吸をしてから扉を開いた。
誰も居ないはずの部屋。無人のベットの布団がこんもりと盛り上がり、かすかに上下に動いている。
確認せずともベットの中に潜り込んでいる人物は推測できる。
「マリエス。大丈夫か?」
マリエスは昔からそうだった。シフィエスに怒られた時、魔法の練習について行けなくて逃げ出してきた時。こうして僕の布団にくるまって泣いていた。
「……」
マリエスから返答はないが、小さく鼻を啜る音が聞こえてくる。
「一度しか言わないからよく聞いてよ。
何があったって、僕はマリエスの味方だ。母さんやシフィエスさんが反対したって、僕はマリエスの夢を応援するよ」
面と向かって言うのは気恥ずかしいけど、マリエスが顔を隠しているおかげで素直に伝える事ができた。
マリエスはぬるりと布団から顔を見せると、赤く腫らした目を擦り、雫を拭ってから言った。
「ほんとう?」
僕はマリエスの目を真っ直ぐに見て頷き返し、マリエスが被っていた布団を奪い取る。
「はうっ」
マリエスは体を丸めて、まだ隠れようとしているのだけど耳も、尻尾すらも隠せていない。
泣くのに精一杯で屈折も解けてしまっているようだったので、掛け布団を掛け直してやる。僕の部屋の中とはいえ、誰かに見られてしまう危険は常に付き纏う。
マリエスの横に腰をおろし、できるだけ優しい口調でかたりかけた。
「僕からもシフィエスさんと母さんにお願いするよ。マリエスが学園に行けるように」
言っていて少し心が傷んだ。
マリエスが学園に行く=マリエスと離れ離れになると言う事でもあった。
そうなれば僕だって少し寂しい。
「嬉しいけど、難しいと思う」
マリエスは布団にくるまったまま答えた。少し声が震えている。
「どうして?」
「獣人差別があるから……シフィエスさんから離れちゃダメだって言われた」
この国に獣人差別があるということは、僕も理解はしている。
どの程度のものなのか直接目にしたことはない。
だが、シフィエスが警戒をして、常に屈折をつかわせているくらいにはあるらしい。
実際の所は、マリエスを近くに置いておきたいシフィエスの妄言という可能性も考えられるが、確認手段のない現状はシフィエスの言葉をしんじる他ない。
「僕も一緒に行けるのなら、守ってあげる事もできるって説得できるんだけどな……」
幼少の頃から魔法の勉強をしてきたマリエスとは違って、僕には簡単な魔法すらも使えない。
魔術学園は、魔法を操れるエリートを集めているのだ。
マリエスならまだしも、剣を振るうしか脳のない僕には、全く持って縁がない存在なのだ。
「それもむりだと思う」
「言っていて自分でも思ったよ。魔法を一つも使えない僕が入学を認められるはずがないしね」
マリエスがそんな僕の言葉を否定した。力なくゆっくりと首を左右に何度か振った後、ポツリと漏らした。
「ロウエは行けるよ」
言葉の意味がわからなかった。魔法に長けているマリエスが行けず、魔法はからっきしの僕が行ける?
「どういうこと?」
「……私、二人がお話しているところ、聞いちゃったの。サギカ様がこの村に来た理由も」
「理由?」
僕の言葉にマリエスは一度頷き
「中央にロウエを連れて行ってもらう。そして、魔術学園に入学させるって」
マリエスの言葉の意味がよくわからなかった。まず、二人とは誰と誰の事を指しているのか。
なぜ僕を連れて行くのか?
そして、魔法を全く使えない僕を何の為に魔術学園に入学させようと言うのか?
全てが疑問で、マリエスの聞き間違いのようにも思えるが_____
「話していたのは、シフィエスさんとロリエッタさん。
入学はサギカ様になんとかしてもらうって言ってた。
絶対に聞き間違いなんかじゃないよ」
「母さんとシフィエスさんが……?」
どんな目的があってそんな事をしようとしているのか、僕には皆目見当がつかない。
だけど、僕には一筋の光が見えたような気がした。
「なんとかするって言うのはコネに違いない。
偉い人が悪い事をするのは、どこの世界でも共通なんだな」
シフィエスさん見損なったよ。だけど、すきを作ってくれてありがとう。
「コネ?悪い人?」
「あんまりやりたく無い事だけど、マリエスが聞いた事を交渉の材料にすれば、入学をきっと認めてくれるよ。
二人が話していた内容を詳しく教えてくれる?」
物は言い方、それが脅しだったとしても交渉にしてしまえばこちらは悪くない。
「……うん」
マリエスは一つ返事をしてからたどたどしく話し始めた。
「えっと、まず、ロウエの事は剣術で気を引いて、サギカ様に興味を持たせる。
そして、ロウエの素質に気がつけばサギカ様も黙って連れて行く。って言ってたよ」
「……」
全て他力本願の計画。なんと言ってよいかわからなかった。
しかし、一本の道は示された。
才能を示せばサギカは動く。
つまり、マリエスの才能をサギカに示せば良いのだ。
「マリエス。いい事を思いついた。少し僕に付き合うつもりはないかい?」
マリエスの後をすぐに追ってきた。それなのに家の扉の先にマリエスの姿はなかった。
おそらく、屈折魔法を全身にかけて他者から視認できないようにして走り去ってしまったのだ。
母さんに対する憤りはあるけれど、今は母さんに構っている場合じゃない。
「そう遠くには行ってないはずだ……」
マリエスが行きそうな場所。
小さい頃からずっと一緒に過ごしてきたからこそ、僕にはわかる。
こんな時マリエスなら____
僕は踵を返す。家に入り直し、呆けている母さんには見向きもせず自室を目指した。
マリエスになんて言葉をかけるのが正解なのか僕には良くわからない。でもそばに居てあげる事はできる。
自室の前に立ち、一度深呼吸をしてから扉を開いた。
誰も居ないはずの部屋。無人のベットの布団がこんもりと盛り上がり、かすかに上下に動いている。
確認せずともベットの中に潜り込んでいる人物は推測できる。
「マリエス。大丈夫か?」
マリエスは昔からそうだった。シフィエスに怒られた時、魔法の練習について行けなくて逃げ出してきた時。こうして僕の布団にくるまって泣いていた。
「……」
マリエスから返答はないが、小さく鼻を啜る音が聞こえてくる。
「一度しか言わないからよく聞いてよ。
何があったって、僕はマリエスの味方だ。母さんやシフィエスさんが反対したって、僕はマリエスの夢を応援するよ」
面と向かって言うのは気恥ずかしいけど、マリエスが顔を隠しているおかげで素直に伝える事ができた。
マリエスはぬるりと布団から顔を見せると、赤く腫らした目を擦り、雫を拭ってから言った。
「ほんとう?」
僕はマリエスの目を真っ直ぐに見て頷き返し、マリエスが被っていた布団を奪い取る。
「はうっ」
マリエスは体を丸めて、まだ隠れようとしているのだけど耳も、尻尾すらも隠せていない。
泣くのに精一杯で屈折も解けてしまっているようだったので、掛け布団を掛け直してやる。僕の部屋の中とはいえ、誰かに見られてしまう危険は常に付き纏う。
マリエスの横に腰をおろし、できるだけ優しい口調でかたりかけた。
「僕からもシフィエスさんと母さんにお願いするよ。マリエスが学園に行けるように」
言っていて少し心が傷んだ。
マリエスが学園に行く=マリエスと離れ離れになると言う事でもあった。
そうなれば僕だって少し寂しい。
「嬉しいけど、難しいと思う」
マリエスは布団にくるまったまま答えた。少し声が震えている。
「どうして?」
「獣人差別があるから……シフィエスさんから離れちゃダメだって言われた」
この国に獣人差別があるということは、僕も理解はしている。
どの程度のものなのか直接目にしたことはない。
だが、シフィエスが警戒をして、常に屈折をつかわせているくらいにはあるらしい。
実際の所は、マリエスを近くに置いておきたいシフィエスの妄言という可能性も考えられるが、確認手段のない現状はシフィエスの言葉をしんじる他ない。
「僕も一緒に行けるのなら、守ってあげる事もできるって説得できるんだけどな……」
幼少の頃から魔法の勉強をしてきたマリエスとは違って、僕には簡単な魔法すらも使えない。
魔術学園は、魔法を操れるエリートを集めているのだ。
マリエスならまだしも、剣を振るうしか脳のない僕には、全く持って縁がない存在なのだ。
「それもむりだと思う」
「言っていて自分でも思ったよ。魔法を一つも使えない僕が入学を認められるはずがないしね」
マリエスがそんな僕の言葉を否定した。力なくゆっくりと首を左右に何度か振った後、ポツリと漏らした。
「ロウエは行けるよ」
言葉の意味がわからなかった。魔法に長けているマリエスが行けず、魔法はからっきしの僕が行ける?
「どういうこと?」
「……私、二人がお話しているところ、聞いちゃったの。サギカ様がこの村に来た理由も」
「理由?」
僕の言葉にマリエスは一度頷き
「中央にロウエを連れて行ってもらう。そして、魔術学園に入学させるって」
マリエスの言葉の意味がよくわからなかった。まず、二人とは誰と誰の事を指しているのか。
なぜ僕を連れて行くのか?
そして、魔法を全く使えない僕を何の為に魔術学園に入学させようと言うのか?
全てが疑問で、マリエスの聞き間違いのようにも思えるが_____
「話していたのは、シフィエスさんとロリエッタさん。
入学はサギカ様になんとかしてもらうって言ってた。
絶対に聞き間違いなんかじゃないよ」
「母さんとシフィエスさんが……?」
どんな目的があってそんな事をしようとしているのか、僕には皆目見当がつかない。
だけど、僕には一筋の光が見えたような気がした。
「なんとかするって言うのはコネに違いない。
偉い人が悪い事をするのは、どこの世界でも共通なんだな」
シフィエスさん見損なったよ。だけど、すきを作ってくれてありがとう。
「コネ?悪い人?」
「あんまりやりたく無い事だけど、マリエスが聞いた事を交渉の材料にすれば、入学をきっと認めてくれるよ。
二人が話していた内容を詳しく教えてくれる?」
物は言い方、それが脅しだったとしても交渉にしてしまえばこちらは悪くない。
「……うん」
マリエスは一つ返事をしてからたどたどしく話し始めた。
「えっと、まず、ロウエの事は剣術で気を引いて、サギカ様に興味を持たせる。
そして、ロウエの素質に気がつけばサギカ様も黙って連れて行く。って言ってたよ」
「……」
全て他力本願の計画。なんと言ってよいかわからなかった。
しかし、一本の道は示された。
才能を示せばサギカは動く。
つまり、マリエスの才能をサギカに示せば良いのだ。
「マリエス。いい事を思いついた。少し僕に付き合うつもりはないかい?」
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