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よるの目覚め

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何度目の朝だろう。睡眠時間に関係なく朝日で目を覚ますのは不快でしかなかった。十月ともなればこの時間帯はもう寒い。六時に目を覚ました男は寝ていたベンチであぐらをかいた。男は目をつむり一呼吸置いてから「ふぅ」と息を吐く。「これでもまだ白くならないのか」あきれた矢先体のあちこちが痛むことに気がついた。男は浮浪者ではない。だからといって望んで大学のキャンパスの離れにあるベンチで寝ていたわけでもない。生きていくためにはそうせざるを得ないのだ。いつの日からか男は大学の外に出ることができなくなってしまった。大学の敷地外は真っ暗で男には何も見えなく出ようにも外に出られないのだ。そんなこんなで二十四時間、大学に居候しているのでキャンパス内に何匹かいる野良猫とだけは親友になった。今日も男が起きてしばらくしてからやつはきた。「いつからだろうかこんな生活も」。ふと浮かんだ疑問が思わず声に出た。「ま、誰も聞こえやしないか」。やつを膝の上に乗せてわしゃわしゃと撫でるこの日課。今日もあと二時間、こうして売店が開くのを待つとしよう。
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