アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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復讐編

ep20 奮戦と賭け

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唸る化け物を前に木刀を構えながら


「楽斗、、 リータが女性を連れてきたら 
みんなを連れて学校で待機しててくれ 」


焦りながら背後の楽斗に告げるが
彼も内心焦っているのか少し早口に


「一体何を考えているんだっ…!?
お前が無理だと判断したのなら
お前も一緒に逃げるんだよっ!……  」


強い口調でそう告げる
自分は眼前にいる怪物を刺激しないように
声のトーンを抑えながら


「頼みたいことがあるんだ……
それは楽斗や東真じゃないと厳しいんだ 」


自分はポケットからある紙を取り出す 
それを彼に手渡すと


「これは?、、」


戸惑う楽斗にもどかしさを感じながらも
最低限説明することにする


「これを東真に見せてくれ」


そう言いながら
リータが女性を連れて来た事を確認した
すると楽斗が自分の腹に軽く拳を突き出して


「これ あの時拾っておいたぜ!…
   後で絶対に会おうな?」


そう言って自分になにかを渡して走っていく
それは以前使っていた折りたたみナイフ だった


( ありがとう……楽斗、、)


美九やリータ達が学校に向かって走った
奴は彼女らに向かって走りだした


飛行やはり体力の消耗が激しいのか…?
広いグラウンドを荒らされるのは癪だけど……


そう思いながら
折りたたみナイフを奴に向かって投げる



ヒュッ………ジャクッ!!……



真っ直ぐ飛んでいったナイフは
風を切り抜けながら加速して 奴の耳 を捉えた


「ギャァ"ウ"ッッ!………」


生々しい悲鳴を上げたあと
巨体を揺らしながら方向転換しこちらへ向いた


「お前の相手は俺だ……… 」


そう言って前に走り
すぐさま奴の頭に木刀を叩き込もうとすると…



「 っ…………!?!? 」



いきなり前方から強風が吹く…
突然のことで身体が反射的に縮まってしまう


「砂が舞って目を開けられない、、」


自分の身体は後ろに吹き飛ばされ転がった
グラウンドの砂に塗れるなかなんとか目を開ける
しかし奴は姿を忽然と消していた



「飛んで……上昇したのかっ……!?!? 」



背後から風を切る音が轟いたので
その方を向くと奴が急降下してきていた



ゴァア"ア"ア"ア"ア"ッッ……!!!




奴の身体に風が当たりその様な音が鳴り響く
台風に身を放り込んだ気分だった


( まともに喰らったら……即死かよッッ…!! )


自分は走ってスライディングをして飛び込む
攻撃を回避し素早く向き直ると



また奴は上空へと舞い上がっていた



「…………ラチがあかないな…
こうなったら賭けに出るしかない…… 」



そう自分は言ってグラウンドの端を目指した
その場に止めてあった車に飛び乗る


( 空は奴の独壇場……… ならっ!… )


真上から奴がもの凄い速度で迫ってきている
姿は見えにくくても 轟音 でわかった
自分は車の上で立ち尽くしたまま目を閉じる



心臓の鼓動が聞こえてくる



タイミングがズレたら即死なのは当然だが
狙い通りに行ったのなら…………
あの怪物にそのまま勝てるかもしれない


そう思いながらギリギリまで待ち



「………………今だっ!!……」



そう叫び思いっきり前にジャンプした
着地した瞬間に背後から……


ドバガァッ!!……


奴が車と激突したのがはっきりとわかった
大木をもなぎ倒すほどの威力で突っ込んだのだ
その衝撃音が小さいはずがない



ドォォオ"オ"ン"ッッ!!!………



背中越しに熱風と轟音が伝わってくる
奴が衝突した車が爆発したのだ……
 


「グガァ"ア"ア"ア" ッッ………!!!」



奴は断末魔を上げて暴れている
しかし歪んだ車両から身体が抜けないようだ


(今……しかないっ……!! )


自分は奴の後ろに回り込んで
木刀を奴の左足へ思いっきり振り降ろした



ドギャァッ!!……



「ヴッッアア……!!」


身動きの取れないまま奴は悲鳴を挙げて
尻尾を真上に上げ自分へ振り下ろしてきた


バゴッッ!!……


鋭い尾の攻撃に地面が抉れて砂が舞っている
なんとか左に避けたあと大型ナイフを引き抜く


「 ここでっ……決定打をっ………!!」


大型ナイフを両手で持ったあと
崩れ落ちるように両膝を地面につく形で
全体重を乗せたナイフを振り下ろす…………



ジャギンッ……!!



奴の尻尾を切断することに成功したが
身体の震えから限界を近づいているを悟った



「グガァッ… グガアアアアッッ!!………」



再度奴が悲鳴をあげて暴れだした
奴の枷となっている車が生命線となっている


( さらにっ……このまま追撃をッ……!!)


木刀を拾い視線を奴に戻した瞬間に
怪物の大きな前足の爪が自分の前に現れたのだ


(もう抜け出したのか……!?  )


素早く木刀でその攻撃を受ける
砕かれて折れないことを祈るばかりだが……



ガギャガギャッッ………!!



「 重"い"ッッ……!」


木刀に伝わった怪物の重い衝撃に
自分の消耗した身体は耐えれるはずもなく


身体は容易く吹き飛ばされた
受け身を取れず地面に思いっきり叩きつけてしまう


( ぐっっ………とりあえず立たないと、、 )


右脚を軸になんとか立ち上がろうとするが
かなり無茶をしすぎたせいなのか
身体中が痛くて立つのもままならなかった



しかし何故か自分は笑っていた 
 


その行為自体は
何を意味するのかはわからないけど 
自然と力が湧いてくるような感覚がしてきた


「俺の生きがいは唯一つ
大切な仲間を守り抜いてみんなで笑い合うこと
それだけなんだ……」


気づけば奴にそう話しかけていた
会話や意思疎通なんてできる訳がないのに……
自分は続けて


「お前も譲れない何かがあるんだろうけど
自分だって譲れないものがあるッ……
だから負けるわけにはいかない…………!」


そう言ったあとに
自分が余力を振り絞って突撃しようとすると



パリィンッ……!



奴の頭上で ガラスの破裂音の様な音 が響く
そしてすぐさま奴は金切り声を上げた


~ ep20完 ~

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