アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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餼羊編

ep9 再会する人形たち

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リータ/アリシアside



「 リータ………?
私はその名を存じませんよ♫ アリシア…… 」



諭すような口調でそう呟きながら
メアリーさんはコチラの動きを先読みし 
一定の間合いを保ちつつステップを踏み続ける


( 私の行動が読まれているの…………? )


なんとか拳が届く範囲に入り込むが
どんなに素早く距離を詰めても対応されてしまう
ジリジリと実力差が生じ私が焦り始めた時、
彼女は上半身を捻り左脚でムチのような蹴りを放つ



バギャアッ、、!!



私の顔面へと放たれたソレを両腕で受け止めるが
軽々しく腕を弾き飛ばし胸部を強打した
私の身体は吹き飛ばされ後ろに転がっていく


「がっ… がはぁッ………! 」


私はあまりの激痛に声を上げてしまう
先ほどの蹴りを受けたせいで
左腕の骨に亀裂が入ってしまったようだ


(苦戦してる… でもとりあえず、、)


起き上がった私はさらに後ろに二歩ほど下がり
彼女との距離を取りつつ身構える
すると彼女は呆れたように


「あなたはもしかして
まだ感覚でやってるんです?……… 」


何のことを指しているのか理解ができない
どう返せばいいのかわからずに
私は黙っていると


「その貴女の脚を覆う様にしている
その何重も折り重なった白いものことです♪」

「それ制御できますよ?…」


そう続けられた
ソレを聞いて私は反射的に 断片的な記憶 が蘇る


「嘘"っ…………  私はあの時………… 」


カミダさんとの記憶が呼び覚まされていく
そう………私は造船所跡地で 
理性を失った怪物と戦って暴走してしまったのだ 


(え……? カミダさんって………誰?? )


先程からこの人が言っているアリシアという人と
何か関係があるのだろうかと勘ぐるが
今考えたところで結論には至らないのは明白である
そんなことを考えていると


「なるほどなるほど?
暴走を経験したような口ぶりですねぇ♬」


薄ら笑いを浮かべながら能天気にそう言った
そして続けて


「重症を負い治癒しようとしたり
無理に傀儡の力を使った時とか………… 」

「そういう場合は暴走する可能性が
非常に高くなるのですが………… 」


彼女が淡々と語る説明を
ただ必死に激痛に耐えながら聞いていると


「 私達が生成する生物の骨みたいなその物質……
腕などに巻きついてる皮膚のようなソレは
 傀銀かいぎんと呼ばれてるんですよ…?♬ 」


 説明に促されるまま私は足元を見ると
確かに左脚に傀銀を発生させていた
ソレを眺めながら私のなかで1つの疑問が生じた


「傀銀で戦う戦士を 傀儡者 と呼んで…
傀儡者の研究があの造船所跡地で
行われていたってこと……? 」


「そうなりますね ♬
察しが良くて助かります 」


メアリーさんは微笑を浮かべながら答えたあと
こちらにゆっくり歩み寄って



「私は傀銀のコントロールが
群を抜いて得意だったんですよ?♫ 」



言い放った後に走り出し
反応に遅れた私に構わずに右腕を引き



ドギャアッ、、!!



いきなり傀銀を纏った拳で顔面を殴られた
重い衝撃と焼けるような痛みが伝わる


「 さぁ…再開の合図です……♫  」


そう言って踏み込み距離を詰め
肘打ちで追い討ちを掛けようとしてくる


( 説明することはしたって事なの……?
あとは実戦で勝手に学べってこと…………? )


この身体はリータが動かしている…
だから………こんなにも動きが鈍くて稚拙なんだ



ズドガァッ………!!



今度は彼女の脚が腹部にめり込み蹴飛ばされた
私の身体が後ろに飛ばされ転がっていく
もう……痛みさえ感じなかった
メアリーさんは微笑を浮かべながら歩み寄る
私はフラつきながら立あがるが彼女は身体を捻って



ドメシャアッッ……… !!



今度は鋭い裏拳が顔に入り
身体がグラつき視界が眩むまま仰向けに倒れた
もう全てがどうでもよく感じた


~~~~~~~~~~



( 私… 何をしてたんだっけ…………? )



記憶が曖昧でそこから先は一切憶えていない
わかっているのは
散々メアリーさんに殴られたり蹴られたりされて
身体は血だらけだということぐらいで……………………



「貴女…本当にアリシアですか? … ♬ 
随分と動きが鈍くなりましたね 」



気楽そうな声が私の頭に響く



うるさい…黙ってよ………………



結局リータである私は何もできずに死ぬのか…
そう諦めかけたところで


「リータッ…… 」


何処からか微かに私の名前を呼ぶ声が聞こえた
どうやらセイシロウさんの声のようだ


(彼はいつもボロボロになりながらも
仲間を守るために闘っている……)


気絶しても…未だに……………



「今度は…私が守らないと……………… 」



よろめきながらもどうにか私は立ち上がって 
目の前で嘲笑う彼女に視線を移す 


「ぐっ… がはッ、、 」


しかし身体はとうに限界で吐血してしまった
その様子を見た彼女は


「もう降参されたらどうです?♬  」


「 私はッ……リータ………
貴女の言うアリシアじゃないッッ……!! 
だから………………  」


吐血に構わず力一杯に叫ぶ
その様子を見たメアリーはただただ首を傾げていた
私の外見そのものはアリシアさんなのだ
アリシアさんを知る彼女が困惑するのも頷ける



「 アリシアさん…貴女の10分の1で構いません
どうか力を貸してください………」




私はその言葉を呟いた瞬間に
目眩と吐き気は消えてただ耳鳴りが響いていた
無重力のようなよくわからない感覚に陥るなかで



誰かに呼び覚まされた感覚が全身へと伝わっていく



この感覚はまるで………
蝶が蛹から羽化したみたいに……………



「……身体が………軽いッッ……!! 」



先ほどのように私は思いっきり地面を蹴り上げて 
身構えている彼女を目掛けて跳んだ



ズブシャッ、、!!



身体が自然と吸い込まれるように
彼女の元へ指し迫っていき
右手でメアリーさんの喉を搔き切っていた


「な、何ッ… を…………… 」


勢いよく噴き出した返り血が顔に掛かる
反射的に首を押さえる彼女は状況を読み込めずにいた
メアリーさんの目線が揺らぎ微笑が消えていく


(それは当然かもしれない…………… )


今までは彼女が狩る側の立場だったからだ
それはもう一人の…いや……




本来の私が目を覚ました瞬間だった




「久しぶりね…… メアリー姉さん 」


薄ら笑いを浮かべてそう伝えた
勝利欲や支配欲、自己顕示欲といった
内在する全ての欲望が混ざりグチャグチャに巣食う
私が……私こそが…………   



女帝のアリシアだ



~ ep9完 ~

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