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厨二病魔法学級開講
2-A 18番 高嶺 静哉①
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「うわ、また高嶺が学年1位じゃん」
「えー、トップ10の総合得点も意味わかんないけど、2位にも15点差……五教科で489点て何?」
「おれのほとんど2倍なんだけどウケる」
「これで1年の時と2年の時の中間・期末試験1位を総なめか……あーあ、天才様は違うねぇ」
旭川中の中間・期末試験では学年トップ10人の名前と総合得点が張り出される。
これは恒例のイベントではあるものの、PTAの面子によってはプライバシーの侵害だと反対意見が出ることもあった。
しかし、こうして努力を形にして張り出すことで成績優秀者が自信を持ち、他の生徒への激をとばすことにもなり学業に集中出来るように導くことを目的に行っている。
高嶺 静哉(たかみね せいや)は心を動かさない。自分の位置を知りたいという理由1点のみで、この恒例イベントの告示を確認するが、1位だから喜んだりすることはない。
今も、多くの生徒が張り出された模造紙の前に群がる中で、1目確認した高嶺はもうすでに自分の教室で1時間目の授業の用意をしていた。
「はっ。学年1位様は余裕だねー。まるで、自分が1位なのは当たり前だとでも言いたげだ」
教室の後ろの方で数人の少しガラの悪い生徒が、わざと高嶺に聞こえるように喋り続ける。
「誰かと連むわけでもねぇし、自分みたいな高尚な人間がこんな場所にいることが不思議で堪らねぇとでもおもってるのかね?」
「なんかマジ、面白みないんだよね高嶺って。わたし絶対付き合えねぇわ」
高嶺は自分のことを特別な存在などと感じたことはなかった。
学業の成績が良いのは授業を真面目に受け、予習や復習もしているから当然なこと。だからと言って、努力してないクラスメイトや、勉強が不得意なクラスメイトを馬鹿にしたりもしない。
あくまでも、自分の行っている努力が想定の範囲内で形になっているだけのことだからだ。
陰口や妬みというものにも心を動かさない。これは、学業と努力の話よりももっと単純な理由で、ただ単に「そう思う人もいるのか」としか感じないからだった。
だから、そうした言葉で悲しくなったりしないし、ましてや言い返したり、他の手段でやり返そうとも考えない。
「……なんで、皆はこんなことで一喜一憂できるんだろうか?」
何かのテレビで「感情の欠落」についてやっていたことを思い出した。しかし、いくら学業が良くてもそれは中学レベルに過ぎないし、ましてやそのテレビの解説者は精神科医と臨床心理士という専門家だった。
専門用語や今まで読んだ教科書の参考文庫や、たまに目を通す小説の中でも使われていない表現ばかりで理解出来ずにすぐにチャンネルを変えた。
ただ、そのワンフレーズでチャンネルを回す手が一瞬止まり、チャンネルを回すまでの数分で断片的なワードが心に刺さったことをよく覚えていた。
その時から、それまで漠然と自分の中で芽生えていた疑問にラベルが貼られた。もやもやとした黒く蠢くナニカは、「感情の欠落」という複雑ではあるものの、ぼんやりと輪郭をなぞる事ができる焦燥感と似た感情に成ったのだった。
予鈴が校舎に響きわたるも、話に花が咲いた生徒たちのほとんどはあの模造紙の前から動こうとしない。
数分して、各教師がやって来ると散り散りに自分達の教室へと向かっていく。
「ほれー、いつまでも廊下で喋ってんじゃないよ。チャイムに間に合わなかったやつもれなく内申書の評価落とすぞー」
「ちょっ!八木先生それはオーボーでしょ!」
「うわー、オーボー教師だー!」
「ええい、黙らっしゃい。それにお前ら他クラスじゃねぇか本当に早く戻れよ!」
「はーい!」
廊下にそんなやり取りが響いていた。
八木は数学教師で、高嶺達2年A組の担任だ。旭川中の教師陣の中では割と年齢が低く、養護教諭の里見に次ぐ若さで生徒からも慕われている。
「ふいー、いい天気だなぁ」
教壇に着くと、八木は窓から外を眺めて大きな声でそう言った。2年の教室は3階。
学校の塀をなぞるように植えられた桜の木は、卒業式前後に満開を迎える。今はもうほとんどの花が散っていて、代わりに黄緑の若葉が芽吹き始めていた。
八木の大きく見開いた目に、澄んだ青空が写りこんだ様な気がして高嶺は無意識に自分も窓の外を見ていた。
ほどなくして始業のベルが鳴った。
「よし、全員座ってるな。さすがオレの生徒だ」
八木は照れるとこもなく、そう言ってニカッと笑った。年齢よりもはるかに幼く見える笑顔。
「お、そだ。言い忘れてたわ。高嶺、浜辺、学年1位と8位おめでとう」
「えっへー、頑張ったでしょ私!」
浜辺は嬉しそうにそう言って笑ったていた。
「みんな頑張ってたと思うぞ。な?」
「な?」ともう一度目が合って、高嶺は視線を教科書に落とした。
高嶺は心を動かさない。喜びに心が跳ねることもない。怒りで目の前が真っ白になることもない。哀しみで胸が痛くなることも、楽しくて腹を抱えることも、まだ経験したことがない。
そんな自分を冷静に自覚していながらも、そんな自分に対してすらも高嶺の心は動かないのだった。
「えー、トップ10の総合得点も意味わかんないけど、2位にも15点差……五教科で489点て何?」
「おれのほとんど2倍なんだけどウケる」
「これで1年の時と2年の時の中間・期末試験1位を総なめか……あーあ、天才様は違うねぇ」
旭川中の中間・期末試験では学年トップ10人の名前と総合得点が張り出される。
これは恒例のイベントではあるものの、PTAの面子によってはプライバシーの侵害だと反対意見が出ることもあった。
しかし、こうして努力を形にして張り出すことで成績優秀者が自信を持ち、他の生徒への激をとばすことにもなり学業に集中出来るように導くことを目的に行っている。
高嶺 静哉(たかみね せいや)は心を動かさない。自分の位置を知りたいという理由1点のみで、この恒例イベントの告示を確認するが、1位だから喜んだりすることはない。
今も、多くの生徒が張り出された模造紙の前に群がる中で、1目確認した高嶺はもうすでに自分の教室で1時間目の授業の用意をしていた。
「はっ。学年1位様は余裕だねー。まるで、自分が1位なのは当たり前だとでも言いたげだ」
教室の後ろの方で数人の少しガラの悪い生徒が、わざと高嶺に聞こえるように喋り続ける。
「誰かと連むわけでもねぇし、自分みたいな高尚な人間がこんな場所にいることが不思議で堪らねぇとでもおもってるのかね?」
「なんかマジ、面白みないんだよね高嶺って。わたし絶対付き合えねぇわ」
高嶺は自分のことを特別な存在などと感じたことはなかった。
学業の成績が良いのは授業を真面目に受け、予習や復習もしているから当然なこと。だからと言って、努力してないクラスメイトや、勉強が不得意なクラスメイトを馬鹿にしたりもしない。
あくまでも、自分の行っている努力が想定の範囲内で形になっているだけのことだからだ。
陰口や妬みというものにも心を動かさない。これは、学業と努力の話よりももっと単純な理由で、ただ単に「そう思う人もいるのか」としか感じないからだった。
だから、そうした言葉で悲しくなったりしないし、ましてや言い返したり、他の手段でやり返そうとも考えない。
「……なんで、皆はこんなことで一喜一憂できるんだろうか?」
何かのテレビで「感情の欠落」についてやっていたことを思い出した。しかし、いくら学業が良くてもそれは中学レベルに過ぎないし、ましてやそのテレビの解説者は精神科医と臨床心理士という専門家だった。
専門用語や今まで読んだ教科書の参考文庫や、たまに目を通す小説の中でも使われていない表現ばかりで理解出来ずにすぐにチャンネルを変えた。
ただ、そのワンフレーズでチャンネルを回す手が一瞬止まり、チャンネルを回すまでの数分で断片的なワードが心に刺さったことをよく覚えていた。
その時から、それまで漠然と自分の中で芽生えていた疑問にラベルが貼られた。もやもやとした黒く蠢くナニカは、「感情の欠落」という複雑ではあるものの、ぼんやりと輪郭をなぞる事ができる焦燥感と似た感情に成ったのだった。
予鈴が校舎に響きわたるも、話に花が咲いた生徒たちのほとんどはあの模造紙の前から動こうとしない。
数分して、各教師がやって来ると散り散りに自分達の教室へと向かっていく。
「ほれー、いつまでも廊下で喋ってんじゃないよ。チャイムに間に合わなかったやつもれなく内申書の評価落とすぞー」
「ちょっ!八木先生それはオーボーでしょ!」
「うわー、オーボー教師だー!」
「ええい、黙らっしゃい。それにお前ら他クラスじゃねぇか本当に早く戻れよ!」
「はーい!」
廊下にそんなやり取りが響いていた。
八木は数学教師で、高嶺達2年A組の担任だ。旭川中の教師陣の中では割と年齢が低く、養護教諭の里見に次ぐ若さで生徒からも慕われている。
「ふいー、いい天気だなぁ」
教壇に着くと、八木は窓から外を眺めて大きな声でそう言った。2年の教室は3階。
学校の塀をなぞるように植えられた桜の木は、卒業式前後に満開を迎える。今はもうほとんどの花が散っていて、代わりに黄緑の若葉が芽吹き始めていた。
八木の大きく見開いた目に、澄んだ青空が写りこんだ様な気がして高嶺は無意識に自分も窓の外を見ていた。
ほどなくして始業のベルが鳴った。
「よし、全員座ってるな。さすがオレの生徒だ」
八木は照れるとこもなく、そう言ってニカッと笑った。年齢よりもはるかに幼く見える笑顔。
「お、そだ。言い忘れてたわ。高嶺、浜辺、学年1位と8位おめでとう」
「えっへー、頑張ったでしょ私!」
浜辺は嬉しそうにそう言って笑ったていた。
「みんな頑張ってたと思うぞ。な?」
「な?」ともう一度目が合って、高嶺は視線を教科書に落とした。
高嶺は心を動かさない。喜びに心が跳ねることもない。怒りで目の前が真っ白になることもない。哀しみで胸が痛くなることも、楽しくて腹を抱えることも、まだ経験したことがない。
そんな自分を冷静に自覚していながらも、そんな自分に対してすらも高嶺の心は動かないのだった。
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