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1 私の婚約者
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私の名は、アリア・エストラージュ。
エスト王国の筆頭侯爵家の一人娘。
エストラージュ家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。
特に領地では薬草の栽培が盛んで、一族は医師や薬師を多く輩出している。
私も跡取りとして薬学の教育は小さな頃から受けていたので、一端の薬師としての自負はある。
元々母の実家であり、母もまた一人娘だったために父が婿養子となった。
美しく優秀な女性だったが、今から3年前私が11歳の時に亡くなった。
父は結婚時の約束で後妻を迎える事を禁じられているので、今も独り身だ。
禁じたのは前侯爵である祖父で、万が一娘が亡くなり後妻が来たことにより孫が虐げられるのを防ぐため。
何故かエストラージュ家には女児しか生まれないので、過去にそういった問題が度々起きていたから。
本来血統を重んじる貴族において許されざる事なのだが、婿養子という生き物は往々にして欲深いものらしい。
祖父は祖母を溺愛し、祖母の産んだ娘も溺愛していた。
そもそもその祖母が、継母に虐げられていたそうなので、祖父は余計に娘や孫の未来に神経質になったのだろう。
そして私にも婚約者がいる。
1年前、13歳の時に父が決めたクレヴィス伯爵家の三男、ライオネルだ。
歳は一つ上。
容姿は良い方なのだろう。
いつも女性を連れ歩いているから。
私の趣味ではないけれど。
頭の出来は下の中。
ついでに身体能力も下の中。
更に性格は、、、。
我が父は何を評価してこの男を私の婿に選んだのか、甚だ謎である。
「おい、聞いてるのか?アリア!」
「聞いてますよ。怒鳴らないでください。」
「チッ、全く可愛げのない女だ。そんなんだから嫁の貰い手が無いんだよ!俺に貰ってもらえるだけありがたいと思えよな!」
「嫁ではなく婿でしょう?貰われるのは貴方ですが?」
「五月蝿いわ!ほんっと可愛くねー女だよ。あーやだやだ、こんなのと結婚なんてな!」
「いつでも解消していただいて結構ですが?」
「お前んとこがどうしてもっつって頭下げてきたくせに、偉そうにするんじゃねぇよ!いいか、そのレポート明日中にやって来いよ!さもないと痛い目見る事になるぞ!」
そう言って、ニヤニヤしながら去って行った。
痛い目って言うのは、また私の父に言い付けるってことでしょう?
馬鹿馬鹿しい。
そして父はグダグダと説教してくるのだ。
本当に馬鹿じゃない?
一学年下の私にレポートをやらせる男も、それを容認しろと説教する父も。
「エストラージュ侯爵令嬢。」
ふいに名を呼ばれて振り向くと、すぐ近くにアレクサンダー王太子殿下とエストロジア小公爵のサイラス様が立っていた。
気付かなかった!あんな所見られるなんて⁈
「王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
慌てて略式のカーテシーで挨拶する。
手にはさっきライオネルに渡されたレポート持ってるからね。
「いい、学園内だ。楽にしてくれ。、、、さっきの生徒は何者だい?」
「、、、私の婚約者で、ライオネル・クレヴィス伯爵令息です。」
「婚約者?アレが?」
「はい。」
「君はエストラージュの跡取りだよね?彼はエストラージュに入ると言う事?」
「そう、、、なりますね。」
「君の意思?」
「まさか。父の意思です。」
「君の父上は何を考えているの?」
「私にも全く理解できません。」
「ふふふ、じゃぁコレは僕は預かるね。」
そう言って、私が手に持っていたレポートをするりと取り上げられた。
「えっ?」
「他人にレポートを強要する場面を見過ごす事はできないよ?そんな不正しっかり届け出てあげなくちゃね?」
楽しそうにそう言った王太子殿下は、片目をつぶって綺麗に笑って去って行った。
うわっ?うわぁ!
なんで王太子殿下が⁈
それを見ていたエストロジア公爵令息が、困ったように会釈をして慌てて付いて行かれた。
一体何が起きたの?
王太子殿下と私的な話をしたのは、これが初めてだった。
アレクサンダー・エスト第一王子。
正妃を母に持つ王太子だ。
年齢は私のひとつ上。
文武両道を絵に描いたような優秀な方で、性格も冷静かつ温厚。
外見もハニーブロンドに碧眼の端正な顔立ちと、非の打ちどころのない王子様。
、、、と言われているのだけど、出来過ぎじゃない?疲れないのかしら?なんて思っちゃうんだけど。
彼には一つ下の腹違いの弟君がいる。
側妃の子であるフランクリン第二王子殿下。
彼は典型的な俺様我儘王子。
はっきり言ってお近付きにはなりたくない。
けれど側妃様のご実家は力のある公爵家で、ずっと第二王子を王太子にと画策していると聞く。
アレが次代の国王って冗談でしょう?
誰が見てもバレバレなのに、何故国王陛下は静観されているのかしら?
なんて、考えるのも不敬かしらね。
平和な未来の為にも、是非とも次代の国王にはアレクサンダー王子殿下になって頂きたいわ。
エスト王国の筆頭侯爵家の一人娘。
エストラージュ家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。
特に領地では薬草の栽培が盛んで、一族は医師や薬師を多く輩出している。
私も跡取りとして薬学の教育は小さな頃から受けていたので、一端の薬師としての自負はある。
元々母の実家であり、母もまた一人娘だったために父が婿養子となった。
美しく優秀な女性だったが、今から3年前私が11歳の時に亡くなった。
父は結婚時の約束で後妻を迎える事を禁じられているので、今も独り身だ。
禁じたのは前侯爵である祖父で、万が一娘が亡くなり後妻が来たことにより孫が虐げられるのを防ぐため。
何故かエストラージュ家には女児しか生まれないので、過去にそういった問題が度々起きていたから。
本来血統を重んじる貴族において許されざる事なのだが、婿養子という生き物は往々にして欲深いものらしい。
祖父は祖母を溺愛し、祖母の産んだ娘も溺愛していた。
そもそもその祖母が、継母に虐げられていたそうなので、祖父は余計に娘や孫の未来に神経質になったのだろう。
そして私にも婚約者がいる。
1年前、13歳の時に父が決めたクレヴィス伯爵家の三男、ライオネルだ。
歳は一つ上。
容姿は良い方なのだろう。
いつも女性を連れ歩いているから。
私の趣味ではないけれど。
頭の出来は下の中。
ついでに身体能力も下の中。
更に性格は、、、。
我が父は何を評価してこの男を私の婿に選んだのか、甚だ謎である。
「おい、聞いてるのか?アリア!」
「聞いてますよ。怒鳴らないでください。」
「チッ、全く可愛げのない女だ。そんなんだから嫁の貰い手が無いんだよ!俺に貰ってもらえるだけありがたいと思えよな!」
「嫁ではなく婿でしょう?貰われるのは貴方ですが?」
「五月蝿いわ!ほんっと可愛くねー女だよ。あーやだやだ、こんなのと結婚なんてな!」
「いつでも解消していただいて結構ですが?」
「お前んとこがどうしてもっつって頭下げてきたくせに、偉そうにするんじゃねぇよ!いいか、そのレポート明日中にやって来いよ!さもないと痛い目見る事になるぞ!」
そう言って、ニヤニヤしながら去って行った。
痛い目って言うのは、また私の父に言い付けるってことでしょう?
馬鹿馬鹿しい。
そして父はグダグダと説教してくるのだ。
本当に馬鹿じゃない?
一学年下の私にレポートをやらせる男も、それを容認しろと説教する父も。
「エストラージュ侯爵令嬢。」
ふいに名を呼ばれて振り向くと、すぐ近くにアレクサンダー王太子殿下とエストロジア小公爵のサイラス様が立っていた。
気付かなかった!あんな所見られるなんて⁈
「王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
慌てて略式のカーテシーで挨拶する。
手にはさっきライオネルに渡されたレポート持ってるからね。
「いい、学園内だ。楽にしてくれ。、、、さっきの生徒は何者だい?」
「、、、私の婚約者で、ライオネル・クレヴィス伯爵令息です。」
「婚約者?アレが?」
「はい。」
「君はエストラージュの跡取りだよね?彼はエストラージュに入ると言う事?」
「そう、、、なりますね。」
「君の意思?」
「まさか。父の意思です。」
「君の父上は何を考えているの?」
「私にも全く理解できません。」
「ふふふ、じゃぁコレは僕は預かるね。」
そう言って、私が手に持っていたレポートをするりと取り上げられた。
「えっ?」
「他人にレポートを強要する場面を見過ごす事はできないよ?そんな不正しっかり届け出てあげなくちゃね?」
楽しそうにそう言った王太子殿下は、片目をつぶって綺麗に笑って去って行った。
うわっ?うわぁ!
なんで王太子殿下が⁈
それを見ていたエストロジア公爵令息が、困ったように会釈をして慌てて付いて行かれた。
一体何が起きたの?
王太子殿下と私的な話をしたのは、これが初めてだった。
アレクサンダー・エスト第一王子。
正妃を母に持つ王太子だ。
年齢は私のひとつ上。
文武両道を絵に描いたような優秀な方で、性格も冷静かつ温厚。
外見もハニーブロンドに碧眼の端正な顔立ちと、非の打ちどころのない王子様。
、、、と言われているのだけど、出来過ぎじゃない?疲れないのかしら?なんて思っちゃうんだけど。
彼には一つ下の腹違いの弟君がいる。
側妃の子であるフランクリン第二王子殿下。
彼は典型的な俺様我儘王子。
はっきり言ってお近付きにはなりたくない。
けれど側妃様のご実家は力のある公爵家で、ずっと第二王子を王太子にと画策していると聞く。
アレが次代の国王って冗談でしょう?
誰が見てもバレバレなのに、何故国王陛下は静観されているのかしら?
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