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19 誰にも邪魔はさせないわ(エピローグ)セリーヌ
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私はエスト王国の王妃セリーヌ・エスト。
国王であるレオナルド・エストの正妃。
彼とは幼い頃からの許嫁で、もちろん政略的なものではあったけれど、互いに愛し合い、信頼しあっている、、、と思っていた。
それが崩れたのは成婚の2年後だった。
アズロ公爵家からの夜会の招待に、アレクを産んだばかりの私は出席できず、当時王太子だったレオナルド様だけが出席した。
そして事件は起こった。
公爵令嬢のミランダ様が、レオナルド様に媚薬を盛って関係を持ったという。
更にその時のお子まで出来たから、側妃に迎えると。
レオナルド様は、自分は腕を噛んで気絶したから関係は持ってないと仰ったけれど、なら何故ミランダ様は懐妊されているの?
確かに陛下の腕に咬み傷はあったけれど、、、。
真実は分からないままミランダ様は側妃に上がった。
けれども、お会いした彼女はそんな事を引き起こしそうな方ではなく。
側妃に上がった喜びなどなく、ひたすらに悲しそうな瞳をしていた。
そもそも、手引きもなく令嬢が一人で王太子に媚薬を盛って関係を持つなんて不可能だわ。
なのに、全てミランダ様が勝手にした事で、アズロ公爵は何も知らなかった、自身も困っているだなんて。
アズロ公爵が仕組んだ事だと誰でも分かるでしょうに、レオナルド様はアズロ公爵の言う事を信じきっていて、耳を貸さない。
悪いのはミランダで、アズロ公爵も被害者なのだと。
馬鹿馬鹿しい。
そしてそれ以来、私の子であるアレクは頻繁に命を狙われる様になった。
レオナルド様に訴えても、アズロ公爵はそんな事をする人じゃない、と言うばかり。
誰が考えたって、得をするのは彼だけでしょうに。
だから私は強くなろうと決めた。
油断するとアズロ公爵達の口車に乗せられそうになる陛下を諌めて。
、、、その結果、私も命を狙われようとも。
アレクには可哀想な事をしている。
まだ物心ついたばかりの頃から、命の危険があると叩き込み、自分の身を守れる様にあらゆる事を学ばせた。
無邪気に遊べる時などなかっただろう。
結果、あの子は心底人を信じるという事が出来なくなった。
あの子が心から気を許せるのはサイラスくらいだろう。
幼馴染の側近として、貴族家筆頭のエストロジア公爵家のサイラスが選ばれたのは、まだ6歳の頃か。
初めての同じ歳の友達に喜んでいた矢先、暴漢に襲われ、サイラスがアレクを庇って殺されそうになるという事件が起きた。
すぐに賊は取り押さえられ事なきを得たが、アレクには相当なショックだったらしく、サイラスにもう自分に近寄るなと言ったのだ。
その心を思うと、胸が張り裂けそうになるわ。
けれどサイラスは、
「僕が殿下のお側にいるのは僕の意思です。お守りしたいと思うのも僕の意思です。そして、もしも怪我をしたり命を落としたとしたら、それも僕の責任です。僕の努力が足りなかっただけのこと。だから、殿下が気になさる事ではありません。」
そう言った。
さすがエストロジアの次代よね。
「お前が僕といたいと思ってくれるの?」
「もちろんです。殿下は僕の目標です。」
「?よくわからないけど、じゃぁ絶対死ぬなよ?」
「努力します!」
そう言ったサイラスは、10歳になる頃には、そこいらの騎士達では相手にならないほど腕を上げていた。
だから、アレクも安心して彼をそばに置けたのよ。
そんなアレクだから、婚約者なんて決められるはずもなく。
まぁ、サイラスにも婚約者はいなかったから、悪目立ちしないし焦ることもないかしら?と思っていたら、いきなりの事だった。
「母上、僕の妃に迎えたい御令嬢がいます。」
と、言ってきた。
あまりにも思いがけなくて、言葉を咀嚼するのに時間がかかったわ。
「本気ね?」
「もちろんです。」
「どちらのお嬢様かしら?」
「エストラージュ侯爵令嬢のアリア嬢です。」
そうして、彼女を取り巻く事情を聞いた。
「同情ではないの?」
「違います。僕には彼女が必要です。」
「利用価値があるから?」
「違います。言葉を誤りましたね。彼女が何よりも大切だからです。」
「、、、そう。分かったわ。嬉しいわ。いつ紹介してくれるのかしら?」
「エストラージュが片付いたら。」
「楽しみにしてるわね。」
「ありがとうございます。」
「幸せにしてあげてね?そしてアレク、貴方も幸せになるのよ?」
「もちろんです。」
そう言って笑った顔は、本当に幸せそうで嬉しくなった。
エストラージュのアリア嬢のことは耳にしている。
とても優秀な御令嬢だと。
先日、毒を盛られたアレクを助けてくれて、アレクの側近にと言う話も出ているとか。
ちょっとだけ心配になって、サイラスにこっそり話を聞いた。
「いやぁ、僕もびっくりなんですけど、殿下はアリア様に甘えまくってますよ。」
「、、、え?」
「名前で呼んでってねだったり、馬車の中では抱きしめちゃったり、この間は膝枕してもらってました!」
「、、、あの子が⁈」
「アリア様が動揺するのが楽しいらしいです。」
「あの子が⁈」
「僕がアリア様の名前を呼び捨てにすると怒られますし。」
「あの子が⁈」
「ね?王妃様、大丈夫です。殿下は本当にアリア様がお好きです。」
「、、、そう、そうなのね。良かったわ。ありがとう、サイラス。これからもずっとあの子を見守ってあげてね?」
「もちろんです!」
私にすら甘える事のできなかったあの子が、無条件で甘えられる相手を見つけたのね。
それが、年下の少女というのはアレだけど。
ふふふ、ありがとう、と言うべきかしらね?
アリアさん、どうぞあの子をよろしくね。
どうか2人で幸せになってね。
私は誰よりも貴方達の味方でいるわ。
誰にも邪魔などさせないわ。
例えそれが、皇帝陛下でもね?
国王であるレオナルド・エストの正妃。
彼とは幼い頃からの許嫁で、もちろん政略的なものではあったけれど、互いに愛し合い、信頼しあっている、、、と思っていた。
それが崩れたのは成婚の2年後だった。
アズロ公爵家からの夜会の招待に、アレクを産んだばかりの私は出席できず、当時王太子だったレオナルド様だけが出席した。
そして事件は起こった。
公爵令嬢のミランダ様が、レオナルド様に媚薬を盛って関係を持ったという。
更にその時のお子まで出来たから、側妃に迎えると。
レオナルド様は、自分は腕を噛んで気絶したから関係は持ってないと仰ったけれど、なら何故ミランダ様は懐妊されているの?
確かに陛下の腕に咬み傷はあったけれど、、、。
真実は分からないままミランダ様は側妃に上がった。
けれども、お会いした彼女はそんな事を引き起こしそうな方ではなく。
側妃に上がった喜びなどなく、ひたすらに悲しそうな瞳をしていた。
そもそも、手引きもなく令嬢が一人で王太子に媚薬を盛って関係を持つなんて不可能だわ。
なのに、全てミランダ様が勝手にした事で、アズロ公爵は何も知らなかった、自身も困っているだなんて。
アズロ公爵が仕組んだ事だと誰でも分かるでしょうに、レオナルド様はアズロ公爵の言う事を信じきっていて、耳を貸さない。
悪いのはミランダで、アズロ公爵も被害者なのだと。
馬鹿馬鹿しい。
そしてそれ以来、私の子であるアレクは頻繁に命を狙われる様になった。
レオナルド様に訴えても、アズロ公爵はそんな事をする人じゃない、と言うばかり。
誰が考えたって、得をするのは彼だけでしょうに。
だから私は強くなろうと決めた。
油断するとアズロ公爵達の口車に乗せられそうになる陛下を諌めて。
、、、その結果、私も命を狙われようとも。
アレクには可哀想な事をしている。
まだ物心ついたばかりの頃から、命の危険があると叩き込み、自分の身を守れる様にあらゆる事を学ばせた。
無邪気に遊べる時などなかっただろう。
結果、あの子は心底人を信じるという事が出来なくなった。
あの子が心から気を許せるのはサイラスくらいだろう。
幼馴染の側近として、貴族家筆頭のエストロジア公爵家のサイラスが選ばれたのは、まだ6歳の頃か。
初めての同じ歳の友達に喜んでいた矢先、暴漢に襲われ、サイラスがアレクを庇って殺されそうになるという事件が起きた。
すぐに賊は取り押さえられ事なきを得たが、アレクには相当なショックだったらしく、サイラスにもう自分に近寄るなと言ったのだ。
その心を思うと、胸が張り裂けそうになるわ。
けれどサイラスは、
「僕が殿下のお側にいるのは僕の意思です。お守りしたいと思うのも僕の意思です。そして、もしも怪我をしたり命を落としたとしたら、それも僕の責任です。僕の努力が足りなかっただけのこと。だから、殿下が気になさる事ではありません。」
そう言った。
さすがエストロジアの次代よね。
「お前が僕といたいと思ってくれるの?」
「もちろんです。殿下は僕の目標です。」
「?よくわからないけど、じゃぁ絶対死ぬなよ?」
「努力します!」
そう言ったサイラスは、10歳になる頃には、そこいらの騎士達では相手にならないほど腕を上げていた。
だから、アレクも安心して彼をそばに置けたのよ。
そんなアレクだから、婚約者なんて決められるはずもなく。
まぁ、サイラスにも婚約者はいなかったから、悪目立ちしないし焦ることもないかしら?と思っていたら、いきなりの事だった。
「母上、僕の妃に迎えたい御令嬢がいます。」
と、言ってきた。
あまりにも思いがけなくて、言葉を咀嚼するのに時間がかかったわ。
「本気ね?」
「もちろんです。」
「どちらのお嬢様かしら?」
「エストラージュ侯爵令嬢のアリア嬢です。」
そうして、彼女を取り巻く事情を聞いた。
「同情ではないの?」
「違います。僕には彼女が必要です。」
「利用価値があるから?」
「違います。言葉を誤りましたね。彼女が何よりも大切だからです。」
「、、、そう。分かったわ。嬉しいわ。いつ紹介してくれるのかしら?」
「エストラージュが片付いたら。」
「楽しみにしてるわね。」
「ありがとうございます。」
「幸せにしてあげてね?そしてアレク、貴方も幸せになるのよ?」
「もちろんです。」
そう言って笑った顔は、本当に幸せそうで嬉しくなった。
エストラージュのアリア嬢のことは耳にしている。
とても優秀な御令嬢だと。
先日、毒を盛られたアレクを助けてくれて、アレクの側近にと言う話も出ているとか。
ちょっとだけ心配になって、サイラスにこっそり話を聞いた。
「いやぁ、僕もびっくりなんですけど、殿下はアリア様に甘えまくってますよ。」
「、、、え?」
「名前で呼んでってねだったり、馬車の中では抱きしめちゃったり、この間は膝枕してもらってました!」
「、、、あの子が⁈」
「アリア様が動揺するのが楽しいらしいです。」
「あの子が⁈」
「僕がアリア様の名前を呼び捨てにすると怒られますし。」
「あの子が⁈」
「ね?王妃様、大丈夫です。殿下は本当にアリア様がお好きです。」
「、、、そう、そうなのね。良かったわ。ありがとう、サイラス。これからもずっとあの子を見守ってあげてね?」
「もちろんです!」
私にすら甘える事のできなかったあの子が、無条件で甘えられる相手を見つけたのね。
それが、年下の少女というのはアレだけど。
ふふふ、ありがとう、と言うべきかしらね?
アリアさん、どうぞあの子をよろしくね。
どうか2人で幸せになってね。
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