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6 私、未来を見てきたの
やがて両親も談話室に来て、私達が座るソファの向かいに揃って座る。
メイドがお茶の用意をして下がった。
食事のすぐ後なので、お茶請けはない。
ちょっと残念。
「さて、ミリアンナ。お話しできるかい?」
お父様がゆっくりと言葉を発し、お母様とお兄様も私を見た。
「はい。」
胸に手を当てて、不安な思いを抑え込む。
隣に座ったお兄様が、私の手を取ってギュッと握ってくれる。
「大丈夫だよ、ミリアンナ。焦らなくていい。ゆっくりでいいから、思いつく通りに話してご覧。」
「お兄様。」
目を閉じて深呼吸する。
大丈夫、この人たちは絶対私の味方だもの。
「信じてもらえないかも知れないのですが、私はこの一週間、この先の未来を、私の一生を夢に見ていたのです。」
「未来?ミリアンナの?」
「はい、私のと言うか、この先に起こる事を物語のように夢に見ていたのです。そしてそれはとても悲しくて辛くて恐ろしい、悍ましい未来でした。」
「恐ろしく悍ましいだって⁈」
「はい、お兄様。」
「ミリアンナ、お前はそれがただの夢ではないと思っているんだね?今後の未来に本当に起こり得る事だと?」
「はい、お父様。だって不思議なのです。夢を見て目覚めても、また眠るとその夢の続きが始まるのです。私の存じ上げない方もたくさん出てきました。そして何より、私はそれをまるで劇を見ているように遠くから見ているのです。、、、まるで神様の視点のように。だから、これはきっとこの先に起こる出来事だと、予知夢と呼ばれる夢じゃないかと思ったのです。」
「予知夢だって⁈」
「はい、お兄様。まずはどんな夢だったかお話しさせて下さい。そして本当に予知夢なのか、だだの夢なのか一緒に考えて欲しいのです。」
3人とも眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。
分かってるわ、荒唐無稽だって事は。
でもお願い、否定しないで。
祈るような気持ちで話を続けた。
「まず、ことの始まりは、これから約2年後にフランクリン第二王子から私へ婚約の申し込みがあった事でした。」
「第二王子から⁈」
「ふむ、あり得ない話ではないな。」
「まぁ。」
お兄様が憤慨して叫び、お父様は肯定された。お母様は困惑顔。
「だがね、私は了承しないと思うよ?」
「そうだよ、何であんな奴に可愛い妹をやれるかって!」
「もう、サイラス。王子に向かって不敬よ。でもそうね、私も賛成はしかねるわ。」
あら、やっぱり3人とも反対なのね。
「はい、夢の中でも皆な反対でした。理由はまだ早いからと言うものでしたが、本当は違う理由があるのですか?」
「うん?うーん、それは、、、、。」
お父様の歯切れが悪くなり、お母様も視線を逸らす。
コレはアレかな?やっぱり。
「それは、第二王子の母君である側妃様が浮気されてたと噂になって、フランクリン殿下の出自も怪しかったからですか?」
「なっ⁈何故そんな事を⁈」
「夢の中での状況でした。その為、フランクリン殿下は臣籍降下しても伯爵位しか貰えないとか。だから私と結婚して公爵家に入りたかったようです。」
「そんな事まで、、、、。」
「父上、今のミリアンナの話は事実なのですか?」
「まだ知る人間は少ないがな。お前も知らなかっただろう?それをミリアンナが知っているとは、、、。」
お父様が口元に手を当てて思案顔をされる。
信じてくれそう?もうひと押しかしら?
「でもそれなら余計にミリアンナとの結婚なんて許さないよね?」
「結果としては、私はフランクリン殿下と婚約しました。」
「「「は⁈」」」
「どうしてそんな事に⁈」
皆んな揃って驚愕の声を上げる。
「何度打診してもお父様は首を縦に振らなかったので、殿下は直接私を狙ったのです。お父様もお母様もお兄様もいない隙を狙って突然我が家に来られました。家人が居ないからと家令のセバスがお断りしたのですが、王子を門前払いするのかと叱責されて、私で良いから相手をせよと。」
「ありえん!いかに王子といえ先触れも無くやって来るなど!しかも成人前の娘に1人で相手をせよなどと非常識な!」
お父様がお怒りになる。
夢の話なんだけど、信じてくれてるって事かしら?
まぁ、私も今ならそう思うわ。
ほんと非常識よね。何様よ、あ、王子様だったわ。
でも、無いわ~、一体どこが良かったのかしら?以前の私?
「セバスもなんとかお断りしようとしたのですが、デビュタントの直後だったので、成人だろうなどと言われて、強く拒否出来なかったのです。その内、執事の1人が気を効かせて私を呼びにきました。お茶の用意ができているから取り敢えず相手をしてくれと。このままでは、エストロジアが王家から不況を買うと。」
「ありえん、誰だ⁈そんな勝手なマネをした執事は?フランクリン王子の不況など、エストロジアには痛くも痒くもないわ!」
「グレンです。確かもう直ぐどなたかの紹介で我が家に雇われるはずです。今の執事のアレンが怪我をして田舎に帰るとかでその代わりだったかと。」
「む、、、、。」
「で、何度かそんな事がありまして。」
「何度も?お前が1人の時を狙って王子がやってきたと言うことかい?」
「はい。それで、王子が私を気に入ったと仰って、私もすっかりその気になってしまって。また、王子が我が家に通っているのは私との婚約が整ったからだと言う噂がまことしやかに広がってしまった為に、お父様も仕方なく婚約をお許しになったのです。」
「明らかに計画的だな。」
「その執事、王子の手のものでしょう。そんなに都合よく何度も僕達の留守を狙ってやって来るなんてあり得ない。情報を流して手引きしたのでしょうね。」
「だろうな。誰かの紹介と言っていたね?誰かは分かるかい、ミリアンナ?」
「御免なさい、分からないわ。でもお断りできにくい方だと仰っていたわ。」
「それなりの身分の者ということか。」
「そいつもグルですね。」
お父様とお兄様が眉間に皺を寄せて話し合う。
「信じて下さるのですか?」
期待を込めて聞いてみる。
「正直どう答えていいか分からんが、お前の妄想と呼ぶにはあまりにも出来すぎているからな。」
「ミリアンナ、お兄様は信じているとも。続きがあるのだろう?さあ、話してごらん?」
「サイラス、、、、。」
お母様が残念な目をしてお兄様を見ているわ。
お兄様のシスコンやっぱりブレないわぁ~。
今は有難いけど。
そうして、その後事故でお父様達が亡くなり、私達の結婚後お兄様も亡くなり、私も盗賊に襲われて殺された事を話した。
「そんな、皆んな死んでしまうだなんて!」
「全く、なんて事だ。」
「ミリアンナ、夢とはいえそんな辛い思いをしたのかい。盗賊に殺されるだなんて酷すぎる!さぞかし怖かっただろう?可哀想に。」
お兄様がギュッと抱きしめてくれる。
その温かさに、ああ皆んな生きてくれているのだと改めて感じて、涙が溢れてしまった。
「大丈夫だよ、ミリアンナ。お兄様は絶対にミリアンナを置いて死んだりしないからね?何があってもミリアンナを守ってあげるよ。」
大好きなお兄様。
約束よ、今世は絶対死なないでね。
メイドがお茶の用意をして下がった。
食事のすぐ後なので、お茶請けはない。
ちょっと残念。
「さて、ミリアンナ。お話しできるかい?」
お父様がゆっくりと言葉を発し、お母様とお兄様も私を見た。
「はい。」
胸に手を当てて、不安な思いを抑え込む。
隣に座ったお兄様が、私の手を取ってギュッと握ってくれる。
「大丈夫だよ、ミリアンナ。焦らなくていい。ゆっくりでいいから、思いつく通りに話してご覧。」
「お兄様。」
目を閉じて深呼吸する。
大丈夫、この人たちは絶対私の味方だもの。
「信じてもらえないかも知れないのですが、私はこの一週間、この先の未来を、私の一生を夢に見ていたのです。」
「未来?ミリアンナの?」
「はい、私のと言うか、この先に起こる事を物語のように夢に見ていたのです。そしてそれはとても悲しくて辛くて恐ろしい、悍ましい未来でした。」
「恐ろしく悍ましいだって⁈」
「はい、お兄様。」
「ミリアンナ、お前はそれがただの夢ではないと思っているんだね?今後の未来に本当に起こり得る事だと?」
「はい、お父様。だって不思議なのです。夢を見て目覚めても、また眠るとその夢の続きが始まるのです。私の存じ上げない方もたくさん出てきました。そして何より、私はそれをまるで劇を見ているように遠くから見ているのです。、、、まるで神様の視点のように。だから、これはきっとこの先に起こる出来事だと、予知夢と呼ばれる夢じゃないかと思ったのです。」
「予知夢だって⁈」
「はい、お兄様。まずはどんな夢だったかお話しさせて下さい。そして本当に予知夢なのか、だだの夢なのか一緒に考えて欲しいのです。」
3人とも眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。
分かってるわ、荒唐無稽だって事は。
でもお願い、否定しないで。
祈るような気持ちで話を続けた。
「まず、ことの始まりは、これから約2年後にフランクリン第二王子から私へ婚約の申し込みがあった事でした。」
「第二王子から⁈」
「ふむ、あり得ない話ではないな。」
「まぁ。」
お兄様が憤慨して叫び、お父様は肯定された。お母様は困惑顔。
「だがね、私は了承しないと思うよ?」
「そうだよ、何であんな奴に可愛い妹をやれるかって!」
「もう、サイラス。王子に向かって不敬よ。でもそうね、私も賛成はしかねるわ。」
あら、やっぱり3人とも反対なのね。
「はい、夢の中でも皆な反対でした。理由はまだ早いからと言うものでしたが、本当は違う理由があるのですか?」
「うん?うーん、それは、、、、。」
お父様の歯切れが悪くなり、お母様も視線を逸らす。
コレはアレかな?やっぱり。
「それは、第二王子の母君である側妃様が浮気されてたと噂になって、フランクリン殿下の出自も怪しかったからですか?」
「なっ⁈何故そんな事を⁈」
「夢の中での状況でした。その為、フランクリン殿下は臣籍降下しても伯爵位しか貰えないとか。だから私と結婚して公爵家に入りたかったようです。」
「そんな事まで、、、、。」
「父上、今のミリアンナの話は事実なのですか?」
「まだ知る人間は少ないがな。お前も知らなかっただろう?それをミリアンナが知っているとは、、、。」
お父様が口元に手を当てて思案顔をされる。
信じてくれそう?もうひと押しかしら?
「でもそれなら余計にミリアンナとの結婚なんて許さないよね?」
「結果としては、私はフランクリン殿下と婚約しました。」
「「「は⁈」」」
「どうしてそんな事に⁈」
皆んな揃って驚愕の声を上げる。
「何度打診してもお父様は首を縦に振らなかったので、殿下は直接私を狙ったのです。お父様もお母様もお兄様もいない隙を狙って突然我が家に来られました。家人が居ないからと家令のセバスがお断りしたのですが、王子を門前払いするのかと叱責されて、私で良いから相手をせよと。」
「ありえん!いかに王子といえ先触れも無くやって来るなど!しかも成人前の娘に1人で相手をせよなどと非常識な!」
お父様がお怒りになる。
夢の話なんだけど、信じてくれてるって事かしら?
まぁ、私も今ならそう思うわ。
ほんと非常識よね。何様よ、あ、王子様だったわ。
でも、無いわ~、一体どこが良かったのかしら?以前の私?
「セバスもなんとかお断りしようとしたのですが、デビュタントの直後だったので、成人だろうなどと言われて、強く拒否出来なかったのです。その内、執事の1人が気を効かせて私を呼びにきました。お茶の用意ができているから取り敢えず相手をしてくれと。このままでは、エストロジアが王家から不況を買うと。」
「ありえん、誰だ⁈そんな勝手なマネをした執事は?フランクリン王子の不況など、エストロジアには痛くも痒くもないわ!」
「グレンです。確かもう直ぐどなたかの紹介で我が家に雇われるはずです。今の執事のアレンが怪我をして田舎に帰るとかでその代わりだったかと。」
「む、、、、。」
「で、何度かそんな事がありまして。」
「何度も?お前が1人の時を狙って王子がやってきたと言うことかい?」
「はい。それで、王子が私を気に入ったと仰って、私もすっかりその気になってしまって。また、王子が我が家に通っているのは私との婚約が整ったからだと言う噂がまことしやかに広がってしまった為に、お父様も仕方なく婚約をお許しになったのです。」
「明らかに計画的だな。」
「その執事、王子の手のものでしょう。そんなに都合よく何度も僕達の留守を狙ってやって来るなんてあり得ない。情報を流して手引きしたのでしょうね。」
「だろうな。誰かの紹介と言っていたね?誰かは分かるかい、ミリアンナ?」
「御免なさい、分からないわ。でもお断りできにくい方だと仰っていたわ。」
「それなりの身分の者ということか。」
「そいつもグルですね。」
お父様とお兄様が眉間に皺を寄せて話し合う。
「信じて下さるのですか?」
期待を込めて聞いてみる。
「正直どう答えていいか分からんが、お前の妄想と呼ぶにはあまりにも出来すぎているからな。」
「ミリアンナ、お兄様は信じているとも。続きがあるのだろう?さあ、話してごらん?」
「サイラス、、、、。」
お母様が残念な目をしてお兄様を見ているわ。
お兄様のシスコンやっぱりブレないわぁ~。
今は有難いけど。
そうして、その後事故でお父様達が亡くなり、私達の結婚後お兄様も亡くなり、私も盗賊に襲われて殺された事を話した。
「そんな、皆んな死んでしまうだなんて!」
「全く、なんて事だ。」
「ミリアンナ、夢とはいえそんな辛い思いをしたのかい。盗賊に殺されるだなんて酷すぎる!さぞかし怖かっただろう?可哀想に。」
お兄様がギュッと抱きしめてくれる。
その温かさに、ああ皆んな生きてくれているのだと改めて感じて、涙が溢れてしまった。
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