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第33話『朝の新妻生活と旦那様呼びの威力』
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柔らかな朝の光が、カーテンの隙間から差し込み、部屋の埃をきらきらと輝かせている。ノクスは、ゆっくりと意識を浮上させた。最初に感じたのは、右腕の違和感が完全に消えていること。そして、次に鼻腔をくすぐったのは、味噌と出汁の、あまりにも家庭的で、温かい匂いだった。
(…ああ、そうか。ここは、もう僕だけの部屋じゃないんだったな)
その事実を、彼は驚くほど穏やかに、そして、自然に受け入れていた。
部屋の片隅の簡素なキッチンからは、トントン、と包丁がまな板を叩く軽快なリズムと、ぐつぐつと鍋が煮える心地よい音が聞こえてくる。
「おはよ。朝ごはん、もうすぐ出来るから顔洗って、ハミガキしちゃって」
声のする方へ視線を向けると、そこには、白いエプロンを身に着けたリアが、完璧な「新妻」の姿で立っていた。その手にはお玉が握られ、その姿は、この殺風景な部屋に、まるで最初から存在していたかのように、自然に溶け込んでいる。
「了解」
ノクスは、素直に頷くと、ベッドから起き上がり、洗面所へと向かった。その足取りには、もう迷いも、戸惑いもなかった。
ノクスが洗面所から戻ると、テーブルの上には、既に完璧な朝食が並べられていた。ほかほかと湯気の立つ白いご飯、豆腐とワカメの味噌汁、そして、黄金色に輝く、少し甘めの卵焼き。昨日までの彼の一人の食卓では、決してあり得なかった光景だった。
リアは、満足そうにその料理の数々を見つめている。
「こんな毎日、凝った料理しなくて大丈夫だぞ」
「平気だよ。好きでやってるんだし」
リアは、心の底から楽しそうに答えた。彼女にとって、彼の世話を焼き、彼の喜ぶ顔を見ることは、どんな訓練よりも、どんな任務よりも、充実した時間らしかった。
「腕、大丈夫そう?」
「ありがとう。もう大丈夫そうだ。それよりも、リアは身体は大丈夫なのか?」
ノクスは、自分の腕を数回、曲げ伸ばししてみせる。痛みも、違和感も、完全に消え去っていた。だが、それ以上に、彼は彼女の身体を案じていた。あの無茶な治療法が、彼女にどれだけの負担をかけているのか。
「旦那様のためなら、こんなのなんでもないよぉ~」
その、あまりにも自然に、そして、あまりにも甘い響きで紡がれた「旦那様」という言葉。
ノクスの動きが、ぴたりと止まる。だが、彼は何も言わなかった。否定も、訂正もしない。ただ、僅かに目を見開いた後、ふいと視線を逸らし、黙って味噌汁を一口啜った。その耳が、ほんのりと赤く染まっていることに、リアは気づいていただろうか。
二人の間に、少しだけぎこちない、しかし、どこまでも温かい沈黙が流れた。
ノクスは、ほんのりと赤く染まった自分の耳に気づかないふりをしながら、黙々と朝食を口に運んでいた。だが、その心は、先ほどの「旦那様」という言葉の、あまりにも自然な響きに、まだ揺さぶられ続けていた。
(まずいな、このままでは、本当に…)
彼は、目の前で幸せそうに卵焼きを頬張るリアに、気遣うように、そして、自分自身に言い聞かせるように、口を開いた。
「なら、いいんだが…訓練の再開は明日からでいいんじゃないか?セリカさんには僕から伝えておくよ」
「いいの!?やった、なら、あたしは今日はお部屋探ししに行こうかなぁ」
リアは、ぱっと顔を輝かせた。その思考は、もはや「休息」ではなく、完全に「新生活の準備」へと切り替わっている。
「あぁ、無理がないようなら頼むよ」
その、ノクスのあまりにも素直な承諾。
その瞬間、リアの表情が、悪戯を思いついた子供のように、にやりと変わった。
「…ぐへへ」
「な、なんだ…何企んでる…」
ノクスは、背筋に悪寒が走るのを感じていた。
「いやいや、『旦那様』呼びを、あんたが自然と受け入れてくれたから、これはもう完全にガードが緩んできたな、と…フヒヒ」
ノクス(やばい…すっかりリアのペースに…)
「フヒヒ…」
ノクスは、もはやどう返せばいいのかわからず、無言で食事を続けた。リアの、全てを見透かしたかのような計算高い笑みに、彼は完全に敗北していた。
食事を終えたノクスは、仕事用のジャケットを羽織り、出勤の準備を整えていた。その後ろでは、リアが、まるで長年連れ添った妻のように、手際よく食器を片付けている。その光景は、あまりにも自然で、どこか居心地が良かった。
「じゃぁ、行ってくるよ。何かあったら連絡くれ」
「うん、いってらっしゃい」
リアは、流し台の前でくるりと振り返ると、両腕を大きく広げる仕草を見せた。
「…なんだソレは…」
「なにって…いってらっしゃいのハグよハグ!ほらほら早くっ!」
「ぐぬぬ…」
「フヒヒ…」
ノクスが、羞恥と葛藤で顔を赤らめて固まっている。その困り果てた顔を見て、リアは、今日一番満足そうな笑みを浮かべていた。
リアは、ノクスが困り果てているその表情を見て、今日一番満足そうな、そして、どこまでも粘着質な笑みを浮かべた。
「くっくっく…まぁノクスの困った顔を見れて、ワシは満足じゃ。行くが…」
リアが、まるで王様が臣下を送り出すかのように「行くが良い」と言いかけた、その矢先だった。
それまで、羞恥と葛藤に身をよじっていたはずのノクスが、突然、無言で一歩踏み出した。そして、リアが反応するよりも早く、その華奢な身体を、力強く、しかし、どこか優しく、抱きしめた。
「…いってくる」
耳元で、低く、そして、少しだけ掠れた声が囁かれる。
その瞬間、リアの思考は、完全に停止した。
「ごぁあぁああぁあ」
彼女の喉から、もはや悲鳴とも、うめき声ともつかない、奇妙な唸り声が漏れた。顔は、爆発したかのように真っ赤に染まり、全身がカチコチに硬直している。
ノクスは、そんな彼女の反応に、心底不思議そうな顔で腕を解いた。
「お前がしろって言ったんだろ。なんだ、その反応は…」
「…ハァハァ…そ、それはそうだが…こ、これを受け入れてしまったら、あたしの何かが、変わってしまう気がする…!」
リアは、胸元を強く押さえながら、ぜえぜえと肩で息をしている。その瞳は潤み、完全に動揺していた。
「わかったわかった、次から無理するなよ」
ノクスは、やれやれと首を振りながら、そんな彼女の頭を、ぽん、と軽く叩いた。
「お、ぉぅ…いってらっしゃい」
リアは、胸を押さえたまま、かろうじて、それだけを絞り出すのがやっとだった。
自室の扉を閉め、一人、静かな廊下を歩き出す。ノクスは、先ほどの自分の、あまりにも突飛な行動を振り返っていた。
(…僕のほうが、最近、何かが変わってきたんだけどな…)
そうだ。あの時、彼女を抱きしめたのは、計算でも、からかいでもない。ただ、そうしたいと、心が叫んだからだ。
彼女のペースに巻き込まれるだけだった自分が、いつの間にか、彼女の反応を楽しみ、その心を揺さぶることに、喜びを見出している。
その、あまりにも大きな変化に、ノクス自身が、一番戸惑っていた。
【ノクスが出て行った後の部屋】
一人、部屋に残されたリアは、その場にずるずると座り込んだ。まだ、心臓が早鐘のように鳴り響いている。先ほどの、彼の腕の感触と、耳元で囁かれた声が、何度も何度も、頭の中で反響していた。
「…あぁぁ、心臓が止まるかと思った…」
顔は、まだ赤いまま、熱を帯びている。
「でも…ノクスの方から、抱きしめてくれるなんて…」
その事実を思い返しただけで、嬉しさが込み上げてきて、頬が自然と緩んでしまう。
だが、その喜びと同時に、彼女の心には、これまで感じたことのない種類の、焦りと不安が芽生えていた。
「このままじゃ、あたしが先に、堕ちちゃう…」
追いかけるのは、自分のはずだった。
だが、今は、彼の、ほんの些細な一言、一つの仕草に、自分の心が、いとも容易く、完全に、支配されてしまっている。
その事実に、リアは、喜びと、そして、どうしようもない恐怖を感じていた。
ノクスが出ていった後の、静かな部屋。
リアは、先ほどの心臓が飛び出るかのような衝撃の余韻に、しばらく浸っていた。だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。彼女は、ぱん、と自分の両頬を軽く叩いて気合を入れると、決然とした表情で立ち上がった。
「よし!ノクスが喜ぶような、素敵なお部屋を見つけてくるぞ!」
彼女は、テキパキと外出用の服に着替えると、机の上のメモ帳に、これから探す部屋の条件を書き出し始めた。
「日当たりは絶対!キッチンは広い方がいいよね、ノクスの好きなものたくさん作ってあげたいし…。ベッドは…大きいのが一つあれば、いいかな…♡」
そう呟きながら、彼女は幸せそうに頬を緩ませる。その瞳には、彼と共にする未来への、確かな期待が輝いていた。
「二人で暮らせる、ちゃんとしたお部屋…」
ノクスは、朝日を浴びながら、軍本部へと続く石畳の道を歩いていた。清々しい朝の空気の中、彼の頭の中は、リアとの、あまりにも急激に変化した生活のことで満たされていた。
(彼女が朝食を作り、当たり前のように隣にいる。そんな生活が、当たり前になってきてる…。これで、本当にいいのか?)
その自問自答に、答えはまだ、出なかった。
一方、リアは、部屋探しのための準備を完璧に整え、希望に満ちた表情でノクスの部屋の扉を開けた。
「ノクスを、驚かせちゃうぞ~」
その弾むような声は、二人の新しい未来が、もうすぐそこまで来ていることを告げているかのようだった。
―34話へ続く
(…ああ、そうか。ここは、もう僕だけの部屋じゃないんだったな)
その事実を、彼は驚くほど穏やかに、そして、自然に受け入れていた。
部屋の片隅の簡素なキッチンからは、トントン、と包丁がまな板を叩く軽快なリズムと、ぐつぐつと鍋が煮える心地よい音が聞こえてくる。
「おはよ。朝ごはん、もうすぐ出来るから顔洗って、ハミガキしちゃって」
声のする方へ視線を向けると、そこには、白いエプロンを身に着けたリアが、完璧な「新妻」の姿で立っていた。その手にはお玉が握られ、その姿は、この殺風景な部屋に、まるで最初から存在していたかのように、自然に溶け込んでいる。
「了解」
ノクスは、素直に頷くと、ベッドから起き上がり、洗面所へと向かった。その足取りには、もう迷いも、戸惑いもなかった。
ノクスが洗面所から戻ると、テーブルの上には、既に完璧な朝食が並べられていた。ほかほかと湯気の立つ白いご飯、豆腐とワカメの味噌汁、そして、黄金色に輝く、少し甘めの卵焼き。昨日までの彼の一人の食卓では、決してあり得なかった光景だった。
リアは、満足そうにその料理の数々を見つめている。
「こんな毎日、凝った料理しなくて大丈夫だぞ」
「平気だよ。好きでやってるんだし」
リアは、心の底から楽しそうに答えた。彼女にとって、彼の世話を焼き、彼の喜ぶ顔を見ることは、どんな訓練よりも、どんな任務よりも、充実した時間らしかった。
「腕、大丈夫そう?」
「ありがとう。もう大丈夫そうだ。それよりも、リアは身体は大丈夫なのか?」
ノクスは、自分の腕を数回、曲げ伸ばししてみせる。痛みも、違和感も、完全に消え去っていた。だが、それ以上に、彼は彼女の身体を案じていた。あの無茶な治療法が、彼女にどれだけの負担をかけているのか。
「旦那様のためなら、こんなのなんでもないよぉ~」
その、あまりにも自然に、そして、あまりにも甘い響きで紡がれた「旦那様」という言葉。
ノクスの動きが、ぴたりと止まる。だが、彼は何も言わなかった。否定も、訂正もしない。ただ、僅かに目を見開いた後、ふいと視線を逸らし、黙って味噌汁を一口啜った。その耳が、ほんのりと赤く染まっていることに、リアは気づいていただろうか。
二人の間に、少しだけぎこちない、しかし、どこまでも温かい沈黙が流れた。
ノクスは、ほんのりと赤く染まった自分の耳に気づかないふりをしながら、黙々と朝食を口に運んでいた。だが、その心は、先ほどの「旦那様」という言葉の、あまりにも自然な響きに、まだ揺さぶられ続けていた。
(まずいな、このままでは、本当に…)
彼は、目の前で幸せそうに卵焼きを頬張るリアに、気遣うように、そして、自分自身に言い聞かせるように、口を開いた。
「なら、いいんだが…訓練の再開は明日からでいいんじゃないか?セリカさんには僕から伝えておくよ」
「いいの!?やった、なら、あたしは今日はお部屋探ししに行こうかなぁ」
リアは、ぱっと顔を輝かせた。その思考は、もはや「休息」ではなく、完全に「新生活の準備」へと切り替わっている。
「あぁ、無理がないようなら頼むよ」
その、ノクスのあまりにも素直な承諾。
その瞬間、リアの表情が、悪戯を思いついた子供のように、にやりと変わった。
「…ぐへへ」
「な、なんだ…何企んでる…」
ノクスは、背筋に悪寒が走るのを感じていた。
「いやいや、『旦那様』呼びを、あんたが自然と受け入れてくれたから、これはもう完全にガードが緩んできたな、と…フヒヒ」
ノクス(やばい…すっかりリアのペースに…)
「フヒヒ…」
ノクスは、もはやどう返せばいいのかわからず、無言で食事を続けた。リアの、全てを見透かしたかのような計算高い笑みに、彼は完全に敗北していた。
食事を終えたノクスは、仕事用のジャケットを羽織り、出勤の準備を整えていた。その後ろでは、リアが、まるで長年連れ添った妻のように、手際よく食器を片付けている。その光景は、あまりにも自然で、どこか居心地が良かった。
「じゃぁ、行ってくるよ。何かあったら連絡くれ」
「うん、いってらっしゃい」
リアは、流し台の前でくるりと振り返ると、両腕を大きく広げる仕草を見せた。
「…なんだソレは…」
「なにって…いってらっしゃいのハグよハグ!ほらほら早くっ!」
「ぐぬぬ…」
「フヒヒ…」
ノクスが、羞恥と葛藤で顔を赤らめて固まっている。その困り果てた顔を見て、リアは、今日一番満足そうな笑みを浮かべていた。
リアは、ノクスが困り果てているその表情を見て、今日一番満足そうな、そして、どこまでも粘着質な笑みを浮かべた。
「くっくっく…まぁノクスの困った顔を見れて、ワシは満足じゃ。行くが…」
リアが、まるで王様が臣下を送り出すかのように「行くが良い」と言いかけた、その矢先だった。
それまで、羞恥と葛藤に身をよじっていたはずのノクスが、突然、無言で一歩踏み出した。そして、リアが反応するよりも早く、その華奢な身体を、力強く、しかし、どこか優しく、抱きしめた。
「…いってくる」
耳元で、低く、そして、少しだけ掠れた声が囁かれる。
その瞬間、リアの思考は、完全に停止した。
「ごぁあぁああぁあ」
彼女の喉から、もはや悲鳴とも、うめき声ともつかない、奇妙な唸り声が漏れた。顔は、爆発したかのように真っ赤に染まり、全身がカチコチに硬直している。
ノクスは、そんな彼女の反応に、心底不思議そうな顔で腕を解いた。
「お前がしろって言ったんだろ。なんだ、その反応は…」
「…ハァハァ…そ、それはそうだが…こ、これを受け入れてしまったら、あたしの何かが、変わってしまう気がする…!」
リアは、胸元を強く押さえながら、ぜえぜえと肩で息をしている。その瞳は潤み、完全に動揺していた。
「わかったわかった、次から無理するなよ」
ノクスは、やれやれと首を振りながら、そんな彼女の頭を、ぽん、と軽く叩いた。
「お、ぉぅ…いってらっしゃい」
リアは、胸を押さえたまま、かろうじて、それだけを絞り出すのがやっとだった。
自室の扉を閉め、一人、静かな廊下を歩き出す。ノクスは、先ほどの自分の、あまりにも突飛な行動を振り返っていた。
(…僕のほうが、最近、何かが変わってきたんだけどな…)
そうだ。あの時、彼女を抱きしめたのは、計算でも、からかいでもない。ただ、そうしたいと、心が叫んだからだ。
彼女のペースに巻き込まれるだけだった自分が、いつの間にか、彼女の反応を楽しみ、その心を揺さぶることに、喜びを見出している。
その、あまりにも大きな変化に、ノクス自身が、一番戸惑っていた。
【ノクスが出て行った後の部屋】
一人、部屋に残されたリアは、その場にずるずると座り込んだ。まだ、心臓が早鐘のように鳴り響いている。先ほどの、彼の腕の感触と、耳元で囁かれた声が、何度も何度も、頭の中で反響していた。
「…あぁぁ、心臓が止まるかと思った…」
顔は、まだ赤いまま、熱を帯びている。
「でも…ノクスの方から、抱きしめてくれるなんて…」
その事実を思い返しただけで、嬉しさが込み上げてきて、頬が自然と緩んでしまう。
だが、その喜びと同時に、彼女の心には、これまで感じたことのない種類の、焦りと不安が芽生えていた。
「このままじゃ、あたしが先に、堕ちちゃう…」
追いかけるのは、自分のはずだった。
だが、今は、彼の、ほんの些細な一言、一つの仕草に、自分の心が、いとも容易く、完全に、支配されてしまっている。
その事実に、リアは、喜びと、そして、どうしようもない恐怖を感じていた。
ノクスが出ていった後の、静かな部屋。
リアは、先ほどの心臓が飛び出るかのような衝撃の余韻に、しばらく浸っていた。だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。彼女は、ぱん、と自分の両頬を軽く叩いて気合を入れると、決然とした表情で立ち上がった。
「よし!ノクスが喜ぶような、素敵なお部屋を見つけてくるぞ!」
彼女は、テキパキと外出用の服に着替えると、机の上のメモ帳に、これから探す部屋の条件を書き出し始めた。
「日当たりは絶対!キッチンは広い方がいいよね、ノクスの好きなものたくさん作ってあげたいし…。ベッドは…大きいのが一つあれば、いいかな…♡」
そう呟きながら、彼女は幸せそうに頬を緩ませる。その瞳には、彼と共にする未来への、確かな期待が輝いていた。
「二人で暮らせる、ちゃんとしたお部屋…」
ノクスは、朝日を浴びながら、軍本部へと続く石畳の道を歩いていた。清々しい朝の空気の中、彼の頭の中は、リアとの、あまりにも急激に変化した生活のことで満たされていた。
(彼女が朝食を作り、当たり前のように隣にいる。そんな生活が、当たり前になってきてる…。これで、本当にいいのか?)
その自問自答に、答えはまだ、出なかった。
一方、リアは、部屋探しのための準備を完璧に整え、希望に満ちた表情でノクスの部屋の扉を開けた。
「ノクスを、驚かせちゃうぞ~」
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