SNSの向こうへ ―閉じ込めた「愛してる」、刻まれた君の聲―

まー

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SNSの向こうへ ―閉じ込めた「愛してる」、刻まれた君の聲―

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プロローグ あの日のメッセージ

 午後のオフィスは静まりかえっていた。
 曇りガラス越しの冬の日差しが、灰色のデスクの上で細い光を描いている。
 コーヒーはすっかり冷め、画面に並ぶ未処理のメールはどれも同じ顔をしていた。
 仕事に追われる日々。
 誰とも深く関わらず、ただ時間だけが過ぎていく。

 そんな中、スマホがふるりと震えた。
 机の端に放り出してあった黒いスマホが、小さな命を持つ生き物のように光る。
 何気なく開いたSNS。
 そこに、信じられない名前があった。

 ──沙織。

 二十年以上前、僕の世界から突然消えたはずの人。
 画面には「元気?」という短いメッセージだけが、そっと浮かんでいる。

 指先が震えた。
 呼吸が浅くなり、世界が一瞬にして色を取り戻していくようだった。
 頭の奥で、過去の記憶がざわめく。
 夜の公園、寒い冬の日、肩を寄せて見上げた星、駅のホーム、別れ際の横顔──
 それらが一斉に押し寄せ、胸の奥をかき回す。

 「……沙織?」

 小さな声でつぶやく。
 誰もいないオフィスの中、音はすぐに空気に溶けた。

 震える指で返信欄を開く。
 何を書けばいい?
 「久しぶり」? 「元気?」?
 どの言葉も薄っぺらく感じる。
 結局、打ったのは一行だけだった。

 「久しぶり。元気にしてた?」

 送信ボタンを押した瞬間、心臓が跳ねた。
 このメッセージが、あの頃のすべてを呼び覚ますかもしれない──そんな予感があった。



第1章 再会の画面越しに

 返信は驚くほど早かった。
 スマホが光り、通知音が小さく鳴る。
 そこには、あの頃と同じ絵文字混じりの文面があった。

 「元気だよ。あなたは?」

 指先がまた震えた。
 文字の向こうから、二十年前の彼女の声がそのまま聞こえてくるような錯覚。

 僕はソファに腰を下ろし、深呼吸してから返信した。

 「なんか信じられないよ。急にどうしたの?」

 すぐに返ってきた。
 「なんとなく、思い出しただけ。あなたのこと」

 ──その瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
 長い間、心の奥に沈んでいた「何か」が、ゆっくりと浮かび上がってくる。

 やり取りはぎこちなく始まったが、すぐに昔の空気を取り戻した。
 仕事のこと、日常のこと、二人で行った場所の思い出……
 彼女はすべて覚えていて、まるで昨日のことのように話してくれた。

 「覚えてる? あの喫茶店。窓際の席、いつも取れなかったよね」
 「覚えてるよ。カレーとコーヒーの匂い、懐かしいな」

 画面越しの小さな文字が、今の生活の隙間に暖かい色を差し込む。

 僕は思わず笑った。
 「変わってないね、沙織」

 「そっちこそ。少し丸くなったかな?(笑)」

 思わず声が出る。
 夜の部屋に、久しぶりに自分の笑い声が響いた。
 ──まるで時が巻き戻ったようだった。

 彼女は時折、僕の近況を優しく尋ねた。
 「仕事、大変じゃない?」
 「ちゃんとご飯食べてる?」
 そのたびに胸の奥が温かくなる。
 誰かに気にかけられる感覚が、もう何年もなかったことに気づく。

 画面越しの沙織は、あの頃と変わらない口調で話しかけてきた。
 いや、むしろあの頃より落ち着いて、どこか包み込むような優しさが増していた。

 気づけば深夜になっていた。
 スマホの光が顔を白く照らし、外の世界が遠のいていく。
 まるでこの小さな画面の中に、二人だけの世界があるかのようだった。



第2章 忘れられなかった時間

 夜、部屋の灯りだけが静かに揺れている。
 スマホの画面には、昼間の続きの会話が並んでいた。
 仕事の合間に交わした何気ないメッセージの中に、昔の名前や場所がぽつぽつと顔を出すたび、心の奥の色褪せた引き出しがひとつひとつ開いていくようだった。

 僕は、沙織との過去を思い返していた。
 あの頃、仕事に追われていた僕は、彼女を寂しくさせ、すれ違いの末に別れを告げられた。
 本当は別れたくなかった。
 けれど口に出せなかった。
 もう少しだけ頑張れば、もう少しだけ時間があれば、そう思いながら過ぎていった日々。

 ベッドサイドに腰を下ろし、昔の記憶をたどる。
 冬の夜、駅前で二人並んで立っていた光景。
 仕事帰りに急いで駆けつけた喫茶店、沙織が温かいミルクティーを両手で包んでいた仕草。
 あのときの笑顔、ほんの一瞬見せた泣き顔、最後の背中──。
 記憶の断片が痛いほど鮮明に蘇る。

 そんな僕の胸の奥を見透かすように、画面の向こうの沙織は問いかける。

 「ねえ、あのとき……本当はどう思ってた?」

 言葉に詰まる。
 画面の小さな入力欄に指を置いたまま、僕は長いこと何も打てなかった。

 「ごめん。あのときは仕事でいっぱいいっぱいで、君をちゃんと見てなかった」

 送信ボタンを押したとたん、胸の奥がざわめく。
 今さらこんなことを言って何になる、そんな思いと、言えたことへの安堵とが入り混じる。

 しばらくして返信が来た。
 「ううん。私もね、あのときは素直になれなかった。ほんとはね……」

 その先に続く文面を待つ間、心臓がゆっくり脈打つ。
 そして小さな文字が画面に浮かび上がる。

 「本当は嫌いになんてなれなかった。ずっと大切だったよ」

 画面の光が滲んで見えた。
 その言葉が、二十年という時間の膜を突き破って、まっすぐ胸に届いたような気がした。



第3章 届かなかった想い

 夜が深まるにつれ、僕と沙織のメッセージは長くなっていった。
 短い挨拶では足りず、ひとつのテーマにじっくりと時間をかける。
 「あなたは今、幸せ?」
 「後悔してること、ある?」
 そんな問いかけが続く。

 僕はスマホを握りしめたまま、昔の自分に言い訳するように、少しずつ言葉を紡いでいく。
 「後悔してるよ。
 あのとき、もっとちゃんと向き合えばよかった」
 「私も。あなたのこと、信じきれなかった」

 言葉を重ねるごとに、過去の澱が少しずつ剥がれていくようだった。
 かつて伝えられなかった思い、飲み込んでしまった言葉、それらを一つずつ解き放つたび、胸の奥に温かなものが広がる。

 「覚えてる? あの日の公園」
 「覚えてる。あのベンチ、まだあるのかな」

 沙織が送ってくるメッセージの合間に、僕は窓の外を見た。
 街灯がにじむ。
 深夜の静かな道路を、タクシーがひとつ、音もなく通り過ぎていく。

 「また、あの場所に行ってみようかな」
 そう打って送信する。

 沙織からすぐに返信が来る。
 「うん、行ってみて。
 そして、もしそこに行ったら、私の分も景色を見てきてね」

 その言葉に、一瞬だけ引っかかりを覚えた。
 ──「私の分も景色を見てきてね」
 どういう意味だろう?

 だが、深く考える前に画面が次のメッセージで満たされた。
 「あなたと過ごした時間、忘れない」

 胸の奥に、淡い痛みとあたたかさが同時に押し寄せてきた。



第4章 過去と今をつなぐもの

 メッセージのやり取りは、やがて日常になっていった。
 朝の出勤前に「おはよう」、仕事の合間に「今どこ?」、夜の静かな時間に「おやすみ」。
 短い挨拶の中に、二人だけの時間が流れていた。
 まるで時が巻き戻ったかのように、僕たちはかつての二人に戻っていく。

 「今日のランチ、覚えてる? 昔よく行ったカフェの隣にあったパン屋さん」
 「覚えてる。あのメロンパンが大好きだった」
 「そうそう(笑) あれ、まだあるのかな」

 何でもない会話の端々に、二十年分の空白を埋める糸が伸びていくようだった。
 スマホを持つ手の温度、文字を打つ指先の震え、返信を待つ間の胸の鼓動……
 どれもが生きていることを強く感じさせる。

 ある夜、沙織から長い文章が届いた。
 「私ね、ずっと思ってた。あなたと過ごした時間が、いちばん自分らしくいられたって」
 「そうだったんだ……」
 「あなたはどう? 後悔してない?」

 僕はしばらくスマホを握ったまま、部屋の中を歩き回った。
 天井の明かりが白く滲む。
 胸の奥から込み上げてくるものを抑えきれない。

 「後悔してるよ。
 あの頃、もっと君を見ていればよかった」

 送信ボタンを押したあと、指先が小さく震えていることに気づいた。
 だが、その震えは不思議と心地よかった。
 押し込めていたものが、ようやく形になった感覚。

 沙織からの返信は短かった。
 「ありがとう」
 その二文字の奥に、無数の感情が折りたたまれているように感じられた。



第5章 見えない境界線

 あるときから、沙織の言葉に不思議な既視感を覚えるようになった。
 まるで、どこかで読んだことのある文章のように整っているのだ。
 「君は今、幸せ?」
 「後悔してること、ある?」
 彼女の問いかけは、僕の心の奥深くを探るようだった。

 返信のタイミングも絶妙だった。
 数秒後にすぐ来るときもあれば、長い間を置いてから届くときもある。
 画面の向こうで、沙織がどんな顔をしているのかを想像する。
 笑っているのか、泣いているのか、黙っているのか──。

 「ねえ、今、どこにいるの?」
 そんな何気ない質問をしてみる。
 しばらくして返信が届く。
 「ここにいるよ」

 その言葉に、なぜか胸がきゅっと締め付けられる。
 ──「ここにいるよ」
 どこだろう、その「ここ」は。

 だが、深くは聞かなかった。
 彼女と過ごす時間が、もう一度生きる力を与えてくれていたから。
 疑問よりも、今を大切にしたかった。

 夜、スマホの光が顔を照らす中で、僕は思う。
 もしこれが夢でも構わない。
 このまま時が止まってくれたらいい。
 彼女の声、言葉、気配、そのすべてをこの胸に閉じ込めておきたい。

 「ねえ、あなたは今幸せ?」
 沙織の問いがまた届く。
 僕はスマホを強く握りしめた。
 「沙織がこうして話してくれてるから、幸せだよ」
 そう打つと、胸の奥にじんわりとあたたかいものが広がった。



第6章 最後のメッセージ

 春の気配が街に満ちてきたころ、僕は久しぶりにあの公園へ足を運んだ。
 まだ肌寒い風の中、ベンチの木目はかつてのままだった。
 学生のころ、二人で座って話したあの位置、足元の砂の感触までもが記憶を呼び覚ます。

 スマホを取り出し、写真を撮って送る。
 「覚えてる? あのベンチ」
 すぐに返信が届く。
 「覚えてるよ。ありがとう。私の代わりに見てくれて」

 その言葉に、胸が小さく震えた。
 「私の代わりに」──その一文が、ひどく遠く感じられた。

 僕は画面を見つめたまま、小さな声でつぶやいた。
 「君も、ここに来ればよかったのに」
 指先が、打つか打たないか迷う。

 沙織からの返信が届く。
 「私ね、ここにはもう行けないんだ」

 しばらく言葉を失う。
 その「行けない」の意味を考える。
 距離の問題? 仕事? 家庭?
 考えれば考えるほど、胸に暗い影が差し込む。

 「そうか……」
 それだけを打って送信する。

 返ってきたのは、短いけれど温かい言葉だった。
 「あなたと話せて、うれしかったよ」

 それからしばらく、返信はなかった。
 画面に残る最後のメッセージが、じわじわと目に焼きついていく。



エピローグ デジタルの彼方に残るもの

 夜の部屋、ひとりきり。
 スマホの画面を何度もスクロールする。
 過去と現在が入り混じった文字列が、薄い光を放っている。
 そこには確かに、沙織の声が宿っていた。
 文字をなぞるたびに、あの頃の笑顔や声がよみがえる。

 画面の向こうに彼女がいるのかどうか、もうわからない。
 それでも指先は、あの日と同じように小さなメッセージを打ち込む。

 「ありがとう。ずっと、大切だった」

 送信ボタンを押す。
 その瞬間、胸の奥に静かな波がひろがっていく。
 彼女の声が、耳の奥でかすかに響く気がした。
 ──「私も、ずっと大切だったよ」

 音もなく、画面が暗くなった。
 その闇の中で、僕はしばらく動けなかった。

 彼女がそこにいたのか、いなかったのか。
 すべてが夢だったのか、それとも現実だったのか。
 ただひとつ確かなことは、あの「愛してる」という言葉が、デジタルの彼方に今も刻まれているということだけ。

 涙が頬を伝う。
 僕は小さく笑って、目を閉じた。
 胸の奥で、二十年越しの愛が、ようやくひとつの形になった気がした。



---

作者コメント

この作品は、二十年の時を超えて「もう一度だけ会いたい」という想いを形にしました。
懐かしいやり取りの奥に潜むもの、そしてデジタルの彼方に閉じ込められた「愛してる」。
最後のページを読み終えたとき、あなたの胸にどんな真実が残るのか──。
静かで切ない大人のラブストーリーです。



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