花喰いの安珠

紺Peki / 灯夜獅子

文字の大きさ
5 / 14
愛しい貴女へ

やさしい夢から醒める時 4

しおりを挟む
「一度死んで、花喰いじゃなくなれば…」

________________________________________







「……なーんて、あははっ!」

大きく声を上げて笑う。目の前の月見草を茎から折りちぎり、黄色い花を口に入れて

「生まれ変わりなんて馬鹿馬鹿しい。万が一生まれ変われたとして…愛する人を犠牲にする私はきっと、再び人間にはなれないだろうし。」

と呟く。

「どうして私は人間と違うんだろう。はあ、人間杏花と同じになりたい。」

 私は"花喰い"で、飢饉になるとしても、食べないと生きていけない。私が生きているから、飢饉が起きる。杏花が街へ行ってしまう。
 でも、死ねない。死んでしまえば、杏花の側にいられないから。このやさしい夢が終わってしまうから。そもそも私は、生まれ変わりなど信じていないのだし。来世に掛けずに、このまま、花喰いとして生きるしかない。生き抜くしか。

 大好きな杏花あのこの側にいるために。可哀想な杏花あのこを支えるために。胸が苦しい程に想う杏花あのこを愛して、愛されるために。
 たとえ、杏花に見せる姿が偽りだとしても。村の人々が苦しむとしても。他ならぬ杏花が、他ならぬ私自身のせいで辛い思いをするとしても。


 杏花の側にいたい。


「あぁ、本当にーーー自分自身さえ嫌になる程、独り善がりだなぁ。」


 はは、と乾いた息が漏れる。何も面白くは無いのに、何かが込み上げてくるように肩が震える。
 ああ、嫌だ、涙が止まらない。泣きたくないのに、後から後から溢れてくる。泣きたいのは杏花だろうに。すべての元凶は私で、私に泣く資格など無いのに。




 許して。助けて。




 矛盾だらけでどうにもならない私の人生から、



誰か、



私を救ってよ!
 


生暖かい夏の風に、涙の伝った頬が冷やされて。私の心までも冷えていく。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...