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愛しい貴女へ
やさしい夢から醒める時 4
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「一度死んで、花喰いじゃなくなれば…」
________________________________________
「……なーんて、あははっ!」
大きく声を上げて笑う。目の前の月見草を茎から折りちぎり、黄色い花を口に入れて
「生まれ変わりなんて馬鹿馬鹿しい。万が一生まれ変われたとして…愛する人を犠牲にする私はきっと、再び人間にはなれないだろうし。」
と呟く。
「どうして私は人間と違うんだろう。はあ、人間になりたい。」
私は"花喰い"で、飢饉になるとしても、食べないと生きていけない。私が生きているから、飢饉が起きる。杏花が街へ行ってしまう。
でも、死ねない。死んでしまえば、杏花の側にいられないから。このやさしい夢が終わってしまうから。そもそも私は、生まれ変わりなど信じていないのだし。来世に掛けずに、このまま、花喰いとして生きるしかない。生き抜くしか。
大好きな杏花の側にいるために。可哀想な杏花を支えるために。胸が苦しい程に想う杏花を愛して、愛されるために。
たとえ、杏花に見せる姿が偽りだとしても。村の人々が苦しむとしても。他ならぬ杏花が、他ならぬ私自身のせいで辛い思いをするとしても。
杏花の側にいたい。
「あぁ、本当にーーー自分自身さえ嫌になる程、独り善がりだなぁ。」
はは、と乾いた息が漏れる。何も面白くは無いのに、何かが込み上げてくるように肩が震える。
ああ、嫌だ、涙が止まらない。泣きたくないのに、後から後から溢れてくる。泣きたいのは杏花だろうに。すべての元凶は私で、私に泣く資格など無いのに。
許して。助けて。
矛盾だらけでどうにもならない私の人生から、
誰か、
私を救ってよ!
生暖かい夏の風に、涙の伝った頬が冷やされて。私の心までも冷えていく。
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「……なーんて、あははっ!」
大きく声を上げて笑う。目の前の月見草を茎から折りちぎり、黄色い花を口に入れて
「生まれ変わりなんて馬鹿馬鹿しい。万が一生まれ変われたとして…愛する人を犠牲にする私はきっと、再び人間にはなれないだろうし。」
と呟く。
「どうして私は人間と違うんだろう。はあ、人間になりたい。」
私は"花喰い"で、飢饉になるとしても、食べないと生きていけない。私が生きているから、飢饉が起きる。杏花が街へ行ってしまう。
でも、死ねない。死んでしまえば、杏花の側にいられないから。このやさしい夢が終わってしまうから。そもそも私は、生まれ変わりなど信じていないのだし。来世に掛けずに、このまま、花喰いとして生きるしかない。生き抜くしか。
大好きな杏花の側にいるために。可哀想な杏花を支えるために。胸が苦しい程に想う杏花を愛して、愛されるために。
たとえ、杏花に見せる姿が偽りだとしても。村の人々が苦しむとしても。他ならぬ杏花が、他ならぬ私自身のせいで辛い思いをするとしても。
杏花の側にいたい。
「あぁ、本当にーーー自分自身さえ嫌になる程、独り善がりだなぁ。」
はは、と乾いた息が漏れる。何も面白くは無いのに、何かが込み上げてくるように肩が震える。
ああ、嫌だ、涙が止まらない。泣きたくないのに、後から後から溢れてくる。泣きたいのは杏花だろうに。すべての元凶は私で、私に泣く資格など無いのに。
許して。助けて。
矛盾だらけでどうにもならない私の人生から、
誰か、
私を救ってよ!
生暖かい夏の風に、涙の伝った頬が冷やされて。私の心までも冷えていく。
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