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愛しい貴女へ
本当に愛している?
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ーーーーーーーーーー
「よろしくな、婚約者殿。」
……。
この人、私の狙いが分かってないんやろか?折角私が、他人の振りして様子見の機会を作ったったのに。
まあいい。
仕方なく、相手を見つめてみる。
今日の自分の"役割"は、この婚約者を見定めること。どういう相手かで、私の対応も変わってくるんやから。
事前にお父から聞いとった通り、背が高いし、髪が綺麗や。私の癖毛とは違う。いいなぁ……羨ましい。
それからこの笑顔。下手な作り笑いって、だいたい目が笑ってなかったり、口元がひくついてたりするもんやけど、この人は違う。……本当に笑ってるみたいや。実際は作り笑いやったとしても、この人の笑顔は不快にならない。なんだか、包み込まれる感じや。なんとなく、あったかいというか。
……初めの印象は悪くない。
いいよ。貴方が望む"婚約者の女"の役割を、完璧にこなして魅せたるわ。
「まぁ!……よろしくお願い申し上げます、椙山さま。」
安珠の背中から出て、前に進み出る。
にっこりと目を細め、口端を柔らかく持ち上げ、丁寧に腰を折る。顔を上げる時も表情は崩さない。目が合ったらちょっとだけ、恥じらう様子も見せて。
「……」
うん、上手に出来た。
椙山さまの反応は……
「あんたかわいらしいし上手いけど、あんまし面白味が無いなぁ。」
優しく笑って、椙山さまは言う。
「え。」「はぁ?」
低い声で唸った安珠の背中が私の目の前に来る。
それでも椙山さまは続ける。
「人の好みに合わせようとし過ぎやて。"あんた自身"が今の動作に無さ過ぎ。
確かにあんたが相手に合わせれば面倒事が起きんかもしれんけど、それって、あんたは何も考えてないってことやろ?」
え?
「なーんも考えずに、"あんた自身"を出さずに、人に合わせとけば良いと思っとるんやろ?」
違う。私はちゃんと"自分"で考えてる。村長の娘として、貴方の婚約者として、安珠の親友として。自分の"役割"を全うしてる。
……………あれ?
「本気であんたと仲良くなりたい人にも、自分出さずに適当に合わせとるんやないの?」
「違うって!」
そんなはずない。
私はちゃんと愛してる。
父を、村人を、親友を。
(お父を、村のみんなを、安珠を?)
あれ?
あれ?
私、本当に、愛してる?
あれ?
愛って、ーーーーーなんだったっけ。
「よろしくな、婚約者殿。」
……。
この人、私の狙いが分かってないんやろか?折角私が、他人の振りして様子見の機会を作ったったのに。
まあいい。
仕方なく、相手を見つめてみる。
今日の自分の"役割"は、この婚約者を見定めること。どういう相手かで、私の対応も変わってくるんやから。
事前にお父から聞いとった通り、背が高いし、髪が綺麗や。私の癖毛とは違う。いいなぁ……羨ましい。
それからこの笑顔。下手な作り笑いって、だいたい目が笑ってなかったり、口元がひくついてたりするもんやけど、この人は違う。……本当に笑ってるみたいや。実際は作り笑いやったとしても、この人の笑顔は不快にならない。なんだか、包み込まれる感じや。なんとなく、あったかいというか。
……初めの印象は悪くない。
いいよ。貴方が望む"婚約者の女"の役割を、完璧にこなして魅せたるわ。
「まぁ!……よろしくお願い申し上げます、椙山さま。」
安珠の背中から出て、前に進み出る。
にっこりと目を細め、口端を柔らかく持ち上げ、丁寧に腰を折る。顔を上げる時も表情は崩さない。目が合ったらちょっとだけ、恥じらう様子も見せて。
「……」
うん、上手に出来た。
椙山さまの反応は……
「あんたかわいらしいし上手いけど、あんまし面白味が無いなぁ。」
優しく笑って、椙山さまは言う。
「え。」「はぁ?」
低い声で唸った安珠の背中が私の目の前に来る。
それでも椙山さまは続ける。
「人の好みに合わせようとし過ぎやて。"あんた自身"が今の動作に無さ過ぎ。
確かにあんたが相手に合わせれば面倒事が起きんかもしれんけど、それって、あんたは何も考えてないってことやろ?」
え?
「なーんも考えずに、"あんた自身"を出さずに、人に合わせとけば良いと思っとるんやろ?」
違う。私はちゃんと"自分"で考えてる。村長の娘として、貴方の婚約者として、安珠の親友として。自分の"役割"を全うしてる。
……………あれ?
「本気であんたと仲良くなりたい人にも、自分出さずに適当に合わせとるんやないの?」
「違うって!」
そんなはずない。
私はちゃんと愛してる。
父を、村人を、親友を。
(お父を、村のみんなを、安珠を?)
あれ?
あれ?
私、本当に、愛してる?
あれ?
愛って、ーーーーーなんだったっけ。
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