14 / 14
愛しい貴女へ
過去編 安珠、岐阜に至る。 1
しおりを挟む
ーーーーーーーーーー
『自分の命よりも大切な誰かを、アンタも見つけなさい。』
ーーーそうすれば、世界が変わるから。
とは、母親の教えだ。
必ず見つけられるとも限らない、見つけたところで、世界が変わることで、幸せになれるとも限らない。
今思えば、馬鹿馬鹿しい言葉である。
。。。
それは十年前の春のこと。
私を「化け物」と呼びつつも可愛がってくれた母親は、しかし突然、大道芸人の若い男と愛に奔り、ついに私を捨てた。
山に捨てられた私は、
「川の近くには人が集まる。知らない場所で迷子になったら、川を探して、川の流れを追い掛けるのよ」
という昔聞いた母親の教えにならい、(当時は知る由も無いが、)いずれ長良川に行き着く流れに沿って歩き始めた。
山には沢山花が咲いていて、飢えに苦しむことはなかった。花を食べる私を、鹿が不思議そうに見ていたのを覚えている。大きな鹿で、立派な角が付いていた。
春になったとはいえ、樹木が日差しを遮り、風は肌を突き刺す。
夜はただただ寒く寂しく、木の根元に蹲って眠った。昼間は捨てられた理由を考えて、ぼんやりと歩き続けた。
ーーー私が"花喰い" だからか。"化け物" だからか。それとも他に理由があったの……?
愛してくれなかった母親を恨んだ。愛されなかった自分に呆れた。
ポッと出の男に母親を盗られたことが、ただただ許せなかった。
齢七つの子供はのろのろと、春の土の匂いの中を歩き続けた。
。。。
ふと、足を止める。
いつの間に人里に降りてきたのだろうか、目の前には桜色の絨毯が広がっている。驚いて辺りを見回すと、川の向こう岸に大きな山があった。(金華山だ。)
金色の光に暖められた風がざぁ、と吹き抜け、誘われるように沢山の桜が舞い散る。
幼い子どもの目に、それは美しく、そして、美味しそうに映った。
『自分の命よりも大切な誰かを、アンタも見つけなさい。』
ーーーそうすれば、世界が変わるから。
とは、母親の教えだ。
必ず見つけられるとも限らない、見つけたところで、世界が変わることで、幸せになれるとも限らない。
今思えば、馬鹿馬鹿しい言葉である。
。。。
それは十年前の春のこと。
私を「化け物」と呼びつつも可愛がってくれた母親は、しかし突然、大道芸人の若い男と愛に奔り、ついに私を捨てた。
山に捨てられた私は、
「川の近くには人が集まる。知らない場所で迷子になったら、川を探して、川の流れを追い掛けるのよ」
という昔聞いた母親の教えにならい、(当時は知る由も無いが、)いずれ長良川に行き着く流れに沿って歩き始めた。
山には沢山花が咲いていて、飢えに苦しむことはなかった。花を食べる私を、鹿が不思議そうに見ていたのを覚えている。大きな鹿で、立派な角が付いていた。
春になったとはいえ、樹木が日差しを遮り、風は肌を突き刺す。
夜はただただ寒く寂しく、木の根元に蹲って眠った。昼間は捨てられた理由を考えて、ぼんやりと歩き続けた。
ーーー私が"花喰い" だからか。"化け物" だからか。それとも他に理由があったの……?
愛してくれなかった母親を恨んだ。愛されなかった自分に呆れた。
ポッと出の男に母親を盗られたことが、ただただ許せなかった。
齢七つの子供はのろのろと、春の土の匂いの中を歩き続けた。
。。。
ふと、足を止める。
いつの間に人里に降りてきたのだろうか、目の前には桜色の絨毯が広がっている。驚いて辺りを見回すと、川の向こう岸に大きな山があった。(金華山だ。)
金色の光に暖められた風がざぁ、と吹き抜け、誘われるように沢山の桜が舞い散る。
幼い子どもの目に、それは美しく、そして、美味しそうに映った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる