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ファーストキスの魔法
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そして桜が居なくなった後……
まるで台風が過ぎ去ったかの様に
平和で穏やかな空気に戻った体育祭のグランドは、
『ではこれより競技を再開します。
3年生の皆さんは今すぐ選手入場口に――』
と放送部員の流暢なアナウンスが流れた後で
やっとフォークダンスの競技が開始されたけど
そんな事よりも私服姿の玲はそろそろ、
静かにコッソリと退場した方が賢明なので
「じゃあ家まで送ろうか」
「はい ありがとうございます璃音さん」
こうして玲はこの後すぐに
璃音の車で自宅に送ってもらったが……
*****
車の中で終始無言だった璃音は何故か
閑静な住宅街の真ん中に建つ玲の家へと到着する前に、
「こっち向けよ玲…」と小さな声で玲に向かって呟きながら
優しい力で玲の顎に右手をかけて、
そしてこのままポカーンとしている玲の顔をじっと見つめた後すぐに
(えっ?ええぇ?ええぇぇえーー?!!)
とは言えないヘタレの玲に
突然いきなり電光石火の速さで濃厚なキスをして!
しかもその後めちゃめちゃ嬉しそうな態度のドヤ顔で
「これでもう大丈夫だ玲、なぜならお前は今夜きっと
あのくだらない体育祭の事よりも、俺とのキスを考えて
一晩中ドキドキと胸を弾ませる事になるだろう?だからお前は朝が来るまで、
俺の事だけを考えてワクワクしていればいい。じゃあ俺はそろそろ仕事に戻るから
お前はさっきのファーストキスの感想を、今夜のメールで詳しく書いて送ってくれ」
と意味不明な命令を出した後で
石像みたいにフリーズしている無言の玲を自宅へ送った後すぐに
満足そうな笑顔で車の中へと素早く戻り、
今日は朝から璃音の車を運転している秘書の沢田に哀れな瞳で見られながらも……
(いきなりディープはまだ早かったか?でもこの方が絶対にインパクトはあるはずだ!)
と残念すぎる独り言を心の中で呟いて、
一から十まで全てが間違っている事に気付いていない爽やかな表情で
白い外車の窓から見える、桜が丘の綺麗な景色を穏やかな眼差しで眺めていたけれど、
*****
そんな上機嫌の璃音とは真逆の玲は帰宅早々疲れた顔で
(なんかメッチャ疲れたから……
近所の自販機で甘いメロンソーダを買おうかなぁ)
て事を思いながら
滅多に飲まない甘いジュースを買う為に
ガレージの中に停めた自転車を出しに行ったけど……
(あれ?どうしてココに私の自転車がないの?
あーっ!そう言えば自転車は河川敷に置きっぱなしじゃん!)
と、このタイミングで
大切な自転車の事を思い出したから
この後すぐに玲は急いで河川敷へと向かったが、
無事に自転車を発見できた玲はいつものベンチに座る事なく、この後サッサと自宅に向かった。
なぜなら今の玲は、心身共に疲れているから頭が痛くてフラフラしてて……
(ごめんね皆…本当は今すぐ銀次とアンコの話をしなきゃいけないのに
今の私は頭がグルグルしているから、今日だけは今すぐ家に帰りたいの……
そしてごめんなさい璃音さん、きっと今夜はファーストキスの感想メールを送る事が出来ません……)
と心の中で謝りながらも本気で倒れそうだから、
エスパーの話もファーストキスも、
一旦全てを棚上げしてでも、とにかく今すぐ自分の部屋に帰りたかったのだ。
つまり今の状況をもっと簡単に説明すれば……
ぼっちでオタクでコミュ障の玲が今日一日で経験した数々の出来事は
明らかに自分自身のキャパシティを越えていたから
いつもは平和な頭の中がオーバーヒートになっていて、バタッと倒れる一歩手前の状態だったと言う事だ。
*****
そしてやっとの思いで河川敷から帰宅をした玲は、
このまま急いで自分の部屋へと入ってすぐに
ボーッとした頭で服を着替えて小さなベッドに潜り込み、
光の速さで深い眠りに落ちたけど……
翌日の月曜日は嬉しい事に体育祭の振替休日だから、
勿論この日は朝から晩まで家で過ごしてメッチャ元気になったのに、
平和で孤独な楽しい休日は、あっと言う間にトットとサクサク終了したので……
翌日の朝の7時にバッチリ目覚めたボッチの玲は、今日も孤高な修行僧の心境で
いつもの様に準備を済ませて学校へ行こうと思ったが、一昨日の体育祭を思い出した瞬間に
(やっぱり学校なんて行きたくないよー!)
と心の中で叫ぶ位に岡田軍団が怖くて怖くて憂鬱な気持ちになったから、
ついつい今日も謎の高熱を出してズル休みをしようと思ったが
そんなヘタレな心の中で、この後いきなり唐突に!
『お前は俺の事だけを考えてワクワクしてろ』
と絶妙なこのタイミングで
結構ディープなファーストキスの思い出が色鮮やかに蘇ったので、
あの時の上機嫌な璃音の顔を思い浮かべているうちに……
(まぁ確かに あんなカオスな体育祭なんて、本当はぶっちゃけどうでもいいから、
とりあえず今日は普通に登校しようかな?だってやっぱり今から学校に行けば、
いつもの倉庫で可愛い雀さんと一緒に お昼ご飯を食べる事が出来るかもしれないし!)
こうして急にメッチャ元気になったから、このあと玲はいつもの様に
(じゃあ璃音さん。今から学校に行ってきますね!)
行ってきまーすと心の中で璃音に向かって挨拶をしながら家を出て
今日も元気に一人ぼっちで自転車に乗りながら、友達ゼロの桜が丘高校へと急ぐ事にした。
まるで台風が過ぎ去ったかの様に
平和で穏やかな空気に戻った体育祭のグランドは、
『ではこれより競技を再開します。
3年生の皆さんは今すぐ選手入場口に――』
と放送部員の流暢なアナウンスが流れた後で
やっとフォークダンスの競技が開始されたけど
そんな事よりも私服姿の玲はそろそろ、
静かにコッソリと退場した方が賢明なので
「じゃあ家まで送ろうか」
「はい ありがとうございます璃音さん」
こうして玲はこの後すぐに
璃音の車で自宅に送ってもらったが……
*****
車の中で終始無言だった璃音は何故か
閑静な住宅街の真ん中に建つ玲の家へと到着する前に、
「こっち向けよ玲…」と小さな声で玲に向かって呟きながら
優しい力で玲の顎に右手をかけて、
そしてこのままポカーンとしている玲の顔をじっと見つめた後すぐに
(えっ?ええぇ?ええぇぇえーー?!!)
とは言えないヘタレの玲に
突然いきなり電光石火の速さで濃厚なキスをして!
しかもその後めちゃめちゃ嬉しそうな態度のドヤ顔で
「これでもう大丈夫だ玲、なぜならお前は今夜きっと
あのくだらない体育祭の事よりも、俺とのキスを考えて
一晩中ドキドキと胸を弾ませる事になるだろう?だからお前は朝が来るまで、
俺の事だけを考えてワクワクしていればいい。じゃあ俺はそろそろ仕事に戻るから
お前はさっきのファーストキスの感想を、今夜のメールで詳しく書いて送ってくれ」
と意味不明な命令を出した後で
石像みたいにフリーズしている無言の玲を自宅へ送った後すぐに
満足そうな笑顔で車の中へと素早く戻り、
今日は朝から璃音の車を運転している秘書の沢田に哀れな瞳で見られながらも……
(いきなりディープはまだ早かったか?でもこの方が絶対にインパクトはあるはずだ!)
と残念すぎる独り言を心の中で呟いて、
一から十まで全てが間違っている事に気付いていない爽やかな表情で
白い外車の窓から見える、桜が丘の綺麗な景色を穏やかな眼差しで眺めていたけれど、
*****
そんな上機嫌の璃音とは真逆の玲は帰宅早々疲れた顔で
(なんかメッチャ疲れたから……
近所の自販機で甘いメロンソーダを買おうかなぁ)
て事を思いながら
滅多に飲まない甘いジュースを買う為に
ガレージの中に停めた自転車を出しに行ったけど……
(あれ?どうしてココに私の自転車がないの?
あーっ!そう言えば自転車は河川敷に置きっぱなしじゃん!)
と、このタイミングで
大切な自転車の事を思い出したから
この後すぐに玲は急いで河川敷へと向かったが、
無事に自転車を発見できた玲はいつものベンチに座る事なく、この後サッサと自宅に向かった。
なぜなら今の玲は、心身共に疲れているから頭が痛くてフラフラしてて……
(ごめんね皆…本当は今すぐ銀次とアンコの話をしなきゃいけないのに
今の私は頭がグルグルしているから、今日だけは今すぐ家に帰りたいの……
そしてごめんなさい璃音さん、きっと今夜はファーストキスの感想メールを送る事が出来ません……)
と心の中で謝りながらも本気で倒れそうだから、
エスパーの話もファーストキスも、
一旦全てを棚上げしてでも、とにかく今すぐ自分の部屋に帰りたかったのだ。
つまり今の状況をもっと簡単に説明すれば……
ぼっちでオタクでコミュ障の玲が今日一日で経験した数々の出来事は
明らかに自分自身のキャパシティを越えていたから
いつもは平和な頭の中がオーバーヒートになっていて、バタッと倒れる一歩手前の状態だったと言う事だ。
*****
そしてやっとの思いで河川敷から帰宅をした玲は、
このまま急いで自分の部屋へと入ってすぐに
ボーッとした頭で服を着替えて小さなベッドに潜り込み、
光の速さで深い眠りに落ちたけど……
翌日の月曜日は嬉しい事に体育祭の振替休日だから、
勿論この日は朝から晩まで家で過ごしてメッチャ元気になったのに、
平和で孤独な楽しい休日は、あっと言う間にトットとサクサク終了したので……
翌日の朝の7時にバッチリ目覚めたボッチの玲は、今日も孤高な修行僧の心境で
いつもの様に準備を済ませて学校へ行こうと思ったが、一昨日の体育祭を思い出した瞬間に
(やっぱり学校なんて行きたくないよー!)
と心の中で叫ぶ位に岡田軍団が怖くて怖くて憂鬱な気持ちになったから、
ついつい今日も謎の高熱を出してズル休みをしようと思ったが
そんなヘタレな心の中で、この後いきなり唐突に!
『お前は俺の事だけを考えてワクワクしてろ』
と絶妙なこのタイミングで
結構ディープなファーストキスの思い出が色鮮やかに蘇ったので、
あの時の上機嫌な璃音の顔を思い浮かべているうちに……
(まぁ確かに あんなカオスな体育祭なんて、本当はぶっちゃけどうでもいいから、
とりあえず今日は普通に登校しようかな?だってやっぱり今から学校に行けば、
いつもの倉庫で可愛い雀さんと一緒に お昼ご飯を食べる事が出来るかもしれないし!)
こうして急にメッチャ元気になったから、このあと玲はいつもの様に
(じゃあ璃音さん。今から学校に行ってきますね!)
行ってきまーすと心の中で璃音に向かって挨拶をしながら家を出て
今日も元気に一人ぼっちで自転車に乗りながら、友達ゼロの桜が丘高校へと急ぐ事にした。
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