13 / 43
第1章:追放・バズり・ざまぁ編
第13話 エピローグ
しおりを挟む
金曜日の夜。
カイト騒動の決着と、協会からのS級昇格試験の通達という怒涛の一週間を終えた俺、鈴木悠作は、行きつけの大衆居酒屋『赤のれん』にいた。
ただし、客席ではない。
厨房の中だ。
「大将、コンロ一口借りるぞ」
「おう、好きにしろ。その代わり、俺の分も作れよ?」
「わかってるよ」
店主とは長い付き合いだ。店が暇な時間帯なら、こうして食材を持ち込んで勝手に料理させてもらうこともある。
今日のアパートは、まだポチが開けた壁の穴が塞がっていないし、なんとなく外で飲みたかったのだ。
「今日の締めは、刺激的なやつで行く」
俺が取り出したのは、有頭エビ、レモングラス、こぶみかんの葉、カー、そしてフクロタケ。
日本の居酒屋には似つかわしくない、南国のハーブたちだ。
「へえ、タイ料理か。珍しいな」
「無性に『トムヤムクン』が食いたくなってな」
世界三大スープの一つ。酸味と辛味が特徴のタイ料理だ。
俺はまず、有頭エビの下処理から始めた。
殻を剥き、背ワタを竹串で丁寧に取り除く。ここまでは普通だ。
だが、俺は剥いた殻と頭を捨てず、鍋に投入して油で炒め始めた。
ジュワァァァ……。
甲殻類特有の香ばしい匂いが立ち上り、換気扇へと吸い込まれていく。
エビの頭をヘラで押し潰し、濃厚なエビ味噌を油に溶け込ませていく。
これがスープのベースになる「エビ油」だ。
炒めた殻に水を注ぎ、煮立たせる。黄金色のスープが出来上がっていく。
殻を濾して取り除くと、そこへハーブ類を投入する。
レモングラスの茎を包丁の背で叩いて香りを出してから斜め切りにし、カーを薄切りにする。バイマックルは手でちぎって入れる。
爽やかな柑橘系の香りが、エビの濃厚な香りと混ざり合い、店内に異国情緒を漂わせる。
次は味の決め手だ。
『ナムプリック・パオ』。タイのチリインオイルだ。
これをスープに溶かすと、表面が鮮やかな赤色に染まる。
さらに、ナンプラーで塩気と旨味を、パームシュガーでコクのある甘みを加える。
「仕上げに、エビの身とフクロタケを入れて……火が通ったら火を止めて、これだ」
最後に絞り入れたのは、たっぷりのマナオ果汁。
加熱しすぎると香りが飛ぶため、最後に入れるのが鉄則だ。
さらに、無糖の練乳を少し加えて、まろやかさをプラスする。
「完成だ。『特製・濃厚トムヤムクン』」
土鍋に移し替えると、赤いスープがグツグツと煮えている。
エビの赤、パクチーの緑、そしてスープのオレンジ色が美しい。
「おう、いい匂いさせやがって。他の客の迷惑になるぞ」
「へいへい。……お、ちょうどいいワインがあるな」
俺は店のワインセラーから、一本の赤ワインを取り出した。
重厚なボディのシラーズ種だ。
「トムヤムクンに赤ワインか? お前、味覚おかしくなったか?」
「常識に囚われるなよ、大将。スパイシーな料理には、果実味の強い赤が合うんだ」
俺はカウンターの端席に陣取り、ワインをグラスに注いだ。
そして、熱々のスープを一口。
――ガツン。
酸味と辛味のパンチ。その後に押し寄せるエビの濃厚な旨味と、ハーブの清涼感。
そこに赤ワインを流し込む。
ワインのタンニンが脂を切り、果実味が辛さを包み込んで、長い余韻を残す。
「……くぅ。たまらん」
至福の時間だ。
一週間の疲れが、スパイスと共に毛穴から吹き出していくようだ。
ガララッ……。
その時、店の引き戸が開き、一人の客が入ってきた。
季節外れのトレンチコートの襟を立て、深く帽子を被り、顔の半分を覆うような黒縁メガネとマスク。
怪しさ満点の女性だ。
「……いらっしゃい。一人かい?」
「あ、はい。……ここ、空いてますか?」
彼女は店内を見回し、なぜか俺の隣の席を指差した。
他にも席は空いているのに。
「どうぞ」
「失礼します……」
彼女は席に着くと、マスクを外した。
横顔がちらりと見える。
整った鼻筋に、意思の強そうな瞳。どこかで見たことがあるような……?
まあいい。俺は自分のトムヤムクンに集中する。
「……あの」
不意に、彼女が声をかけてきた。
視線は、俺の食べている土鍋に釘付けだ。
「すごく、いい匂いがしますね。……それは、メニューにあるんですか?」
「いや、これは俺の持ち込みだ。裏メニューにもないぞ」
「そうですか……残念です」
彼女は肩を落とした。
その時、グゥゥゥ……と可愛らしい音が、彼女の腹から響いた。
彼女は真っ赤になって腹を押さえる。
「……腹、減ってるのか?」
「……はい。ダンジョン帰りで、何も食べてなくて」
ダンジョン帰り。同業者か。
それなら、この空腹の辛さはわかる。
俺は少し迷ったが、小皿を一枚取った。
「食うか? 作りすぎたから、少しなら分けてやるよ」
「えっ、いいんですか!?」
「ああ。その代わり、感想を聞かせろよ」
俺が小皿にトムヤムクンをよそって渡すと、彼女は目を輝かせて受け取った。
「いただきます!」
彼女はスープを口に運び、目を見開いた。
「……美味しいっ! 辛いけど、まろやかで……エビの味が濃い!」
「だろ? ワインもやるよ」
「ありがとうございます!」
彼女はワインを飲み、さらに感動したように震えた。
その食べっぷりを見ていると、なんとなく既視感を覚える。
この、金髪の隙間から見える横顔。
まさか。
「……あんた、もしかして」
「え?」
彼女がこちらを向く。
黒縁メガネの奥にある瞳と目が合った。
トップランカー、「氷剣の女帝」高橋すず。
動画サイトで何度も見た顔だ。
「高橋、すず……さん?」
「!!」
彼女はビクリと体を震わせ、慌てて帽子を目深に被り直した。
「ち、違います! 人違いです! 私はただの通りすがりの……」
「そうか。まあ、誰でもいいけどな。飯を食う時は誰だってただの人間だ」
俺は深く追求しなかった。
プライベートでお忍びの食事を楽しんでいるのなら、野暮なことは言わないのがマナーだ。
「……ふふ。貴方は、優しいんですね」
すずは少し安心したように笑い、再びスープに口をつけた。
その横顔は、テレビで見るクールな表情とは違い、年相応の柔らかいものだった。
「……あの、お名前、伺ってもいいですか?」
「鈴木だ。鈴木悠作」
「鈴木さん……。料理、とっても美味しかったです」
これが、俺と彼女の最初の会話だった。
まだ、彼女が俺のことを「動画のあの人」だと確信しているのか、それともただの料理上手なおじさんだと思っているのかは分からない。
だが、奇妙な縁が繋がったことだけは確かだった。
★★★★★★★★★★★
その様子を、店外からじっと見つめる視線があった。
居酒屋から300メートルほど離れた、雑居ビルの屋上。
夜風に吹かれながら、山口純子は愛用の対物ライフル『ブラック・ウィドウ』のスコープを覗き込んでいた。
倍率20倍のレンズ越しに、居酒屋のカウンター席が鮮明に見える。
悠作の隣で、顔を赤らめてスープを飲んでいる変装した女。
「……あらあら」
純子の声は、氷点下のように冷たかった。
トリガーにかけた指が、ピクリと動く。
「変装していてもバレバレですよ、高橋すずさん。……私の悠作さんに、随分と馴れ馴れしいじゃありませんか」
純子は知っている。
すずがネット配信で悠作を擁護していたこと。
そして今、彼女が悠作に対して、無防備な笑顔を向けていることを。
「『氷剣の女帝』でしたっけ? ……私のスコープの前では、ただの的(ターゲット)に過ぎませんけどね」
純子の瞳から、ハイライトが完全に消える。
スコープのレティクルが、すずの持っているスプーンに重なる。
風速よし。湿度よし。
指先に少し力を込めるだけで、あのスプーンを弾き飛ばし、食事を台無しにすることができる。
「……泥棒猫が一匹。威嚇射撃が必要かしら?」
純子は独り言ちる。
殺意の波動が漏れ出しそうになるのを、深呼吸で抑え込む。
今ここで撃てば、悠作の楽しい晩酌を邪魔してしまう。
それに、悠作が行きつけの店に迷惑をかけるわけにはいかない。
「……今回は見逃してあげます。悠作さんの笑顔に免じて」
純子はスコープから目を離し、ふぅと息を吐いた。
しかし、その目は笑っていなかった。
「でも、次はわかりませんよ? 悠作さんの『隣』は……私が一番、相応しいんですから」
彼女はスマホを取り出し、スケジュール帳を確認する。
『悠作さん観察日記』に、新たな要注意人物として「高橋すず」の名前を書き加える。
「これからはもっと、監視を強化しないといけませんね。……ふふっ、忙しくなりそう♡」
純子はライフルを分解し、闇に溶けるように姿を消した。
彼女の歪んだ愛情は、まだ誰にも気づかれていない。
★★★★★★★★★★★
居酒屋を出た俺は、すずと駅前で別れた。
彼女は何度も振り返り、手を振っていた。
「……変な奴だったな」
俺はほろ酔い気分で夜道を歩く。
カイトたちとの因縁は終わり、潔白は証明された。
だが、S級への昇格や、有名になりすぎたことによる弊害など、悩みは尽きない。
そして今夜、トップランカーとの奇妙な接点もできてしまった。
平和な日常は、少しずつ、しかし確実に遠のいている気がする。
俺は夜空を見上げ、小さくため息をついた。
カイト騒動の決着と、協会からのS級昇格試験の通達という怒涛の一週間を終えた俺、鈴木悠作は、行きつけの大衆居酒屋『赤のれん』にいた。
ただし、客席ではない。
厨房の中だ。
「大将、コンロ一口借りるぞ」
「おう、好きにしろ。その代わり、俺の分も作れよ?」
「わかってるよ」
店主とは長い付き合いだ。店が暇な時間帯なら、こうして食材を持ち込んで勝手に料理させてもらうこともある。
今日のアパートは、まだポチが開けた壁の穴が塞がっていないし、なんとなく外で飲みたかったのだ。
「今日の締めは、刺激的なやつで行く」
俺が取り出したのは、有頭エビ、レモングラス、こぶみかんの葉、カー、そしてフクロタケ。
日本の居酒屋には似つかわしくない、南国のハーブたちだ。
「へえ、タイ料理か。珍しいな」
「無性に『トムヤムクン』が食いたくなってな」
世界三大スープの一つ。酸味と辛味が特徴のタイ料理だ。
俺はまず、有頭エビの下処理から始めた。
殻を剥き、背ワタを竹串で丁寧に取り除く。ここまでは普通だ。
だが、俺は剥いた殻と頭を捨てず、鍋に投入して油で炒め始めた。
ジュワァァァ……。
甲殻類特有の香ばしい匂いが立ち上り、換気扇へと吸い込まれていく。
エビの頭をヘラで押し潰し、濃厚なエビ味噌を油に溶け込ませていく。
これがスープのベースになる「エビ油」だ。
炒めた殻に水を注ぎ、煮立たせる。黄金色のスープが出来上がっていく。
殻を濾して取り除くと、そこへハーブ類を投入する。
レモングラスの茎を包丁の背で叩いて香りを出してから斜め切りにし、カーを薄切りにする。バイマックルは手でちぎって入れる。
爽やかな柑橘系の香りが、エビの濃厚な香りと混ざり合い、店内に異国情緒を漂わせる。
次は味の決め手だ。
『ナムプリック・パオ』。タイのチリインオイルだ。
これをスープに溶かすと、表面が鮮やかな赤色に染まる。
さらに、ナンプラーで塩気と旨味を、パームシュガーでコクのある甘みを加える。
「仕上げに、エビの身とフクロタケを入れて……火が通ったら火を止めて、これだ」
最後に絞り入れたのは、たっぷりのマナオ果汁。
加熱しすぎると香りが飛ぶため、最後に入れるのが鉄則だ。
さらに、無糖の練乳を少し加えて、まろやかさをプラスする。
「完成だ。『特製・濃厚トムヤムクン』」
土鍋に移し替えると、赤いスープがグツグツと煮えている。
エビの赤、パクチーの緑、そしてスープのオレンジ色が美しい。
「おう、いい匂いさせやがって。他の客の迷惑になるぞ」
「へいへい。……お、ちょうどいいワインがあるな」
俺は店のワインセラーから、一本の赤ワインを取り出した。
重厚なボディのシラーズ種だ。
「トムヤムクンに赤ワインか? お前、味覚おかしくなったか?」
「常識に囚われるなよ、大将。スパイシーな料理には、果実味の強い赤が合うんだ」
俺はカウンターの端席に陣取り、ワインをグラスに注いだ。
そして、熱々のスープを一口。
――ガツン。
酸味と辛味のパンチ。その後に押し寄せるエビの濃厚な旨味と、ハーブの清涼感。
そこに赤ワインを流し込む。
ワインのタンニンが脂を切り、果実味が辛さを包み込んで、長い余韻を残す。
「……くぅ。たまらん」
至福の時間だ。
一週間の疲れが、スパイスと共に毛穴から吹き出していくようだ。
ガララッ……。
その時、店の引き戸が開き、一人の客が入ってきた。
季節外れのトレンチコートの襟を立て、深く帽子を被り、顔の半分を覆うような黒縁メガネとマスク。
怪しさ満点の女性だ。
「……いらっしゃい。一人かい?」
「あ、はい。……ここ、空いてますか?」
彼女は店内を見回し、なぜか俺の隣の席を指差した。
他にも席は空いているのに。
「どうぞ」
「失礼します……」
彼女は席に着くと、マスクを外した。
横顔がちらりと見える。
整った鼻筋に、意思の強そうな瞳。どこかで見たことがあるような……?
まあいい。俺は自分のトムヤムクンに集中する。
「……あの」
不意に、彼女が声をかけてきた。
視線は、俺の食べている土鍋に釘付けだ。
「すごく、いい匂いがしますね。……それは、メニューにあるんですか?」
「いや、これは俺の持ち込みだ。裏メニューにもないぞ」
「そうですか……残念です」
彼女は肩を落とした。
その時、グゥゥゥ……と可愛らしい音が、彼女の腹から響いた。
彼女は真っ赤になって腹を押さえる。
「……腹、減ってるのか?」
「……はい。ダンジョン帰りで、何も食べてなくて」
ダンジョン帰り。同業者か。
それなら、この空腹の辛さはわかる。
俺は少し迷ったが、小皿を一枚取った。
「食うか? 作りすぎたから、少しなら分けてやるよ」
「えっ、いいんですか!?」
「ああ。その代わり、感想を聞かせろよ」
俺が小皿にトムヤムクンをよそって渡すと、彼女は目を輝かせて受け取った。
「いただきます!」
彼女はスープを口に運び、目を見開いた。
「……美味しいっ! 辛いけど、まろやかで……エビの味が濃い!」
「だろ? ワインもやるよ」
「ありがとうございます!」
彼女はワインを飲み、さらに感動したように震えた。
その食べっぷりを見ていると、なんとなく既視感を覚える。
この、金髪の隙間から見える横顔。
まさか。
「……あんた、もしかして」
「え?」
彼女がこちらを向く。
黒縁メガネの奥にある瞳と目が合った。
トップランカー、「氷剣の女帝」高橋すず。
動画サイトで何度も見た顔だ。
「高橋、すず……さん?」
「!!」
彼女はビクリと体を震わせ、慌てて帽子を目深に被り直した。
「ち、違います! 人違いです! 私はただの通りすがりの……」
「そうか。まあ、誰でもいいけどな。飯を食う時は誰だってただの人間だ」
俺は深く追求しなかった。
プライベートでお忍びの食事を楽しんでいるのなら、野暮なことは言わないのがマナーだ。
「……ふふ。貴方は、優しいんですね」
すずは少し安心したように笑い、再びスープに口をつけた。
その横顔は、テレビで見るクールな表情とは違い、年相応の柔らかいものだった。
「……あの、お名前、伺ってもいいですか?」
「鈴木だ。鈴木悠作」
「鈴木さん……。料理、とっても美味しかったです」
これが、俺と彼女の最初の会話だった。
まだ、彼女が俺のことを「動画のあの人」だと確信しているのか、それともただの料理上手なおじさんだと思っているのかは分からない。
だが、奇妙な縁が繋がったことだけは確かだった。
★★★★★★★★★★★
その様子を、店外からじっと見つめる視線があった。
居酒屋から300メートルほど離れた、雑居ビルの屋上。
夜風に吹かれながら、山口純子は愛用の対物ライフル『ブラック・ウィドウ』のスコープを覗き込んでいた。
倍率20倍のレンズ越しに、居酒屋のカウンター席が鮮明に見える。
悠作の隣で、顔を赤らめてスープを飲んでいる変装した女。
「……あらあら」
純子の声は、氷点下のように冷たかった。
トリガーにかけた指が、ピクリと動く。
「変装していてもバレバレですよ、高橋すずさん。……私の悠作さんに、随分と馴れ馴れしいじゃありませんか」
純子は知っている。
すずがネット配信で悠作を擁護していたこと。
そして今、彼女が悠作に対して、無防備な笑顔を向けていることを。
「『氷剣の女帝』でしたっけ? ……私のスコープの前では、ただの的(ターゲット)に過ぎませんけどね」
純子の瞳から、ハイライトが完全に消える。
スコープのレティクルが、すずの持っているスプーンに重なる。
風速よし。湿度よし。
指先に少し力を込めるだけで、あのスプーンを弾き飛ばし、食事を台無しにすることができる。
「……泥棒猫が一匹。威嚇射撃が必要かしら?」
純子は独り言ちる。
殺意の波動が漏れ出しそうになるのを、深呼吸で抑え込む。
今ここで撃てば、悠作の楽しい晩酌を邪魔してしまう。
それに、悠作が行きつけの店に迷惑をかけるわけにはいかない。
「……今回は見逃してあげます。悠作さんの笑顔に免じて」
純子はスコープから目を離し、ふぅと息を吐いた。
しかし、その目は笑っていなかった。
「でも、次はわかりませんよ? 悠作さんの『隣』は……私が一番、相応しいんですから」
彼女はスマホを取り出し、スケジュール帳を確認する。
『悠作さん観察日記』に、新たな要注意人物として「高橋すず」の名前を書き加える。
「これからはもっと、監視を強化しないといけませんね。……ふふっ、忙しくなりそう♡」
純子はライフルを分解し、闇に溶けるように姿を消した。
彼女の歪んだ愛情は、まだ誰にも気づかれていない。
★★★★★★★★★★★
居酒屋を出た俺は、すずと駅前で別れた。
彼女は何度も振り返り、手を振っていた。
「……変な奴だったな」
俺はほろ酔い気分で夜道を歩く。
カイトたちとの因縁は終わり、潔白は証明された。
だが、S級への昇格や、有名になりすぎたことによる弊害など、悩みは尽きない。
そして今夜、トップランカーとの奇妙な接点もできてしまった。
平和な日常は、少しずつ、しかし確実に遠のいている気がする。
俺は夜空を見上げ、小さくため息をついた。
166
あなたにおすすめの小説
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる