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アーネスト・ゲルハルト編
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僕は幼い頃からなんだって完璧にできた。だから、僕の隣に立つ人間も完璧でなければいけない。両親が紹介してくる令嬢は、欠落品ばかりだった。
退屈で仕方がない。アルス帝国に行けば何か変わるだろうか?
「カトリーヌ・シャロンと申します。どうぞお見知りおきを」
優雅にカーテシーする彼女を見た時、僕はこの人だと思った。
俺は勉強のために隣国のアルス帝国の聖フランソワール学園に入学した。その入学式の代表として前に立っていたのが、カトリーヌ・シャロンだった。芯の通った声に堂々とした姿勢。僕はその姿に見惚れた。
歩き方や所作など、様々な点で僕の理想の人だった。
彼女はアルス帝国の皇太子であるフランシス・オルヴェーニュの婚約者だった。フランシスが彼女を丁重に扱っていたら、彼女を諦められただろう。
しかし、フランシスは丁重に扱うどころか彼女を邪険にしていた。そんなフランシスにもめげずに彼を支え続けるカトリーヌの姿に心が打たれた。
どうしても彼女を手に入れたかった。
しかし、どれだけ親身に話を聞いても、彼女が僕になびくことはなかった。
そんなときに目撃したのが、フランシスと聖女のアメリア・キースが仲良くしているところだった。フランシスはあんなにも素晴らしい婚約者がいながら、礼儀作法もなっていない聖女を好いている様子だった。理解はできなかったが、これはいい機会だと思った。
フランシスはあまり頭が良くない。だから、このまま僕が導けば、カトリーヌと婚約破棄してくれるかもしれない。
まず、カトリーヌ・シャロンの悪い噂を広めるように手配した。たちまち噂は広まり、カトリーヌは孤立していった。そこを励ますのが僕の役割だ。僕だけが彼女の味方なのだと思い込ませた。
そして、カトリーヌが聖女を虐めたという噂が完全に定着した頃、アメリアと婚約したいと日々漏らしていたフランシスにこの噂を理由に婚約破棄することを提案した。
この計画を立てるのは楽しかった。いい退屈凌ぎにもなった。
意味のわからない理由で婚約破棄された惨めなカトリーヌを僕が救うのだ。そう考えるだけでワクワクがとまらない。
だけど、その目論みは失敗に終わった。
すべてあの女のせいだ。
アメリア・キース。
僕は彼女が無知な馬鹿だと思っていた。だけどそれは間違いだった。
あの日、僕は婚約破棄の現場に少し遅れて到着した。僕が出て行く暇もなく、教室に着いた頃にはアメリア・キースがカトリーヌの手を引いて、教室から出てくるところだった。
僕はカトリーヌに声をかけようとしたが、それは聖女によって阻止される。
「私、あなたがカトリーヌ様の噂を流したこと知ってますよ。最悪ですね」
彼女は、私の耳元でひっそりと囁いた。その声は嫌に耳に残った。そして、僕を見つめた。
僕は、なんでも見通しているような透き通った琥珀色のその目から逃れたくて仕方がなかった。そこには冷酷な怒気が混じっていた。
生まれて初めてゾッとした。しかし、それと同時に彼女に強い興味を抱いた。
自分の心臓の音が聞こえる。
僕の退屈だった日々が変わる予感がした。
退屈で仕方がない。アルス帝国に行けば何か変わるだろうか?
「カトリーヌ・シャロンと申します。どうぞお見知りおきを」
優雅にカーテシーする彼女を見た時、僕はこの人だと思った。
俺は勉強のために隣国のアルス帝国の聖フランソワール学園に入学した。その入学式の代表として前に立っていたのが、カトリーヌ・シャロンだった。芯の通った声に堂々とした姿勢。僕はその姿に見惚れた。
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彼女はアルス帝国の皇太子であるフランシス・オルヴェーニュの婚約者だった。フランシスが彼女を丁重に扱っていたら、彼女を諦められただろう。
しかし、フランシスは丁重に扱うどころか彼女を邪険にしていた。そんなフランシスにもめげずに彼を支え続けるカトリーヌの姿に心が打たれた。
どうしても彼女を手に入れたかった。
しかし、どれだけ親身に話を聞いても、彼女が僕になびくことはなかった。
そんなときに目撃したのが、フランシスと聖女のアメリア・キースが仲良くしているところだった。フランシスはあんなにも素晴らしい婚約者がいながら、礼儀作法もなっていない聖女を好いている様子だった。理解はできなかったが、これはいい機会だと思った。
フランシスはあまり頭が良くない。だから、このまま僕が導けば、カトリーヌと婚約破棄してくれるかもしれない。
まず、カトリーヌ・シャロンの悪い噂を広めるように手配した。たちまち噂は広まり、カトリーヌは孤立していった。そこを励ますのが僕の役割だ。僕だけが彼女の味方なのだと思い込ませた。
そして、カトリーヌが聖女を虐めたという噂が完全に定着した頃、アメリアと婚約したいと日々漏らしていたフランシスにこの噂を理由に婚約破棄することを提案した。
この計画を立てるのは楽しかった。いい退屈凌ぎにもなった。
意味のわからない理由で婚約破棄された惨めなカトリーヌを僕が救うのだ。そう考えるだけでワクワクがとまらない。
だけど、その目論みは失敗に終わった。
すべてあの女のせいだ。
アメリア・キース。
僕は彼女が無知な馬鹿だと思っていた。だけどそれは間違いだった。
あの日、僕は婚約破棄の現場に少し遅れて到着した。僕が出て行く暇もなく、教室に着いた頃にはアメリア・キースがカトリーヌの手を引いて、教室から出てくるところだった。
僕はカトリーヌに声をかけようとしたが、それは聖女によって阻止される。
「私、あなたがカトリーヌ様の噂を流したこと知ってますよ。最悪ですね」
彼女は、私の耳元でひっそりと囁いた。その声は嫌に耳に残った。そして、僕を見つめた。
僕は、なんでも見通しているような透き通った琥珀色のその目から逃れたくて仕方がなかった。そこには冷酷な怒気が混じっていた。
生まれて初めてゾッとした。しかし、それと同時に彼女に強い興味を抱いた。
自分の心臓の音が聞こえる。
僕の退屈だった日々が変わる予感がした。
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