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狼は赤ずきんの為に物語を変えたくない
しおりを挟む僕は、『赤ずきん』という童話に出てくる狼だ。僕ら童話の登場人物は、童話の通りに行動しなければならない。もし、違った行動を取ると、僕は消滅し、また別個体の狼が用意される。
みんな消えたくないから、『赤ずきん』での自分の役割をエンドレスに演じる。
僕らの物語に終わりはない。だから、延々と時をぐるぐる回るのだ。
僕は、自分の役割はわかっている。……つもりだった。
しかし、僕は赤ずきんに恋してしまったのだ。一目惚れだった。
赤ずきんから覗く笑顔は可愛くて、目はクリッとしていて、優しい声も、全てが好きだ。
この気持ちを伝えたい。
だけど僕は今日も大好きな赤ずきんを食べる。童話の通りに……。
今は、赤ずきんのおばあさんを食べ、赤ずきんを待っている状況だ。僕は赤ずきんを食べるシーンが一番辛い。でも物語には逆らえない……。
物語と違った行動をとるのが怖い。赤ずきんは童話の登場人物としてのプロ意識が高いから、そんな行動をとれば、たちまち僕は嫌われてしまうだろう。
そして何より、僕の赤ずきんに気持ちを伝えたいという願いのせいで、赤ずきんを巻き込んで、迷惑かけるのは嫌だ。
僕のせいで赤ずきんも一緒に消滅してしまうなんてことがあれば、もっと嫌だ。
だから、僕は今日もこの残酷な童話の通りに物事を進める。赤ずきんに会うためだけに辛い日々を我慢するのだ。
僕は赤ずきんの為に物語を変えたくない。
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