人間の赤ん坊に憑依した悪魔の俺がデーモンサマナー学科に入れられるなんて皮肉でしかない

湯島

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パロ・マヨンベ

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俺達はいつものように溜まり場にいた。太一が運んできたコーヒーを飲む。
「ねえ、明、アレなんなのよ?」

美紀が太一を指さしながら俺に聞いた。だから教えてやった。
「あれは俺の舎弟だ」

「舎弟?」
「ああ、そうだ。どうしても俺の舎弟になりたいって言うもんだからな」

「ええ、兄貴の下で修行させていただいてます。太一ってもんです」
太一が自己紹介しながら美紀に軽く会釈する。そんな太一に美紀が唇を上げてニコリと微笑んだ。

「あたしは美紀よ、よろしくね、太一」
太一が後頭部を掻きながら、こちらこそよろしくお願いします、姉さんと返事をする。

その時だった。
店のドアが大きく開かれたかと思うと、マッドブラッズのメンバーが負傷した仲間を担いで大慌てで駆け込んできたのだ。

俺はすぐに負傷したメンバーの治療に当たった。
「一体どうしたって言うんだ?また、他の敵対チームが襲ってきたのか?」

俺は怪我をしたメンバーを担いできた奴に尋ねた。
「いや、俺達は知り合いにお祓いを頼まれたんだけどな……それで現場に行ったらご覧の有様よ……」

「……相手は誰だ?」
「召喚されたデーモンだ……ただ、人間の気配も感じられた……」

アフロ鈴木は今、急用で出かけているからな。となると、ここは俺達が出向くしかないだろうよ。
「よし、案内しろ」

「わかった。ついて来てくれ」
それから俺達はすぐに現場へと向かった。

三十七

案内されたアパートは一見すると小奇麗な感じだったが、サードアイで調べると一棟ごと瘴気で覆われていた。
俺達は案内役のメンバーと太一をその場に残し、車から降りると件のアパートへと近づいていった。

気配は二階から漂っているな。俺達は階段を上がって二階に行くと、強い妖気を発している部屋へと足を踏み入れた。
「この臭いって……」

廊下を充満する異臭に美紀が鼻に皺を寄せた。カズマが俺の方へと振り返る。
「奥に腐った死体でもあるんじゃないのか、これ?」

「とりあえず先に進んでみようぜ」
俺はふたりの先頭に立ち、一番奥にあるキッチンへと足を運んだ。臭気がどんどん強くなっていく。

腐敗した臓器や血肉の臭気がな。その強烈な異臭の正体はキッチンに入ってすぐにわかった。
切断された犬や鶏、それから人体の一部が転がっていたからだ。

コンロには大鍋があった。俺は鍋の蓋を開けて中身を見ると、煮詰められた鳥の足や人間の首が浮かんでいた。
頭の皮が剥けて灰色の頭蓋骨が露出している。まるでシチューだな、こいつは。

「これは一体なんだ、邪法の類だと思うけど……」

カズマが俺の横から覗き込む。俺はカズマに答えてやった。
「パロ・マヨンベだな、こいつは」

「確かアフリカの邪教だったわよね……」
「その判断は少しばかり難しいとこだ」

<パロ・マヨンベ>はアフリカのブードゥー教から派生した宗教の一つだ。
土着的な性質を持つこの宗教は、動物や人間の死体を悪魔の生け贄に捧げる。

今回はこれらの死体を使って、呪術者が悪霊を招き寄せたようだけどな。
あるいは呪術者と悪霊が一体化しているかもしれない。

メンバーが人間の気配を感じたって言ってたからな。
美紀が言っていた邪悪かどうかについてだが、パロ・マヨンベは現代の善悪や倫理観で推し量るのは正直難しい。

原始的で人々の生死や情念といった強い感情が入り混じった宗教だからな。
キリスト教からすれば、確かに邪悪ではあるだろうな。逆十字を飾っていたりもするしよ。

ただな、キリスト教から見れば、日本の神道や密教だって邪教だぜ。
それこそ仏教が盛んなチベットなんかは、カトリックの連中からすればサタニストの温床に映るだろうよ。

それとパロ・マヨンベの信者の多くは、そのルーツを辿るとアフリカから奴隷として連れてこられて、
キリスト教に改宗させられた者も多い。

だからそんな仕打ちをしたキリスト教への恨みを込めて、逆十字に祈ったりしてるって側面もあるのさ。
まあ、そんなキリスト教だって、他の宗教から見れば邪教だ。

特に寛容性に関しては相当低い。まあ、これはキリスト教に限らず、一神教の宿命でもあるけどな。
多神教は他の宗教の神も認め、受け入れるが一神教はそれができない。

自分達以外の神は絶対に認めず、排除しようとするからな。

争いの火種を撒き散らすという点に関して言えば、一神教のほうがよっぽどやばいだろうよ。
話が少しずれたな。とりあえず、デーモンを探すとするか。
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