人間の赤ん坊に憑依した悪魔の俺がデーモンサマナー学科に入れられるなんて皮肉でしかない

湯島

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舎弟の太一

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三十五

高濃度のコーク入り烏龍茶をたっぷりと飲ませたからか、先ほどの沈んだ態度とは打って変わって太一の奴がゲラゲラ笑っている。
ハイになってるな。少し飲ませすぎたか。まあ、いいか。陰気な面してるよりはマシだろうよ。

「おい、太一」
俺が呼びかけると太一が「なんすっか?」とトボけた口調で聞き返してきた。
今更だが、このどうしようもないロクデナシを助けたことに何か意味はあったんだろうか。

「それでお前、これからどうする気だ?」
「別にどうもしないっすよ、それよりも兄貴、折り入って頼みがあるんですが」

「兄貴だ?調子のいい野郎だな。最初に俺をクソガキだとかほざいたのはどこの誰だったかな」
「いや、あの時の無礼は本当に申し訳ありませんでした。この通りです」

太一が畏まった表情で俺に深々と頭を下げてくる。コロコロ態度を変える野郎だな、こいつは。
さっきまで大笑いしてたってのによ。やっぱりコークのせいで少しおかしくなってんのか。

「まあ、いいや。それで俺に頼みってのはなんだ?」
「はい、それなんですがね、アッシを兄貴の舎弟にしてもらいたいんです」

「舎弟だと?」
「はいっ、どうかアッシを兄貴の舎弟にしていただけませんでしょうかっ」

さて、さて、どうしたもんかね。こいつは俺がアスタロトだと知って帰依を望んでいるわけでもないんだよな。
じゃあ、こうしようか。

「舎弟にしてやってもいいが、お前はアスタロトを信奉するか?」
「アスタロト……ってなんですか?」

太一が俺に聞き返す。初っ端からこれか。それにしても無知な奴だな。悪魔学の初歩は小学校で習うはずだが。
「アスタロトは至高なる存在と呼ばれるスーパーナチュラルだ。あれだ、神や仏と同じように拝めばいい」

「なるほど、わかりましたっ、それじゃあ、今日からでも祈らせていただきますっ」
「ああ、そうするといい」

「それじゃあ、今日からこれを身に着けろ」
俺は太一に紋章の彫られたコインを渡した。これはタリスマンの一種だが、俺の紋章が刻まれている。

そうだ、このアスタロトの紋章だ。五芒星に二つの線を引き、その線の両端に丸を描いたデザインになっている。
中々悪くない図柄だ。

「どうもありがとうございますっ」
再び、太一が俺に深々と頭を下げた。こいつは確かにロクデナシだが、俺は俺自身を崇める者には寛容だ。

恩恵や加護も与えるし、願いも聞いてやるからな。
「所で太一、お前、デーモンはどこまで相手にできるんだ?」

「デーモン……ですか?」
決まりが悪そうに太一が頬を指先でポリポリと掻く。まあ、期待はしてないけどな。

「アッシはそっちの方はからっきしでして……」
「イグニス・ファトゥスやスライムと戦って勝ったことは?」

「ありませんね。それどころか危うく食い殺されそうになりましたよ、へへ……」
下手な見え張らずに正直に打ち明けただけ、まだ、上等だな。

こいつも自分なりに必死なのかもな。だって、そうだろう。
ガキの身なりの俺に舎弟にしてくれって懇願して、こうして恥を忍んで話を打ち明けたんだからな。

腹が減ってきたので、俺達はチャーシューメンとチャーハンを食って腹ごしらえをすることにした。
鶏がらベースのスープがうまい。あっさりしているようで、出汁が効いている。

湯気を立てる熱い細麺にフーフーと息を吹き掛けてから太一が音を立てて啜る。
俺はレンゲですくったチャーハンを食いながら、太一に尋ねた。

「お前、強くなりたいか」と。その言葉に太一は黙って頷いた。
俺はアフロやカズマの手土産にいくつか持ってきた繭の一つを太一に差し出した。

「それならまずはこれを食え、この繭をな。お前への手ほどきはそれからだ」

三十六

俺達はあれから模擬戦を勝ち抜いていった。というよりも他の生徒達は俺達の相手にすらならなかったがな。
いや、三十レベルほどの力を持った奴が舞以外に一人だけいたな。

それでもカズマがタイマンで何とか倒してたぜ。
こいつらも最初に出会った頃よりゃ、随分と腕を上げたもんだ。

さてと、次はいよいよ京一と舞を相手に一位が誰かを決める事になるな。
最初は人間達の模擬戦なんぞに興味はなかったが、中々どうして、面白いじゃないか。
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