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一旦引き返す。
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見回り役と思しきエント達が、一斉に槍のように尖らせた木の根を振るい上げた。
縦横無尽に動き回る無数の根が俺達に飛びかかってくる。
美琴が素早く結界を張って、敵の攻撃を食い止めた。よし、よし、いいぞ。
そのまま理沙とレブがエントの根っこを燃やしにかかった。火炎魔法を浴びせて消し炭にしてしまう。
あとは簡単に片付けられた。とまあ、繭を食っている間中、こんな戦闘を何度も繰り返した。
かつての俺から見れば雑魚でしかないエントも他の奴らからすれば、それなりに厄介な相手だ。
そんなエントがそこそこの数を組んで繭の警備と巡回に当たっているんだから、この異界の主はまあまあってとこだろうよ。
それから俺達は満足するまでソウルプラズマを吸収した。これでまた一段と俺達もパワーアップしたな。
どれ、アフロやカズマの手土産に少し貰っていくか。それにしても本当にいい場所を見つけたぜ。
当分の間はここに通うとするかな。それから俺達は来た道を戻った。
三十四
帰る途中で、又、膜が増えているのがわかった。俺は何気なく新しく出来上がった膜の中を覗いて歩いた。
「我が主よ、人間とは悲しいものでございますね。やはり現世は辛いのでしょうか」
「ああ、辛くなきゃ、理想的な別の世界でやり直したいとは思わないだろうしな」
レブが俺と同じように膜の中で眠る人間達の様子を見やる。浮かべた表情も膜の色もみんなどれも同じだ。
最初の頃は皆そうだ。それも転移者の今後の行動次第で変化していく。
悪逆非道を重ねてどす黒くなっていくか、それとも慈愛を振りまいて光り輝くか。
それから俺は隣の膜に視線を移した。ん、ん……これ、太一じゃねえか?
こいつも転移してきたのか。どれ、少しこいつの行動を覗いてみるか……あ、こりゃ、ダメだな。
少なくともマッドマックスや北斗の拳のモヒカンみたいな事ばっかしてるような奴の魂が光り輝くことはないしな。
ああ、ちなみに光り輝く膜の中にいる奴らだが、こいつらは最終的にはスーパーナチュラルに転生する。
人間が神聖視する類のな。家の守り神とかに多いぜ。さて、所でこのボンクラ、どうするかな。
余計なお世話だし、ただのお節介かもしれないが、膜から出してやるか。
このまま行ってもこいつの場合、地獄に落ちる可能性の方が高そうだしな。
あれだ、袖振り合うも多生の縁だ。前世じゃ、こいつも俺を信奉し、祈りを捧げていたのかもしれないしな。
膜から出したら、必ずと言っていいほど文句をつけてくるだろうが、そんな事を気にしていたら人間とは付き合えないぜ。
そういうわけで、俺は太一の奴を切り裂いた膜から引きずり出し、眠りから覚ましてやった。
目覚めてから、まだ意識がはっきりしないのか、ぼんやりとした表情を浮かべている。
俺は気付け代わりに持っていた生姜の欠片を太一の口に含ませた。
すると太一の意識がすぐに覚醒する。生姜は昔から気付け薬に使われていたからな。
あとはお定まりのパターンだ。
余計なことをするなとか、なんで俺を膜から出したんだとかな。
とりあえず俺は奴の鳩尾(みぞおち)に軽く拳をめり込ませて黙らせた。
こういう時は百の言葉を重ねるよりも一つの拳がモノを言うのさ。
何よりも激高しているこの角刈りチビの馬鹿者にわざわざ俺が、言葉を重ねて説得するのも虚しいと感じたからだ。
「おい、少しは冷静になったか?」
鳩尾を押さえて激しく咳き込む太一の耳元で俺は囁いた。
それからどす黒くなった膜のほうへと、太一を振り向かせる。
「なんだ、こいつは?」
不思議そうに球体の膜を眺めながら、太一が呟いた。やっぱり、こいつは何も知らなかった様子だな。
「未来のお前だよ。地獄に囚われる直前のな」
「どういう事だ?」
「お前、転移した世界で村を襲って略奪し、泣き叫ぶ村の娘達を強姦しただろう?」
「なんでそんなこと知ってるんだよっ!?」
太一が驚いたように目を見開き、俺に尋ねた。
「そりゃ、お前の転移した世界を覗いたからな。なあ、太一、お前あのままだったら煉獄に幽閉されるとこだったんだぞ」
「あのさ、さっぱり話が見えないんだけどよ?」
こんな知性の欠片もない馬鹿、助けない方が良かったか?
「この場所は人間の堕落した魂や負の感情を好むデーモンの縄張りで、お前は収穫される前の果実みたいなもんだったんだよ。
で、たまたまお前を見つけた俺が、太一、お前を膜から引きずり出したってわけだ。
そこの黒く変色している膜は、堕落し、腐敗していく人間の魂の色だぜ。
で、腐った魂は奴らに刈り取られ、地獄の中に閉じ込められる。ソウルプラズマの生産システムとしてな。
ああ、お前がそれを理解して、転移した世界で好き勝手やってたんなら謝るよ。さあ、膜の中に戻るといい」
だが、奴は顔を青褪めさせたまま、膜に戻ろうとはせず、立ちすくんだままだった。
「そんな……」
「現世に引き返したいなら俺と一緒に来るといい。俺も今、戻るとこだったんでな」
すると奴は無言のまま、俺についてきた。
縦横無尽に動き回る無数の根が俺達に飛びかかってくる。
美琴が素早く結界を張って、敵の攻撃を食い止めた。よし、よし、いいぞ。
そのまま理沙とレブがエントの根っこを燃やしにかかった。火炎魔法を浴びせて消し炭にしてしまう。
あとは簡単に片付けられた。とまあ、繭を食っている間中、こんな戦闘を何度も繰り返した。
かつての俺から見れば雑魚でしかないエントも他の奴らからすれば、それなりに厄介な相手だ。
そんなエントがそこそこの数を組んで繭の警備と巡回に当たっているんだから、この異界の主はまあまあってとこだろうよ。
それから俺達は満足するまでソウルプラズマを吸収した。これでまた一段と俺達もパワーアップしたな。
どれ、アフロやカズマの手土産に少し貰っていくか。それにしても本当にいい場所を見つけたぜ。
当分の間はここに通うとするかな。それから俺達は来た道を戻った。
三十四
帰る途中で、又、膜が増えているのがわかった。俺は何気なく新しく出来上がった膜の中を覗いて歩いた。
「我が主よ、人間とは悲しいものでございますね。やはり現世は辛いのでしょうか」
「ああ、辛くなきゃ、理想的な別の世界でやり直したいとは思わないだろうしな」
レブが俺と同じように膜の中で眠る人間達の様子を見やる。浮かべた表情も膜の色もみんなどれも同じだ。
最初の頃は皆そうだ。それも転移者の今後の行動次第で変化していく。
悪逆非道を重ねてどす黒くなっていくか、それとも慈愛を振りまいて光り輝くか。
それから俺は隣の膜に視線を移した。ん、ん……これ、太一じゃねえか?
こいつも転移してきたのか。どれ、少しこいつの行動を覗いてみるか……あ、こりゃ、ダメだな。
少なくともマッドマックスや北斗の拳のモヒカンみたいな事ばっかしてるような奴の魂が光り輝くことはないしな。
ああ、ちなみに光り輝く膜の中にいる奴らだが、こいつらは最終的にはスーパーナチュラルに転生する。
人間が神聖視する類のな。家の守り神とかに多いぜ。さて、所でこのボンクラ、どうするかな。
余計なお世話だし、ただのお節介かもしれないが、膜から出してやるか。
このまま行ってもこいつの場合、地獄に落ちる可能性の方が高そうだしな。
あれだ、袖振り合うも多生の縁だ。前世じゃ、こいつも俺を信奉し、祈りを捧げていたのかもしれないしな。
膜から出したら、必ずと言っていいほど文句をつけてくるだろうが、そんな事を気にしていたら人間とは付き合えないぜ。
そういうわけで、俺は太一の奴を切り裂いた膜から引きずり出し、眠りから覚ましてやった。
目覚めてから、まだ意識がはっきりしないのか、ぼんやりとした表情を浮かべている。
俺は気付け代わりに持っていた生姜の欠片を太一の口に含ませた。
すると太一の意識がすぐに覚醒する。生姜は昔から気付け薬に使われていたからな。
あとはお定まりのパターンだ。
余計なことをするなとか、なんで俺を膜から出したんだとかな。
とりあえず俺は奴の鳩尾(みぞおち)に軽く拳をめり込ませて黙らせた。
こういう時は百の言葉を重ねるよりも一つの拳がモノを言うのさ。
何よりも激高しているこの角刈りチビの馬鹿者にわざわざ俺が、言葉を重ねて説得するのも虚しいと感じたからだ。
「おい、少しは冷静になったか?」
鳩尾を押さえて激しく咳き込む太一の耳元で俺は囁いた。
それからどす黒くなった膜のほうへと、太一を振り向かせる。
「なんだ、こいつは?」
不思議そうに球体の膜を眺めながら、太一が呟いた。やっぱり、こいつは何も知らなかった様子だな。
「未来のお前だよ。地獄に囚われる直前のな」
「どういう事だ?」
「お前、転移した世界で村を襲って略奪し、泣き叫ぶ村の娘達を強姦しただろう?」
「なんでそんなこと知ってるんだよっ!?」
太一が驚いたように目を見開き、俺に尋ねた。
「そりゃ、お前の転移した世界を覗いたからな。なあ、太一、お前あのままだったら煉獄に幽閉されるとこだったんだぞ」
「あのさ、さっぱり話が見えないんだけどよ?」
こんな知性の欠片もない馬鹿、助けない方が良かったか?
「この場所は人間の堕落した魂や負の感情を好むデーモンの縄張りで、お前は収穫される前の果実みたいなもんだったんだよ。
で、たまたまお前を見つけた俺が、太一、お前を膜から引きずり出したってわけだ。
そこの黒く変色している膜は、堕落し、腐敗していく人間の魂の色だぜ。
で、腐った魂は奴らに刈り取られ、地獄の中に閉じ込められる。ソウルプラズマの生産システムとしてな。
ああ、お前がそれを理解して、転移した世界で好き勝手やってたんなら謝るよ。さあ、膜の中に戻るといい」
だが、奴は顔を青褪めさせたまま、膜に戻ろうとはせず、立ちすくんだままだった。
「そんな……」
「現世に引き返したいなら俺と一緒に来るといい。俺も今、戻るとこだったんでな」
すると奴は無言のまま、俺についてきた。
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