異世界へ行ったら最強でした

aresheart

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2 希望への旅立ち

第5話 別れ

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黄色い光りが魔法陣から上に向かって上がっている。
だがそれ以上のことは起きない、 そうか呪文を唱えていないからであろう、だが ちょっとがっかりするなぁ。

アイリスの方を見ると彼女は信じられない顔をしながらこちらをみている。 
どうしたのですか、アイリスさん?と問いかけると。

 あなた、今自分がなにをしたのか分かっているの?

顔を横に振って 全然 と答えた。 彼女の反応はいつも通りの呆れた顔と手を顔に当てる仕草、また呆れさせたみたいだ。

 人間、ちょっと他の魔法陣にも魔七を流し込んでみて。

言われるがままに雷の魔法陣に魔七を流し込むのをやめて 他の魔法陣に移った。
他全て同じ反応だ、 火の魔法陣は赤く光り 水は薄い青色 自然は緑 土は茶色 光は白く 闇は黒い。 全てがそれぞれの色で光った。
アイリスが顔色を変え僕を呼び寄せた。

 あなたエルフと他の種族の違いって分かる?

突然の質問だ。

『えっと、 美しい外見と森に住む習性、頭が良いと 魔法が強い。 代わりに肉体はそんなに強くないかな?』

全てはゲームの知識だ…

馬鹿にしているの? と言わんばかりの真顔だ。あれ何か間違えたのかな?。

 違いは 精霊が見える見えないよ  私たちエルフは精霊が見えるし聴こえるのよ。 そしてあなたからは7種の精霊が見えるの。…全くどこまでレアな存在なのよ あなたは。

もっと詳しく説明してもらう様 頼んだら続けてくれた。

 まず種族は人間とエルフの他に 怒鬼オーク、 魚人ナーガ、 ドワーフ、悪魔、天使、がいるの。 主に人間は火属性、エルフは自然属性、ドワーフは土属性、魚人は水属性、怒鬼は無属性、 天使が光で 悪魔が闇属性。 当然これは主な属性よ たまに他の属性を使うものだっている。 この中に 雷属性を使うものは十分レアよ。 そしてそれよりレアなのが七属性を使う奴よ。 そんな奴が私の目の前にいるってのが信じられないの。 私も虹の魔導師だけど、まさか精霊達に他の虹魔導師を助けてって凄まれて、 本当に人間のくせして生意気ね。

思いのほか自分はレアな存在だと今 気がついた。 いくらなんでもこれはかなり驚いてしまった。 確かに、いきなり救世主だの何だのと呼ばれて今度は虹の魔導師?って知ったら 目が眩んでしまう… だが 現実アッチ ではなにも取り柄がない理由が これだと信じたい…。

こんな話をしているとふと思った、何故アイリスは“森の魔女様”なんて呼ばれているのだろう?  ついでに聞いてみたら 彼女はそっぽを向いて。 もう遅いから 帰りましょう、と言い去って行った、地雷だったかな?

家に戻ってから当然のように彼女は冷たい、確かにいつも通りだが少々違和感を感じる。 部屋に戻ってベットに寝たら すぐに眠ってしまった。
もう朝? すぐに起きて台所へ行き 朝食の用意をしていたら彼女がきた。

 起きれたのね。

今回はそんなに驚いていない、 だがやはり 魔七を使ったせいだろう 普通に考えれば簡単な答えだ。

 ここ一週間用事で出かけるから 魔法の授業はなし、いいわね?

そんな…せっかく乗ってきたのに…。

朝食を終えてすぐに出かけるしたくをしだした彼女に近寄って見ると。 何? と言わんばかりの顔だ。
僕が物欲しそうな顔をしていると
 
 分かったわよ! 全く じゃぁ、魔法陣を描く練習してみなさい。 それが宿題よ 私が戻って来るまでには完璧にかけるようにしなさい。

確かに 魔七で魔法陣を描くとなると 難しい気がする。 だから 手で描いて感覚を掴む練習か、 さすが森の魔女様だ。


1日目、 前に行った所で アイリスの 魔法陣の真似をして 描き始めた… スッゴイ不細工な 豚さんができた… 何をどうすればこうなるのか自分でもわからない…。

2日目、 昨日一日中練習してたから 家事がたまってしまった…  やっとかないと叱られるか… 最終的に 日が暮れ始めた所で練習開始…また失敗だ。 なかなか上達しないなぁ。

3日目、 やっとまともな丸を描くことが出来たが、他がおかしい やっぱりコツとかあるのかな? まぁめげずに頑張るとしよう。 今日は家事と両立できた。

4日目、 この頃 良く練習中に視線を感じる。多分他のエルフだろう 心配しなくていいはずだ…。

5日目、 今日はフードをかぶって、練習に出かけた。 これで一応心配しなくてもいいだろう…。

6日目… いつも通りの練習修行を終えて 家に帰ってから家事をしていたら突然 外から大きな爆発音が聞こえた。
それにつられて慌てて外に出ると 所々焦げた跡、 そして非戦闘のエルフ達は叫びながら逃げ回っている。

 助けて! 
 夜襲だ!
 戦えないものは、避難を!
 人間だぁ! 人間が襲ってきたぞ!

辺りを見渡すと 人影が エルフを追い回し捕まえては 剣らしきもので 刺して殺していた。 突如僕の体が震え上がった。
また死ぬかもしれない状況に陥ってしまった、 最悪だ 今はまだ魔法が使えない。 要は役立たずだ。
頭が考える前に身体が動いていた、助けられないエルフはほっておいて逃げ遅れたエルフ達を探す… いない、いない、 見つからない。 
死体しか…皆やられたのか?

歩き回ってるところにエルフの隠れ家を見つけた良かった。 結構残ってる

 貴様止まれ!

いきなりエルフの騎士? 的な奴に止められた。

 誰だ貴様は!? 
 待て!そいつ 人間だ! 
 
途端エルフ達が逃げ始めた。

 戻れ戻れ! 見つかった!

そういった方から盗賊達が隠れ家に入ってきた。 ヤバイ何とかしないと。

ー森の精霊達よ我が敵を撃ち落とせ。ー
木々の捕食棘ウッドプレデターソーン

いきなり土から木の根っこが盗賊達を串刺しにして行った。 一瞬の出来事だった、僕を捕まえにきたエルフも固まっている。
声がした方を見てみるとそこには帰ってきた アイリスが居た。 じゃあ 今のはアイリスの魔法? だとしたら納得できる、伊達に森の魔女と呼ばれてはいない。

 おぉ、アイリス戻ったのか!

今まで怖がっていたエルフ達が途端落ち着いた。 彼女がエルフ達に与える安心感が僕にすら伝わってきた。
ホットしていたエルフの一人が僕の存在に気ずく。

 うわー! 逃れた人間がまだ残っている!

他のエルフ達もまた警戒し始めた。 僕の方に向かってたエルフ騎士も 剣を抜いて僕の方に走ってきた。
いきなりその歩みを止めた。 その顔は青ざめていた…。

 こ、コイツ… 虹の魔導師だ。

途端他のエルフ達が叫び始めた、皆がパニックだ。 僕自身 何をどうすればいいか 全然わからない始末だ。

 皆、 落ち着きなさい! 彼は私の奴隷よ

アイリスの声が皆をまた正気に戻した…僕はそう思った。

 まさか…アイリス 我々を裏切ったのか?

ヤバイ…。どう見ても嫌な予感しかしない。 そう思った矢先

 確かに、アイリスは一週間の間 何をしていた? もしかして貴様が我々の今場所を人間どもに明かしたのか?

ひとりのエルフがそれを口にしてから まるで疫病のように、他から同じような疑問が湧いてくる。 確かにエルフは人々を嫌うだがこれはおかしいのでわ?

 違うわ! 

アイリスが声をあげた。

 私はこの盗賊どもが誰だか知らないし、見たこともない。 私が知っている人間はそこに居る 私の奴隷だけよ。

 ならこの一週間貴様は どこで何をしていた!?

エルフ騎士が彼女の方を向き、 問いただした。 アイリスからは “それは開かせない。 だがあなた達を裏切ってはいない” 当然そんな言葉を並べたら、エルフ達はまた不安がる。 

 そうか、じゃぁ 一つ聞かせてもらおう。 なぜ貴様の奴隷の人間は 貴様と同じ 虹の魔導師なのだ? なぜそんな人間を 奴隷としている? 貴様は何の目的…

 目的なんて何もないわ!

どう見てもアイリスは焦っている。 同胞にここまで責められては当然であろう、 だが、何故ここまで責める? 僕も正直嫌な気分だ。 僕の知っているアイリスがここまで責められ 助けた恩を仇で返している。 こんなに必死なアイリスは初めてだ、気品が高く優しいあのアイリスが何故ここまでされなきゃいけないのか?

 いい加減にしてください!

とうとう口に出してしまった… だが僕も我慢の限界だ!
周りに居るエルフ達は皆僕の方を向いた、 アイリスも…。

 僕は! アイリス教壇の人達に救世主として召喚されました! 訳あってアイリスさんに魔法を教わっているだけです!
今あなた達は そのアイリスさんに助けられて 生きている。 僕は何も出来なかった、 したくてもまだ 魔法の使えない僕が何かをしようとしたところで何も変わらなかった! そこにアイリスさんがみんなを助けた! みんなを救ってくれた!  
それなのにあなた達は こんな仕打ちを!

その時僕の身体が震えた。 騎士から放たれた殺気を感じ取ったからだ、 彼の方を向くとその顔は 酷く怯えていた…

 貴様には分からぬかもしれないが。
お前達人間は危険なのだ、そしてお前と関係を持つアイリスもだ。 貴様が今魔法が使えないのなら好都合だ、 ここで死ね人間。

彼のからの気迫に恐れを感じ取って僕はしりもちをついてしまった。 彼は本気だ。
今ここで 僕を殺そうとしている…僕の身体がそれを感じ取っている…だが動けない… ヤバイ… 死ぬ。

 よい!

また騎士が 止まった。 アイリスの声によって… だがその声はまた違っていた。
僕が なにかを言おうとして口を開けた途端。

  ーsilentiumシレンチウン

僕の声が消えた。


声が出ない、何をしても何を言っても僕から声が発することは無くなった。

 何のつもりだアイリス?

エルフがアイリスを睨む。 だが今度は彼が気おされてしまった…

 お前も黙れ。 人間、 貴様はもう喋るな。  いいか、 ここの場所私達の関係すべてが秘密だ。 忘れろ。 今は見逃してやる、そして 貴様ら もしまた私に 楯突くようだったら。 この村を滅ぼすぞ。

その声には強者の殺気が込められていた エルフ達のざわめきは収まり、 皆が大人しくしていた。 彼女を恐れたのだろう… だが… 僕だけ、僕だけが それを感じなかった…彼女の声からは 切なさと悲しみが感じとれた… 陰であの綺麗な銀色をした目が見えなかった… だが声からして 濁っていたであろう。 今にも流れそうな涙をこらえながら…

 さぁ、 ここをされ人間。 そして二度と戻って来るな…。


To be continued...

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