能力を鑑定してもらったら『座敷わらし』だと言われた ~『ざまぁ』や『追放系』の主人公と同じ能力ってなんですか!?~

咲吉 美沙

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2.能力を鑑定してもらったら『座敷わらし』だと言われた

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「これから能力を見せてもらうね。ここにシワラちゃんの手を置いてくれるかい」
「? は、はい……」

そう言ってイブキさんの左手がカウンターの上に差し出される。
何だか不安になる。鑑定と言いつつも、なにをされるのかわからない。
私は、目の前にあるイブキさんの手のひらに恐る恐る自分の右手を重ねた。

「じゃあ、鑑定を始めるよ。手はそのままにしておいてね」

イブキさんが右手を持っていたペンを置いて空中をするりと撫でた。すると透明の板のようなものが現れる。
透明の板には青く発光する文字?のようなものがずらりと描かれていた。何かの暗号なのかな?
初めて見るものだったので、目が離せないでいると

「これはね、君の『能力』。ステータスが表示されてるんだよ」

そう教えてくれた。
私の『能力』……とは言ってもさっぱり内容は読み取れない。

「僕はこうやって触れたものの鑑定ができるんだ。ちなみに書いてあるのは僕の国の言葉だよ。王都でもなかなか読める人はいないんだけどね」

そう言いながら、イブキさんが透明の板の上に指を滑らせると、読めない文字は流れるように消えては現われをしていく。
これが『能力を見る』ことが出来るスキルか。なんとも不思議な能力だ。

「なるほど。『荷物持ち』になりたいっていた通り、体力とパワーの特性値は高いね。まだ戦闘経験もないのに、この数値はすごいや。それに、『解体』の能力もあるし冒険では重宝されるんじゃないかな」
「本当ですか!?」
「うん。本当だよ」

イブキさんがニッコリ笑う。
緊張してこわばっていた肩の力がドッと抜ける。

「えへへへー。わたしドワーフの血を引いていて、体は小さいけれど、力だけはあるんです。馬も一頭くらいなら持ち上げられるし、狩りの獲物を捌くのも昔からやってたので得意です!」

褒められて嬉しくなって、空いている方の手で照れながら頭を掻く。
田舎で「冒険者としてやって行きたい!」と言ったときは「そんなのお前さには、出来っこねぇ」なんて言われてたけど。
良かった。
鑑定士さんのお墨付きなら荷物持ちとしてやっていけそうだ。
と思ったのだが……

「低い数値の特性もあるけど、他でカバーできれば問題は……あぁ、シワラちゃんは『座敷わらし』なのか」

私には読めない文字に目を通していたイブキさんは、そう言うと渋い顔して黙ってしまった。
『ザシキワラシ』? なにそれ? そんなこと言われたことがないんだけど。
種族? モンスター? 何か食べ物?

「えぇと? その『ザシキワラシ』とかいうのは何なのでしょうか?」
「隠し能力って言うかな。僕が鑑定すると本人でも気づかない能力が見えるんだけど……『座敷わらし』もそのうちの1つだね」

これまでに聞いたことのない能力だ。田舎から出てきたの私が知らないだけで、実は王都ではよく知られたものなのだろうか?
イブキさんの浮かない顔を見ると、とんでもないバットステータスなのかもしれない。

「もしかして、それがあると仲間の足を引っ張るから『荷物持ち』になれない??」

そんなのイヤだ。せっかく、故郷を出て憧れの冒険者になるため王都に来たのに!

「いやいや、誤解しないでね! 実際には、所属した組織やパーティーに幸運をもたらす能力だよ」

イブキさんは焦ったように空いている手を振って否定する。

「『座敷わらし』っていうのは勝手に僕がそう呼んでいるだけで、実際は別の名前の能力なんだけど。『ざまぁ』や『追放』系の主人公たちもこの能力持ちのことが多くて……」
「『ザマァ』や『ツイホウ・ケイ』のシュジンコウ?」
「あー、うん。こっちの話だよ。とにかく君の仲間になる人たちは、実力以上の力が出せたり、物事がスムーズに進んだり、いろんな形で君の能力の恩恵を享受することになるんだ」
「そんなすごい能力が私にあるんですか!?」

なんと、幸運をもたらす能力とは!
これから私の恩恵を期待して、あちこちのパーティから勧誘があるかもしれない。
思わず冒険者として引っ張りだこになった自分を想像して、ニンマリ笑ってしまう。
……でも何かが引っ掛かる。

「あれ? それなら、どうしてイブキさんは渋い顔を?」
「これは残念なお知らせなんだけどね。シワラちゃんは……」

再びイブキさんは表示されているステータスに視線を戻し、言いづらいことを伝えるような難しい顔をする。

「わ、私は……?」

不安な気持ちで次の言葉を待つ。

「…… 特性値パラメーターの『幸運』の数値が低いんだ」
「はい?」

ンンンンンンん?
私の『幸運』の数値が低い?
いや、確かに私はツイている方ではないですけど……それって、そこまで深刻なこと?

「幸運の値が低い『座敷わらし』は、『ざまぁ』や『追放』系の主人公みたいなルートを辿りやすいんだよね」

余命宣告をするような顔で、イブキさんは言う。

「だから、何なんですか『ザマァ』や『ツイホウ・ケイ』って……。っていうか、私の能力は幸運を呼ぶのでは? なんで私の『幸運』が低いんですか!??」
「『座敷わらし』は、居ると【周りに】幸運を呼ぶんであって、本人の運が良いとは限らないんだ。君には……うん、ギリギリ死なない程度の運はあるよ?」
「ギリギリ死なない程度の運。」

……私、冒険に出ても大丈夫かな。
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