能力を鑑定してもらったら『座敷わらし』だと言われた ~『ざまぁ』や『追放系』の主人公と同じ能力ってなんですか!?~

咲吉 美沙

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3.『座敷わらし』という能力

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イブキさんは、うーん、と唸った。

「周りの人間は君の『座敷わらし』スキルによって、上手く事が運ぶようになる。しかし、シワラちゃん自身は『幸運』が低いから不遇の状況に置かれることもある。得意分野が活かせなかったり、正当な評価を受けられなかったり、不正に巻き込まれたりね」

ええ、そんなぁぁ……。

「じゃあ最初から「上手くいっているのは私のおかげですよー。だから私を大事にしてね」って、仲間になる人たちに私の能力のことを伝えておけばいいのでは?」
「残念ながらそれはできないんだ」

そう言うと鑑定師のイブキさんは、私の能力のことを教えてくれた。

隠しスキル『座敷わらし』の発動条件は3つ

・『座敷わらし』のスキルを持つ事を自分から話さないこと
・自分の能力を活かして真面目に働くこと
・不正をしないこと

その全てを守らないと幸運をもたらす効果は出ないのだと言う。

「『座敷わらし』の能力については、自分からは黙っていること。じゃないと周りは幸運が受け取れなくなるから」

秘密だと言うように、イブキさんは人差し指をシーっと唇に当てた。

「あぁ。だからあまり聞いたことのない能力なんですね」
「僕みたいな鑑定士とか、君が開示しなくても隠し能力に気づいていたり、同じ『座敷わらし』能力持ちには例外的に秘密でなくてもいいけどね。幸運を招くスキル持ちが居ると知られたら別のパーティーに引き抜かれてしまうかもしれない。だから、気づいた人もわざわざ言わないだろうけど」

なるほど。そういうことなら、聞き慣れない能力ということも仕方ないのかもしれない。

「それにしても。最初の『隠しスキルを秘密にしておく』はともかく、残りの2つのスキル発動条件は割と当たり前のことですよね?」

健康なら真面目に働く。そして、悪さをしない。
小さい頃から散々言われてきたルールだ。
そんなの、子供だって理解できるのに。

「その当たり前ができない人が世の中には割といたりするんだよ」

イブキさんは、そう言いながら苦笑した。

「さて、シワラちゃんが周りに幸運を呼ぶ『座敷わらし』を発動させるためには、隠しスキルのことは黙っていなければならない。これは理解できた?」

私は返事の代わりに頭を下げて大きく頷いた。

「ただ、君は自身の『幸運』の数値が低いから、悪い奴に引っかかる確率が高い。これも分かる?」

私は頷いて、イブキさんに質問をする。

「『悪い奴』っていうのは、例えば?」
「そうだなぁ。悪い奴っていうのは、仲間の能力の恩恵を自分の実力だと自惚れて傲慢な態度をとる輩や、幸運にあぐらをかいて、自らのやるべきことを放棄し出す者とか。シワラちゃんは、そんな仲間と共に冒険したい?」

イブキさんの問いかけに対して「否」の意味を込めてブンブンと横に首を振った。

「運が悪いとそういう輩に目をつけられやすいんだ。人の本性は、徐々に見えてくるものだから最初から回避するのは難しい。僕が言いたかった『残念なお知らせ』って、そういうこと」

そういうことかぁ……。

「うぅぅ。重要なことだけど、あまり知りたくなかった……」

つまり私は、冒険者パーティでハズレを引きやすいってことだ。……ちゃんとやっていけるのかな。
ここに来るまでにみなぎっていた、冒険者になろう! という気持ちがしぼんでいく。
しょげる私を見て、イブキさんは目を細めながら言う。

「脅すような形になってごめんね。でも、僕は『冒険者になるのは辞めろ』とは言わない。シワラちゃんは十分冒険者として働ける能力があるし、『悪い奴に引っかかる確率が高い』は絶対じゃない。上手くいかない場所だったら、サッサと離れればいいだけさ」

そんな、あっさり簡単に行くものなのだろうか。

「そうそう、表に出てこない能力だから知られてないけど、このスキル持ちの冒険者は割といるんだよ」
「……そうなんですか?」
「目立たないけど、とっても重要な役割を担っていることが多いんだ。名前も『座敷わらし』って勝手に僕が呼んでいるだけで、実際は『謳われない英雄』ってのスキル名だしね」
「『英雄』!? か、格好いい呼び名です!!!」

そう私が目をキラキラさせて言うと、イブキさんは「僕もそう思う」とふんわり微笑んだ。

「君は、君自身を大事にしていれば大丈夫だよ。仲間も大切だけど、つらい時は自分自身にも手を差し伸べてあげてね」

それと、とイブキさんは付け加える。

「もう一つ。もしも上手くいかなくなった時や逃げたくなったときは、ウチに来ること。遠慮はいらないからね」
「ここに?」
「うん。一度休んで、またギルドで自分に合うパーティを探せばいいんだよ」

トントンと宿屋のカウンターを叩きながらイブキさんは言う。

「鑑定士だけじゃ食べていけないから宿屋もやってるんだけど、こんな奥まった場所にあるからお客さんがなかなか来なくてね。いつだって歓迎するよー!」

両手を広げておどけてみせるイブキさん。
鑑定額も格安。宿に掲示されている宿泊料も王都だと言うことを考えれば、破格の価格だ。
きちんと商売はやっていけているのかな?
ちょっと心配にはなるが、こちらとしても助かる申し出なのでありがたく受けることにする。

「……はい、ありがとうございます。ところで、どうして私の能力は『ザシキワラシ』なんて呼び方をするんですか?」

さっき言ってた、正式名の『謳われない英雄』の方が格好良いのにな。
そもそも『ザシキワラシ』というモノの正体は何なのだろう。

「『座敷わらし』は僕の故郷にいた、子供の外見の妖怪……えーと、居着いた家に繁栄を招き寄せる、精霊みたいなものでね。シワラちゃんが持つ能力と特性がよく似ているんだ」

ヨウカイ……? またイブキさんから聞いたことのない単語が出てきた。
この人が私の知らない遠い国から来たのは間違いないんだろう。

「僕にとってはそちらの方がしっくりくるんだ。あと、可愛いから」

可愛いから。
納得できるような出来ないような……まぁいいか……。

そんな感じで鑑定は終わり。
不思議な宿屋の店主に鑑定してもらった能力鑑定書|(隠し能力が伏せられてる)を受け取り、私はギルドに向かった。
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