能力を鑑定してもらったら『座敷わらし』だと言われた ~『ざまぁ』や『追放系』の主人公と同じ能力ってなんですか!?~

咲吉 美沙

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4.最初のパーティからは追放されました

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そうしてギルドの登録を無事に済ませた私は、紹介された冒険者パーティーに入り『荷物持ち』として冒険者の第1歩を踏み始めたのだが……。

半年後。
私は宿屋『緑の風』のカウンターに突っ伏していた。

「ぼ、冒険者がこんなに大変だったとは……」
「随分とぐったりしているね……。それに腕に怪我をしているようだけど、大丈夫かい?」
「ギルドで『アットホームなパーティで初心者でもできる荷物運び』って言う募集のパーティを紹介してもらったんですが、いざ入ってみると『荷物運び』以外にも調理や物品鑑定スキルも求められて、おまけに夜は寝ずの番でいたので……」

昼間は雑用と荷物運び、夜間は寝ているパーティメンバーを起さないように荷物の整理をしながら、周囲の警戒と監視役。荷物の整理が終わったら食事の下ごしらえ。それらを連日こなして、寝不足のままモンスターとの戦闘に入り、襲われ怪我をしてしまった。
怪我の程度は軽かったものの、多くの荷物を持つことが難しくなり、仲間から「役立たず」の烙印をされてパーティーから外されてしまった。と、いうかそのまま置いて行かれた。
そして失意のまま王都に戻って「上手く行かない時は宿に来い」と言われたことを思い出し、フラフラとこの宿屋『緑の風』にきて現在に至る。

「荷物運びをきちんとこなすのも新人が雑事をやるのも当然で、出来ないことを次々と指摘されて……。ケガをしたときは、体調の自己管理なんて当たり前のことも出来ないのか、って言われちゃいました」

カウンターを挟んで立っているイブキさんに、ぼそぼそとこれまでの経緯を伝えた。

「当たり前のことができないなんて、冒険者失格ですかね……」

やるとこは大量にあり、私が忙しくしている時に周りの人が雑談や休憩していることも多かった。
でも、前線で戦う人がいつでも動けるように休むのは当然で、戦闘が出来ないサポート要員の私がしっかりこなさなければならなかった。
自分の力不足を突きつけられたようで、また冒険者としてやっていけるのか自信が持てない。

「……何が『当然』で『当たり前だ』」

突然、まるで地の底から出てくるくらいの低い声が私の頭の上から降ってきた。
私が知っているのとは全く違うイブキさんの声だ。

「冒険に慣れない初心者に対して過剰要求を突きつけて、まともなケアもしないで怪我をしたら放り出すようなことをして……」
「イブキさん?」

思わず顔を上げると、イブキさんが眉根にシワを寄せて拭きかけのグラスを持ったまま、ワナワナと震えている。
力の入れすぎで、イブキさんが拭いているグラスなんて今にも音を立てて割れそうになっていた。
これは……明らかに怒っている。

「ワザと初心者を募集して、何も知らないのをいいことに付け込んで消耗品扱いか。自分でできることは自分でこなすか、サポート要員を増やせって話だよ。便利な道具もあるだろ。必要経費ケチってるんじゃねぇぞ。飯の用意は当番制にするか手伝えって話だ。そういう奴に限って、飯がまずいとか文句言うんだよ!」

あの穏やかだったイブキさんが、怒りすぎて口調と人格まで変わっています……?

「あー、腹立つ!! シワラちゃん! ここでは怒っていいんだよ!? 言いたいことがあったら全部ここで吐き出していけばいいから、ほら!!!」
「えっ、はい?」

他に言いたいことは?
うーん、えーと、なんだっけ。

「だ、大体のことはイブキさんが言ってくれたので大丈夫です……」

心の奥に抱えていたもやもやとしていたものは、イブキさんの怒りの勢いに押されてどこかへ飛んでいってしまったようだ。
あと、勢いに怯えた私の表情を見て冷静になったのか、イブキさんは「ふぅーっ」と一息ついて割りそうだったグラスを置いた。

「あ。そうだ。面白いものが最近手に入ったんだ。シワラちゃんに見せてあげる」
「面白いもの?」

怒りが収まったかと思ったら、急に悪戯っ子のような笑みを浮かべて、イブキさんはお湯を沸かすためのヤカンを取り出した。

「ここに取り出しましたのは、何の変哲もない空のヤカン」

お芝居みたいな動作と口調でイブキさんは私にヤカンの中身を見せる。
その通りに、ごく普通の何も入っていないヤカンだった。
何をするんだろう?

「これをコチラの台に置きまして……シワラちゃん、今から5つ数えてみて」
「えっと? いーち、にー、さん、しー、ご?」

言われた通りに数を数えると、ヤカンからはコポコポと湯が沸くような音と立ち上る湯気が……

「ええっ!? お湯が沸いた!??」

イブキさんが蓋を取って見せると、空っぽだったはずのヤカンにはたっぷりと沸騰したお湯が入っていた。
一体どこから???

「魔法も使えるんですか、イブキさん!?」
「使えないよ? 僕が持ってるスキルは『鑑定』だけ」
「じゃあどうして、こんなことが??」
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