放課後のコンビニ

アタヒト

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放課後のコンビニ

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 チャイムが鳴り、一斉に廊下が騒がしくなる。
「ねぇ、カラオケ行かない?」
「あ、ごめん。部活だわ~」
 そんな会話を横目に私は人を掻き分けて学校を出る。
 そういや、今日のシフトは松島君とだっけ。あーあ、最悪。あの人仕事遅いくせに遅刻までしてくるんだもん。もう実質、私一人のワンオペだよ~。
 そんな文句を心の中でブツブツ呟きながら私は今日もバイト先のコンビニへと向かう。
 かれこれもう一年になるのか。コンビニでのバイトもかなり慣れてきて、大抵のこと一人でこなせるようになってきた頃、新人として松島君が入ってきた。
「えーと、初めまして。今日から入りました松島です。えーと、よろしくお願いします」
 初めて会った彼は節目がちにそう挨拶をしてきた。
 その時から正直、使えなさそうだなぁとは思ってはいたけど、彼は私の想像を超えてきた。
 遅刻は当たり前で品出しを任せたら十中八九はサボってる。それのお客さんを怒らせたことなんて数え切れないくらいある。その度に私が代わりに謝ってる。
 店長に何度も文句を言っても人足りてないからクビにはできない。そのうち良くなるの一点張り。ふざけんなよ、クソジジイ‼︎ お前、そんなこと言いながら絶対に松島君のシフトの日を私に押し付けてきやがって!
 あーあ、憂鬱だ。とは言いながらもバイトをすっぽかす訳にはいかないので素直に店へと入る。
「お疲れ様です~」
「あ、栞ちゃんお疲れ様~」
 パートの佐藤さんがいつもと変わらない笑顔で出迎えてくれる。
「栞ちゃん、四時からだっけ?」
「そうですよ~松島君と!」
「あーそれは大変ね~。松島君今日もまだ来てないし」
「普通はこの時間くらいには来ていて欲しいですけどね~」
 そんな会話を佐藤さんとしながらシフトまでの時間をテキトーに潰す。
「あ、佐藤さん。四時なんで、もう私代わりますよ!」
「ありがとね、じゃあお疲れ様~」
「お疲れです~」
 さてと、やるか。
 レジに立ち、私は九時までのシフトを乗り切るために気合を入れる。ちなみに案の定、松島の野郎はまだ来ていない。けれどそんなことを気にしていても仕方がないので私は一人品出しを始める。
 いらっしゃいませ~。一点で二百円です。袋はご利用になりますか? はい、現金で。ありがとうございました~。と一通りレジ対応も終わり、一息吐いていた頃に例のあいつはやっと来た。
「お疲れ様ですー」
「いや、お疲れ様ですーじゃないよ! 遅刻だよ?」
「あ、えーと、ちょっと突然バスケ部のミーティングが入っちゃって」
「バイトなんだし断れば良いじゃん」
「それは無理ですよ。一応、自分レギュラーだし」
「はぁ~もういいから、品出しといてくれない?」
「はい! 分かりました!」
 無駄に元気だけはある返事をして彼はバックヤードへと駆けていく背中を私はどーせサボるくせにと思いながら見送る。
 彼の遅刻の言い訳はいつも同じ。バスケ。バスケ。バスケ。もう彼自身がバスケなんじゃないかと思うくらいにいつもバスケ。なんだか強豪校のレギュラーらしいけど、私からするとそんなの知ったこっちゃない! とにかく時間通りに来て、真面目に働いてくれればそれでいい。
「おらっ」
 背後から彼の頭をコツンと叩く。
「何するんですか⁉︎」
「ほら、スマホだしな」
「あはは~バレてましたか?」
 彼は観念したように私の手のひらへと自分のスマホを乗せてくる。
 やたらと品出しが遅いと思ったら、やっぱりこれだ。本当、油断も隙もない。
「ほら、さっさと品出しして」
 たかだか一つ下なだけでここまで手がかかるものなのか。流石に幼稚すぎない?とか思いながら私は持ち場であるレジへと戻る。
「いらっしゃいませ~」
「タバコ」
 武将髭を生やしたおじさんが私を睨みつけながら淡々と呟く。
「えーと、番号でお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「メビウス」
 うわー面倒なお客さんに当たっちゃったなー。
「あの~番号で・・・」
「メビウス‼︎」
 バンっ‼︎
 おじさんが机を思いっきり叩いて目を剥いて私を更に睨みつける。
「早く‼︎」
 私はその迫力にやられて何も言うことができず、ただ涙目になりながら固まってしまう。
「オォイ‼︎ 聞いてんのか⁉︎」
「あの~どうされましたお客様?」
 現れたのはまさかの松島君だった。
「こいつがメビウスださねぇんだよ‼︎」
「申し訳ございませんでした。こちらメビウスでございます」
「いくらだ?」
「580円でございます」
「おらよ!」
「ありがとうございました~」
 そう言いながらお辞儀をする松島君はおじさんが店を出たのを確認すると私に向けてピースサインをした。
「先輩、大丈夫でしたか? てかあの客うざすぎません?」
 そんなことを言いながら笑う松島君はなんだか私より強くて少しウザかった。なので私はバンっと松島君のお腹を叩いた。
「ありがと」
「どういたしまして。またなんかあったら遠慮なく呼んでくださいね!」
 遅刻したことやさっきまでサボったことを無かったかのように笑う彼はやっぱりウザかったのでもう一発叩いておいた。
 その後は、特に変なお客さんは来ず、また松島君のサボりが一回あっただけで比較的無事にシフトが終わった。
「お疲れ様です」
「お疲れ~」
 バックヤードの椅子で体を伸ばす私に松島君が話しかけてくる。
「あの~これどうぞ。遅刻のお詫びっていうか・・・」
 松島君が私の前に差し出してきたのはフルーツオレ。しかも私が一番好きなやつ」
「痛って。なんで叩くんすか?」
「なんかムカついた」
「何その理不尽なやつ。まあいいや、俺明日も部活の朝練あるんでお先に失礼します」
「うん、お疲れ~」
 松島君が出て行き、一人になる。
 あーあ、もう本当なんなの。ムカつく。遅刻でサボり野郎のくせに。
「四月の夜ってこんなに暑かったっけ?」
 バイト帰り、私は一人呟いた。
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