雨宿りは図書室で

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【第1章】三浦遥陽と植田美月

猫探偵

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「あ!それじゃあ」




バッグから何やら本を取り出す




「これなんかどうですか?」




先程見た本より随分薄い本を手渡される




「『あなたの猫、探します。猫探偵より』…?」





「ええ。いつも私が読んで笑ってしまうのはおそらくこの本だと思います。」



そう言ってから慌てて言葉を付け足す




「あ、ほら、先程何を読んでるか気になるっておっしゃってたので…」





「なるほど~!この本が例の本なんだ!…
猫を探す探偵の話?」




「そうですね。ただ…探偵も猫なんです」




「え!?なんかおもしろそう」




「ええ。ふとした所で思わず笑ってしまいます。時には…感動場面もあったり…と面白い作品で、短篇集なのでさくっと読めてしまいます。
なので読書初心者の方には向いているのかもしれませんね。」



確かに先程の本よりは遥かに手に取りやすそうだ




それに…おもしろそう!




「植田さん、俺それ読みたい!
…って、それまだ読んでる…よね。」




植田さんが持っているということはまだ彼女自身読み切っていないのだろう




「いえ、これを読むのは3度目ですので…大丈夫ですよ。ちょっと待ってくださいね」




カウンターへ向かおうとしていたが、踵を返す





「そういえば、三浦くんって読書カード作っていますか?」
   



「読書カード?って…、持ってないと借りられない感じ?」




「そうですね。」




「やばい。俺持ってない。」 





高校に入って早1年と2ヶ月。




本を借りるどころか





図書室に来たのだって初めてのことだった




「分かりました。じゃあ今日作ってしまいますね。」





そう言うとカードを取りだし、pcに何やら打ち込む





「えーっと…、三浦くんの下の名前ははるかなの『遥』と太陽の『陽』で『遥陽』くん…でしたよね」





「えっ、植田さん俺の下の名前まで覚えてくれてるの?」
 




すると彼女は慌てた素振りで





「クラスの方全員の名前覚えていますよ」と言う




意外だった。




クラスの誰とも話さずひとり本を読み耽る彼女が




クラスメイトの名前を覚えているなんて




「遥陽くん…いい名前ですね。三浦くんにピッタリです」





「えっ、そう?」





「はい。クラスを暖かく照らしてくれる三浦くんらしい名前です」





にこっとほほえみを浮かべる植田さん




「俺はさ……、まだ何人かクラスメイトの顔と名前が一致しないんだけど…植田さんの名前は言えるよ」






…ってこれじゃあまるで





「あ、違うんだ!
ストーカーとかじゃないよ。

ちょっと前の席で1番後ろの席だった時、ノートを集めている時に…」



「皆のノート集めて最後に1番前に座ってた植田さんのノート集めた時にね、ノートに書かれた字が綺麗で印象的だったんだ」




「私の字…ですか?」




きょとんとする植田さん





「うん。字がすごく綺麗で、名前覚えちゃったんだよね。植田美月さん、だよね」





「初めてフルネームで呼ばれました。私のことを知ってくれている方はいたんですね  」





「知ってるよ。俺の名前がピッタリって言ってくれたけど…、美月って名前、君にピッタリだと思うよ  」





「そうですか?」





「うん。上手く言えないけど…植田さんにピッタリだと思う! 」




「ふふ、嬉しいです。ありがとうございます」
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