雨宿りは図書室で

のぞむ

文字の大きさ
12 / 17
【第3章】深まる仲

朝の教室で、2人きり

しおりを挟む
………………………………………………………





外を出ると昨日一日雨だったのが嘘のような青空が広がっていた





ああ、早起きした日の朝は足取りも心無しか軽やかな気がするな






そう考えながら歩みを進める







水たまりを避けながら学校に到着すると野球部が朝練にいそしんでいる





サッカー部も負けていられないな、と考えながら昇降口に行くとなんと植田さんの姿があった






「おはよう!」






そう声をかけると植田さんはとても驚いた顔をした






「おはようございます…。早いですね」






「うん。なんだか目が覚めちゃってさ!俺も早起きデビューしちゃうかも」







「うふふ、仲間ですね」






「ほんとだね!
…って、植田さん毎日この時間に来てるの?まだ七時半だよ?」







「ええ。ちょっとしたいことがあって」







「したいこと?」








「はい。皆さんが来られる前に…」







そう言いながら教室に行くと全ての窓を開ける







じめっとした教室に心地よい風が吹く







「わ、風が気持ちいい」






「そうですね、朝一番の風はとてもいいですよね」








「もしかして…、これがしたいこと?」






「はい…教室に朝の風を入れる…といってもまだ二つばかりありますが」







そう言うと今度は黒板消しを手に取る






そしてとても丁寧に黒板を磨いていく






「俺も手伝うよ」




余ったもう一つの黒板消しで反対から磨いていく








「えっ、でも三浦くんの制服にチョークの粉がついてしまいますよ」






「それは植田さんも同じでしょ?
それに…、2人でやった方が早く終わるよ!」






ピースサインをキメる






「三浦くん、優しいですね」





植田さんはとても優しい笑顔でそう言った






「そうかな?」





「はい、そう思います」





「よーし!ぴかぴかにするぞ!」







「はい!」






2人で黒板を磨いていく






「おぁ…これは…」







磨き終わったあとの黒板を教室の後ろから眺める







適当に消しただけの黒板とは打って変わって
まるで境目のない美しい黒板ができあがった







「す、すごい…こんなにきれいになるとは…」





「うふふ、三浦君のおかげでいつもより早く終えることができました。ありがとうございます♪」






「ううん。お易い御用だよ!
…えーっと、あと二つってことは…残り一つかな?」






「はい」






そう言うと教室の隅っこにひとつぽつんと置かれた花瓶を持つ




そして廊下にある水道で花瓶の水を替える






「ふう、これで朝の習慣は終わりです。お疲れ様でした」






「お疲れ様!…って、朝の習慣…!?もしかして、これを毎朝やってるの?」






「はい。皆さんに知られると恥ずかしいので誰も来ないうちに…ですが」






「そうだったんだ…!知らなかった…!
いつもありがとう!」






すると植田さんは少し照れたような顔で






勝手にしていることですから、と呟いた





花瓶の水を入れ替え教室に帰る頃には教室全体の湿気が吹き飛んだような、そんな感じがした






「あのさ!俺昨日帰ってから早速『猫探偵』読んだんだ!」






「わあ!本当ですか?嬉しいです」






「うん!本当におもしろくてさ…!あっという間に読み終えちゃったよ」







「一日で、ですか?」







驚いたような顔でこちらを見る







「うん。俺活字を読む才能あるかも」







そう冗談を言うと楽しそうに笑ってくれた







「だからさ、続きも読みたいんだけど…図書室にあるかな?」






「はい。全四巻全て揃っていますよ」





「マジで!…俺、今日放課後借りに行くよ!」






「本当ですか?窓口でお待ちしていますね」





うん!と言おうとして言いよどむ







「どうしたんですか?」
 
  





「…いや、今日部活だったな、と思って」







「あぁ、三浦くんはサッカー部でしたっけ?」







「うん。ってよく知ってるね」






「教室でよくサッカーについて話しているのでそうかなと」







「おお…すごい洞察力…。まるで『猫探偵』だね。」





「ほんとですね」







二人して笑う







「部活は17時半までだけど…、植田さん、いる?」







「うーんと、そうですね…18時までなのでいることにはいますが…」







「着替えて急いで来たとして…、結構ギリギリかな」







「そうですね…」






心なしかしょんぼりとする





「分かった!大丈夫!俺絶対行くから!
カードにシール貼ってもらう!」






「はい…!」






お待ちしています、と微笑んだ






あ、そういえばさ、と昨日スマホで見た情報を話そうとしたが第三者の登場によって妨げられる
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...