雨宿りは図書室で

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【第3章】深まる仲

君は…

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………………………………………………………………………………






全力疾走した先にある図書室は幸いなことにまだ電気がついていた










ほんとギリギリになっちゃったな…そう思いながら扉を開けた先には見知らぬ大柄な男子生徒と楽しそうに話す植田さんの姿があった





…誰だろう








植田さんはまるで俺に気がつかないようだった







代わりに司書さんが、植田さんに「お客さんだよ」と言った









植田さんはその声で初めて俺に気がついたようだ









「わっ、三浦くん、本当に来てくれたんですね!」









 「うん、遅くなってごめんね」









 「いえ、嬉しいです!
三浦くんが来てくれると思って、続編をカウンターに用意していたんですよ」







「えっ、ほんと?」







「はい!」






そう言うとカウンターから『猫探偵2』と書かれた本を取り出した








「わ、ほんとだ!ありがとう!」









「いえいえ。あ、カードにシールを貼りますね」







「あ、そうだった!」







すぐ出せるように、とポケットに入れたままだったカードを取り出す








カードに猫のシールが一つ、貼られた








ベレー帽をかぶり、虫眼鏡を持った猫のシール。







まるで…これは…!








「…猫探偵みたいなシール!」









そう言うと植田さんはとても嬉しそうに微笑んだ








「あ、分かりますか?
猫探偵みたいだなって思ってこのシールにしたんです」









「うん!かわいい!ありがとう」








「喜んで頂けて嬉しいです!」





 そう言うと返却手続きと貸し出し手続きを続けてテキパキとこなす










その手際の良さを感心しながら見ていると大柄な男子生徒が植田さんに話しかけた










「この人が…みっちゃんが言っていた『三浦くん』?」







みみみみ、みっちゃん!?









驚く俺とは裏腹に植田さんは特に気にした様子も見せず








「そうだよ」






と言った







大柄な男子生徒はずいっと近づき俺の顔をジトーっと見つめる








「えっ、な、なに?」






あまりの近さにたじたじとする









それに気がついた植田さんがこら、と大柄な男子生徒をたしなめる










すると大柄な男子生徒はまるで忠実な犬のように俺から離れた







…なんだか、寂しそう








「えっと…、こっちはたかくん。私たちと同い年です。」







たたたたかくん!?








…2人はあだ名で呼び合う程親しい間柄なのかな







俺の疑問を感じとったのか否か植田さんは「たかくんとは幼なじみなんです」と言った







  



…そっか、幼なじみか。






だから親しげだったんだ、と少し安堵する








大柄な男子生徒、《たかくん》はまた俺をじとーっと見つめると







「北山たかし、よろしく」と手を差し出した








「お、俺は三浦遥陽。よろしく」と差し出された手を握り替えした






…が。







「いてて!」






なんて握力だ!







「三浦くん!?大丈夫ですか?!
…たかくん!力強く握ってない!?」







「…ごめん」







叱られた北山くんはしょんぼりとしながら力を緩めてくれた






…び、びっくりした









一連の流れを見ていた司書さんは「青春だねえ」と微笑んだ
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