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2章
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しおりを挟む最終日は皆朝からパーティの準備で大忙しだった。
私もハルト皇子から送られてきた赤いドレスに身を包んで鏡の前に立っていた。
やはりどう見ても悪女にしか見えないな。
最近は敢えて落ち着いた色味の服しか着ていなかったから余計に派手に見える。
それに靴が入りはするけれど少し窮屈だった。
ドレスと一緒に送られてきた靴なので大凡のサイズで作られたのだろう。
貴族の靴は全てオーダーメイドで、サイズを正確に測ってから作られる。
ぴったりの靴が送られるわけないとは分かっていたものの、これは長時間履けないなと思った。
すると着替えが終わったアイリが入ってきた。
「わあ!とっても綺麗ですね!」
『少し派手ではないでしょうか....?』
「最近のカリナ様に比べまれば派手ですけど、そういうのもお似合いですよ!」
『なんだか落ち着かなくて』
そわそわしていると、レイカが後ろから入ってきた。
「以前はもっと派手なドレスも着ていたのに変なカリナ様」
ふふっと笑い近づいてきた。
「最近のカリナ様はもっと自信を持ってください!以前と振り幅が凄くてみんなびっくりし過ぎているのですわ。」
『そうでしょうか...有力貴族のご令息やご令嬢には挨拶は済みましたし、もう隅の方で大人しくしてようと思いましたのにこれでは....』
「何を言うんですか!今日のパーティには国王と王妃様が来られるのですよ!隅の方でゆっくりなんてできません!」
『えっ、そうなのですか?それでは壁の花ではだめですね、一応皇子の婚約者ですし....』
「まさか知らなかったのですか?!まあきっと挨拶程度で帰られるでしょうけれど、頑張ってくださいね!」
本当に初耳だった。
ハルト皇子とも中央棟の前で会って以来話をしていないし、教えて貰えるはずもない。
大丈夫、挨拶を上手くやるだけでいいのだから。
冷や汗が滲んだ手を握りしめて自分を鼓舞した。
それから、アンにメイクも綺麗にしてもらってパーティの入場までの間、鏡に向かって大丈夫大丈夫と暗示を掛けていたらアンが
「カリナ様のいつも通りで良いのですよ。そのままで十分に作法も品も備わっているのですから。」
『私、ちゃんと出来ている?』
「もちろんです!むしろ何処で覚えてきたのかと思えるくらいです!」
『そう、よかった。なんだか出来る気がしてきた。』
「その意気です!交流会が終わったらまた学園と家との往復になると思いますので、存分にご友人方とも楽しんできてください!」
アンの言葉がとても心強く、背筋がピンと伸びた。
アイリとレイカはパートナーと待ち合わせをしていると先に出てしまったので、私は1人でゆっくり歩きながら会場へ向かった。
会場につく少し前の廊下の大きな柱に寄りかかる人影が見えた。
『御機嫌よう、ハルト皇子』
もたれかかって、気だるそうに腕を組んでいるだけで様になったハルト皇子だった。
「今日は両親も来るから、俺も貴方も1人で入場するわけにはいかない。」
『エスコートして下さるのですね。ありがとうございます。』
そのまま会場の方へ向きを変えたハルト皇子は、私が腕を組むスペースを開けて待っているようだった。
『失礼致します。』
と言って腕を取ると歩き出した。
私がカリナになってから、初めて皇子に触れてとても緊張して手が震えそうになった。
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