こちら!蟻の王国です!

秋葉夕雲

文字の大きさ
392 / 509
第五章

383 あなたは誰ですか

しおりを挟む
 ぷかぷかと浮かぶ土左衛門。
 この水路でさぞや凄惨な事件が起こったのだろう。一体犯人は誰なんだ!?
 オレでーす。
 あ、いやまあ厳密には西藍の自爆なんだけどな。自爆を誘発したのはオレだから未必の故意に当たるのかな?
 西藍は自分の電撃を自分で浴びて全員昏倒するどころか大爆発を起こしてしまった。
 多分だけど水素と一緒に酸素も保存してたんじゃないかなあ。水中でも発電できるように。
 それが反応してどっかーん。
 自爆ばっかしてボンバーマンかよ。
 ちなみに電撃を誤爆させるための手段は非常に単純。そこら辺からぱちった網をあらかじめ設置しただけだ。電気が網を伝って他の西藍に感電した。作戦とも呼べないようなちゃちな詐欺。
 相手に余裕があればこんなくだらない作戦はあっさりばれたけど、焦っている時はどんな奴でも冷静な判断なんかできないさ。
 逆を言えば、敵が冷静に判断していれば負けていた可能性さえある。

「たった十人でこれかよ……」
 数的優勢を維持しつつ、おそらく偵察か何かなので本格的な武装をしていないはずの兵隊にさえこのありさま。
 本気で武装した軍隊は一体どれくらい強いのか想像できない。しかも魔法を複数持っていることから、長距離テレパシーもできると考えた方がいい。今回の戦いのあらましは敵の本国にも伝わっているかもしれない。
 こう考えれば今回銃や爆弾を持っていなかったことはかえって幸いだ。敵に情報がばれなかったからな。

「さてそれでは解剖の結果を聞こうか」
 適当な働き蟻に命令して解剖させた。
 敵の体は爆発したり燃えたりとろくに残っていないけれど残骸を拾い集めてつぎはぎしながら解剖解剖。もうちょっと丁寧に殺せないもんかね? やったのオレだけどさ。
「複数の宝石が発見された」
「ほう? 魔物の体内にある宝石か?」
「そう」
 ふむ。魔法を使うために宝石は必須だろうとは思っている。具体的にどんな役割なのかは今でもよくわからないけど。
「さらにその宝石の付近に別の生物の細胞が確認された」
「あん? 顕微鏡で見たのか?」
「そう。植物の細胞もあったから判別は容易だった」
「……その細胞は生きたままだったのか?」
「うん」
「どのあたりにあった?」
「体中にあった。でも背中から頭にあったのが多かった」
 なるほど。
 西藍の魔法は魔法を複数使うのではなく、魔物の宝石と体を取り込んでその魔法を使えるようにする、一種のコピー能力か。
 ……チートやないかい!
 え、いや待って? どうやってんの?
 魔法関連はともかくとして……別の生物の細胞を維持するのって簡単じゃないぞ?
 例えば臓器移植を行えば必ず拒絶反応が出る。
 血の通った肉親でさえそれは無縁ではない。ましてや、全く別の生物でそんなことができるのか? 人間に犬の頭を引っ付けるようなもんだぞ?
 正真正銘のキメラ生物じゃないか。しかも人間でいえば背骨、あるいは脊椎の辺りにそんな細胞があるなんて異常すぎる。
 免疫が特殊なのか?
 そして何よりも……。

「あいつは一体何の生物だ?」
 同じような疑問は何度か感じたけれど、やはり正体がわからない。
 今まで大きさがちがったり、色々な生物が混じっていた魔物はいたけど、この世界の魔物は地球にもいた生物がほとんどだ。
 でもあんな奴は見たことがないし、生物を取り込む生物……そんな奴がいるのか……?
「……わかるころから考えるか。あの金属は何だった?」
 生物が何かという疑問はひとまず棚に上げ、次は謎の技術について考えよう。
「金属はマグネシウムでした」
「マグネシウム? 金属だからレールガンに使えるのか?」
 納得できることもある。この世界はどうにも金属が少ない。ただしマグネシウムは結構手に入れやすく、軽量で加工しやすいだろう。
 ただし加熱すると反応性が強く、水とも反応して燃焼する危険がある。もしかしてあいつらが熱に弱い理由の一つもそれだろうか。
 マグネシウムを操る魔法か。
 ふと思う。
 あいつらは一体どこまでマグネシウムを操れるのだろうか。
 単純な硬さだけでなく、耐熱性や電気伝導率まで操れる可能性はないだろうか。……ゼロとは言えない。
 例えばタングステンは金属として最高の耐熱性を持つ。それゆえに特定の工業分野で非常に重宝される。
 しかし、魔法によってそれらの性質を変化させられたなら? マグネシウムをタングステンのように扱えるかもしれない。
 それくらいできないときっとレールガンなんて作れない。

「ええと、それじゃああいつらは電気、マグネシウム操作、シールド……後は熱関連の魔法。最低でも四つ以上の魔法を同時に使ったのか?」
 でたらめだ。
 オレたちは魔法を手足のように使うことができる。本能的に大体使うことはできる。
 しかし奴らは他者から奪った魔法、つまり後天的に会得した魔法を使っている。強引にくっつけられた手足を複数同時に操れるようなものだ。
「精神的にもキメラだな」
 体に兵器を内蔵し、それらを魔法によって制御する。
 地球人類では絶対に不可能だ。体に機械を埋め込めば何らかの形で異常が出るはず。それらをノーリスクで平然と使用している。
 科学と、魔法と、魔物の融合。それが西藍の文明だ。
「くそ。本当に全然文明の発想が違う」
 文明が違うから、敵がどんな兵器を使うのか予想できない。これじゃまるでカンニングしようとしてヤマが外れた学生みたいだ。
 皮肉かもしれないけど今まではヒトモドキがこの辺りにいたから攻め込みにくかったのかもしれない。でも今ここはがら空き。
 好機とみて一気に侵攻してくる可能性もある。
「ハッタリでもいいから何とか防備があると見せかけるぞ」
 なんだってヒトモドキの尻拭いなんぞせにゃならんとは思うけど、このゴタゴタした状況で西藍に攻め込まれればどんな被害があるかわからない。
 何しろヒトモドキどもは来年のことなんぞ頭から抜け落ちているけど、こっちは十年先のことまで考えなくてはならない。
 はあ。めんどくさ。

「コッコー。ご報告が」
「はいはい何でござーましょーか」
 やばい。色々すんごい投げ捨てたくなってる。
「コッコー。ここからさらに西に軍勢が逗留した後がありました」
「西藍か?」
「コッコー。恐らく違います。少なく見ても一か月以上前です。そして、明らかに大型の魔物でした」
 この西の果ての大型の魔物。どうにも嫌な予感がするな。
 そして何よりも、その大型の魔物がどこに行ったのか。ヒトモドキ以外にもまだまだ敵はいる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...