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第五章
386 灰は灰に
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今まで一体どこにいたのか。
白と黒の巨大な獣に率いられた魔物の群れが津波のように押し寄せる。弓矢をものともせず、壁を砕き、木々を踏みにじり、大地を赤く染める。
「よく頑張ってくれてるけど……止まらんなこりゃ」
躊躇いの意志を感じさせずに犠牲を厭わずに進軍を続ける。一見ただの突撃に見えるけどこちらの準備が整う前に目的を完遂させるためにはこれがもっともよいのだろう。
事実、こちらは後手後手に回っている。防御よりも速度と攻撃力でのごり押しがここまでうっとうしいとは想像してなかった。
一番痛いのはミツオシエに上空を占拠されてしまっていることだ。こいつらのせいで空爆ができない。
本当に……オレたちがやられたらいやだと思っていることを的確にやってくる。人の嫌がることはすすんでしましょうってか。
でも、制空権がとられたからって攻撃できないわけじゃない。
「猫崩し、準備」
かつて鵺に致命傷を与えた大砲の改良版を準備させるが……。
「……? 霧……? いや、違う……探知が難しくなってる? ああ、くそ!? また探知能力メタかよ!」
煙、あるいは霧を発生させて視覚的に、かつ魔法的に姿を隠す魔法。
どうやらナメクジのような魔物からそれが放出されているようだ。ミツオシエはオレたちが何かを用意したのを見て、大砲というものの脅威を知らなくてもなにか危険なものであると予想したのだろう。
「何で初見殺しに対応できるんだよちくしょう!」
大砲というよりは飛び道具対策の一つだろうけど切り札を使うタイミングが良すぎだろ! どんな名軍師だ! つーかオレなら絶対にあたふたしてるうちに攻撃されてるぞ!
それでも霧の向こうの影に向けて弾を撃つ。
「弾着確認不可。敵、進軍継続」
だあもう! こいつら一体いつからオレたちの動向を見てやがった! 対策とりすぎなんだよ! とにかく後手後手に回ってる。
爆薬の保管庫付近にまでたどり着いたラーテルはその腕を振るわずに、配下たちに指示を出す。
やはり最悪の事態だ。壊すのではなく、奪おうとしている。
「……やむなし。奪われるくらいなら……ぶっ壊せ!」
その瞬間に何が起こったのかを正確に把握するのは不可能だっただろう。噴火のような爆発が施設とラーテルを吹き飛ばした。
巨体は傾ぎ、仰向けに寝転がる。間髪入れずにカッコウが火炎瓶を投げ込み、ラーテルは火だるまになり、大暴れした後、動かなくなった。
「ち、なかなかよくしつけられてるじゃないか」
あっさりと退却した敵軍に悔しそうな視線を向ける。
腰抜けだとか腑抜けなどと言う悪態をつく暇も与えない。目的を達成したのなら撤退するのが一番なのだ。それに……。
「このラーテル、小さいな」
こいつはまだ子供だ。はっきり言って鉄砲玉の捨て駒なのだろう。もちろん小さかったからこそ隠密行動ができたという見方もできるけど……。
「向こうも手段は択ばないってことか」
命を削ってでもこちらを殲滅するつもりか。……南側の戦闘は戦術的には勝利、戦略的には敗北だな。
「後始末を急ぐぞ。ここに保管してあったものはどうなった?」
ここを管理していた女王蟻に質問する。
「ほとんどが爆発で消失。一部は避難させてありますが、物品を運ぼうとしていた人員ががれきに埋まっています。こちらへの攻撃を受けて他から救援に来ていた人員です」
うぐぐ。こういう混乱も奇襲の効果だな。
「何とかして救出してくれ。具体的にはどの種族だ?」
探知が難しい種族だと捜索は難航する。確か災害に会ってから72時間以内がリミットだったか。
「カミキリスとネズミの混血です」
「あー、そっか。品種改良の実験場も近くにあったっけ」
「はい」
頑張って品種改良したのに無駄死にさせてしまったのか。どうにも盛り上がらんなあ。
その後も何とか救助活動を続けるものの、やはり成果は芳しくない。土に不純物が多いせいなのか、探知能力が発揮しにくいらしく、どうにも気の滅入る作業になってしまった。
「紫水。そろそろ北部軍と交戦に入る」
「わかった。ひとまずオレも指揮を手伝う」
南はもう放っておいてもいい。もちろん警戒は必要だろうけど、ラーテルを失ったのだから特筆すべき戦力はもうない。ほどほどに監視しておけばいい。もちろん、北部と合流しようとしないように注意するべきだけど。
「紫水。報告……が」
「ん? 何?」
「それが……その……」
蟻がこんなふうに言い淀むのは珍しい。よほどのことだろうか。
「カミキリスとネズミの混血、そして働き蟻の死体が発見された」
「ん……ああそうか」
予想されていた事態だ。残念だけど驚くことじゃない。
……ハズだった。
「ただし、その死体の付近で大量のアンモニアが発見されました」
……?
「……もう一回言ってくれ」
「大量のアンモニアが発見されました。明らかにそこに存在しないはずの量が」
ないはずのものがそこにある。それが意味することは一体何なのだろうか。
白と黒の巨大な獣に率いられた魔物の群れが津波のように押し寄せる。弓矢をものともせず、壁を砕き、木々を踏みにじり、大地を赤く染める。
「よく頑張ってくれてるけど……止まらんなこりゃ」
躊躇いの意志を感じさせずに犠牲を厭わずに進軍を続ける。一見ただの突撃に見えるけどこちらの準備が整う前に目的を完遂させるためにはこれがもっともよいのだろう。
事実、こちらは後手後手に回っている。防御よりも速度と攻撃力でのごり押しがここまでうっとうしいとは想像してなかった。
一番痛いのはミツオシエに上空を占拠されてしまっていることだ。こいつらのせいで空爆ができない。
本当に……オレたちがやられたらいやだと思っていることを的確にやってくる。人の嫌がることはすすんでしましょうってか。
でも、制空権がとられたからって攻撃できないわけじゃない。
「猫崩し、準備」
かつて鵺に致命傷を与えた大砲の改良版を準備させるが……。
「……? 霧……? いや、違う……探知が難しくなってる? ああ、くそ!? また探知能力メタかよ!」
煙、あるいは霧を発生させて視覚的に、かつ魔法的に姿を隠す魔法。
どうやらナメクジのような魔物からそれが放出されているようだ。ミツオシエはオレたちが何かを用意したのを見て、大砲というものの脅威を知らなくてもなにか危険なものであると予想したのだろう。
「何で初見殺しに対応できるんだよちくしょう!」
大砲というよりは飛び道具対策の一つだろうけど切り札を使うタイミングが良すぎだろ! どんな名軍師だ! つーかオレなら絶対にあたふたしてるうちに攻撃されてるぞ!
それでも霧の向こうの影に向けて弾を撃つ。
「弾着確認不可。敵、進軍継続」
だあもう! こいつら一体いつからオレたちの動向を見てやがった! 対策とりすぎなんだよ! とにかく後手後手に回ってる。
爆薬の保管庫付近にまでたどり着いたラーテルはその腕を振るわずに、配下たちに指示を出す。
やはり最悪の事態だ。壊すのではなく、奪おうとしている。
「……やむなし。奪われるくらいなら……ぶっ壊せ!」
その瞬間に何が起こったのかを正確に把握するのは不可能だっただろう。噴火のような爆発が施設とラーテルを吹き飛ばした。
巨体は傾ぎ、仰向けに寝転がる。間髪入れずにカッコウが火炎瓶を投げ込み、ラーテルは火だるまになり、大暴れした後、動かなくなった。
「ち、なかなかよくしつけられてるじゃないか」
あっさりと退却した敵軍に悔しそうな視線を向ける。
腰抜けだとか腑抜けなどと言う悪態をつく暇も与えない。目的を達成したのなら撤退するのが一番なのだ。それに……。
「このラーテル、小さいな」
こいつはまだ子供だ。はっきり言って鉄砲玉の捨て駒なのだろう。もちろん小さかったからこそ隠密行動ができたという見方もできるけど……。
「向こうも手段は択ばないってことか」
命を削ってでもこちらを殲滅するつもりか。……南側の戦闘は戦術的には勝利、戦略的には敗北だな。
「後始末を急ぐぞ。ここに保管してあったものはどうなった?」
ここを管理していた女王蟻に質問する。
「ほとんどが爆発で消失。一部は避難させてありますが、物品を運ぼうとしていた人員ががれきに埋まっています。こちらへの攻撃を受けて他から救援に来ていた人員です」
うぐぐ。こういう混乱も奇襲の効果だな。
「何とかして救出してくれ。具体的にはどの種族だ?」
探知が難しい種族だと捜索は難航する。確か災害に会ってから72時間以内がリミットだったか。
「カミキリスとネズミの混血です」
「あー、そっか。品種改良の実験場も近くにあったっけ」
「はい」
頑張って品種改良したのに無駄死にさせてしまったのか。どうにも盛り上がらんなあ。
その後も何とか救助活動を続けるものの、やはり成果は芳しくない。土に不純物が多いせいなのか、探知能力が発揮しにくいらしく、どうにも気の滅入る作業になってしまった。
「紫水。そろそろ北部軍と交戦に入る」
「わかった。ひとまずオレも指揮を手伝う」
南はもう放っておいてもいい。もちろん警戒は必要だろうけど、ラーテルを失ったのだから特筆すべき戦力はもうない。ほどほどに監視しておけばいい。もちろん、北部と合流しようとしないように注意するべきだけど。
「紫水。報告……が」
「ん? 何?」
「それが……その……」
蟻がこんなふうに言い淀むのは珍しい。よほどのことだろうか。
「カミキリスとネズミの混血、そして働き蟻の死体が発見された」
「ん……ああそうか」
予想されていた事態だ。残念だけど驚くことじゃない。
……ハズだった。
「ただし、その死体の付近で大量のアンモニアが発見されました」
……?
「……もう一回言ってくれ」
「大量のアンモニアが発見されました。明らかにそこに存在しないはずの量が」
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