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第二章
第43話 密かな事件
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居ずまいを正した草野はやはり、大人びているように見えた。表情の読めない葵でさえもそういう雰囲気を感じ取った。
「最近、サラブレッドの不審死が相次いでる」
「馬が大量に死んでるってこと?」
「まーそうだな。んで、お前らはレベルが上がる条件ってのは知ってるか?」
「ええっと、ギフテッドと戦うか、二親等以内の生き物を殺す……だったっけ」
「え、え、そ、そうなんですか?」
やはりここでも真子は知識の乏しさを露呈させていた。
「そーそーそーなんだよ。で、この戦いに関係のある殺しの場合、ギフテッドやオーナーが関与したっていう証拠が残らない」
「逆に言えば原因がよくわからない死に方、それなのに誰も話題にしない不審死が続けばそれはギフテッドの仕業の可能性があります」
「なるほど。未確認のギフテッドを突き止めたからそれを倒して来いってこと?」
「大体あってるけど、違う。あくまでもお前らの役目は調査。ギフテッドの所在を突き止めること。お前らじゃ勝てない。多分善側の生き残りだからな。俺が善側のトップだったころにサラブレッドのギフテッドと接触した奴がいて、協力するように交渉していたらしい。でもそいつが死んじまったから音信不通になってた。おそらくだが、サラブレッドのギフテッドは自分の親族を殺してる。自分の親族なら確実に経験値になるからな」
それを聞いて葵や真子は表情を曇らせた。人間の倫理的には親族を殺すというのは抵抗感が強い。さらに言えば他のギフテッドの犯行なら、その馬のギフテッドが何もしていないのも不自然だ。
あるいは馬のギフテッドが他のギフテッドに返り討ちに会った可能性もあるが、それも含めて調査ということなのだろう。
「ちなみに、善側は悪側の三倍くらい強いというのが定説です。もちろん戦闘向きであればの話ですが。戦闘向きと補助向きの役割分担がしっかりしていたというのも善側の強みの一つでしたから」
あまり知識のない真子のために五月は解説していた。
「う、うええええ!? あ、あたし善側に勝ったんですよね!?」
「相性だったり条件だったりで変わるからな。勝負に絶対はねえよ。とはいえ強いやつに真っ向からぶつかるわけにもいかねえ。だからお前らは調査。それから主力をぶつける」
「主力? 誰よ」
「ベア。んでから時間があけば河登」
「べ、ベアはともかく、河登って……?」
「特害対で一番強い人です。皆本さんも以前負けました」
「お前も、だろ? 五月」
「え、そうなの?」
これは葵にも初耳だった。
「こいつマジで運悪くてな。オーナーになって初戦でいきなり河登と戦う羽目になったんだってよ。当然負けたから俺といろいろ契約を結んだんだよ」
そういえば今まで特害対に入った経緯とか聞いたことがなかったなあ、と今更ながらに思い出した葵だった。
「ここまででなんか質問あるか?」
「ギフトの手がかりとかないの?」
「なーし。足で稼げ」
「古典的ねえ」
「それが神様のお望みなんだろうさ。んじゃ、今日最後の仕事だ」
「え、まだなんかあんの?」
「あるんだよ。俺のギフトで契約書を作る。俺が作れるのは一人三つまで」
「意外と制限きついのね」
ちなみに葵は特別獣害対策委員会に協力している間は危害を加えられないという契約と、五月と最後の一組になるまで協力するという契約を交わしている。
「五月とはもう作ってるから。葵と、えーと……」
「み、南野真子です」
「ああ、そう。真子。二人分で六枚か」
草野は机の中から六枚の何も書かれていない紙を取り出した。
「んじゃ、ギフテッドを出してくれ」
「ク、ククニ」
キャリーバッグから森に溶け込むような緑の蛇が姿を現した。なのだが。
「皆本さん? さつまは?」
葵はキャリーバッグの中身をにこにこと見ているだけだった。
「あの、皆本さん?」
「ちょっと。さつまが気持ちよさそうに寝てるからあんまり大きな声出さないでくれる?」
「寝てんのかよ」
「悪い? あんたの話が長すぎるせいよ」
ばちりと視線が交錯し、火花が散る。非常にしょうもない理由だった。
「あーはいはい。じゃあ寝たままでいいからこの紙に触れてくれ。そうじゃないといつまでたっても終わんねえー」
ち、と嫌そうに舌打ちしてから蝶をつまむように丁寧でゆっくりとさつまの手をキャリーバッグからわずかに出すと、草野が持ってきた契約書にぽんと手をついた。
すると部屋全体……正確には部屋の植物たちが一斉に光に包まれる。
光が収まると今度は契約書に光り輝くさつまの肉球スタンプが刻まれ、それを見た葵はにやにやとしたのだった。
「最近、サラブレッドの不審死が相次いでる」
「馬が大量に死んでるってこと?」
「まーそうだな。んで、お前らはレベルが上がる条件ってのは知ってるか?」
「ええっと、ギフテッドと戦うか、二親等以内の生き物を殺す……だったっけ」
「え、え、そ、そうなんですか?」
やはりここでも真子は知識の乏しさを露呈させていた。
「そーそーそーなんだよ。で、この戦いに関係のある殺しの場合、ギフテッドやオーナーが関与したっていう証拠が残らない」
「逆に言えば原因がよくわからない死に方、それなのに誰も話題にしない不審死が続けばそれはギフテッドの仕業の可能性があります」
「なるほど。未確認のギフテッドを突き止めたからそれを倒して来いってこと?」
「大体あってるけど、違う。あくまでもお前らの役目は調査。ギフテッドの所在を突き止めること。お前らじゃ勝てない。多分善側の生き残りだからな。俺が善側のトップだったころにサラブレッドのギフテッドと接触した奴がいて、協力するように交渉していたらしい。でもそいつが死んじまったから音信不通になってた。おそらくだが、サラブレッドのギフテッドは自分の親族を殺してる。自分の親族なら確実に経験値になるからな」
それを聞いて葵や真子は表情を曇らせた。人間の倫理的には親族を殺すというのは抵抗感が強い。さらに言えば他のギフテッドの犯行なら、その馬のギフテッドが何もしていないのも不自然だ。
あるいは馬のギフテッドが他のギフテッドに返り討ちに会った可能性もあるが、それも含めて調査ということなのだろう。
「ちなみに、善側は悪側の三倍くらい強いというのが定説です。もちろん戦闘向きであればの話ですが。戦闘向きと補助向きの役割分担がしっかりしていたというのも善側の強みの一つでしたから」
あまり知識のない真子のために五月は解説していた。
「う、うええええ!? あ、あたし善側に勝ったんですよね!?」
「相性だったり条件だったりで変わるからな。勝負に絶対はねえよ。とはいえ強いやつに真っ向からぶつかるわけにもいかねえ。だからお前らは調査。それから主力をぶつける」
「主力? 誰よ」
「ベア。んでから時間があけば河登」
「べ、ベアはともかく、河登って……?」
「特害対で一番強い人です。皆本さんも以前負けました」
「お前も、だろ? 五月」
「え、そうなの?」
これは葵にも初耳だった。
「こいつマジで運悪くてな。オーナーになって初戦でいきなり河登と戦う羽目になったんだってよ。当然負けたから俺といろいろ契約を結んだんだよ」
そういえば今まで特害対に入った経緯とか聞いたことがなかったなあ、と今更ながらに思い出した葵だった。
「ここまででなんか質問あるか?」
「ギフトの手がかりとかないの?」
「なーし。足で稼げ」
「古典的ねえ」
「それが神様のお望みなんだろうさ。んじゃ、今日最後の仕事だ」
「え、まだなんかあんの?」
「あるんだよ。俺のギフトで契約書を作る。俺が作れるのは一人三つまで」
「意外と制限きついのね」
ちなみに葵は特別獣害対策委員会に協力している間は危害を加えられないという契約と、五月と最後の一組になるまで協力するという契約を交わしている。
「五月とはもう作ってるから。葵と、えーと……」
「み、南野真子です」
「ああ、そう。真子。二人分で六枚か」
草野は机の中から六枚の何も書かれていない紙を取り出した。
「んじゃ、ギフテッドを出してくれ」
「ク、ククニ」
キャリーバッグから森に溶け込むような緑の蛇が姿を現した。なのだが。
「皆本さん? さつまは?」
葵はキャリーバッグの中身をにこにこと見ているだけだった。
「あの、皆本さん?」
「ちょっと。さつまが気持ちよさそうに寝てるからあんまり大きな声出さないでくれる?」
「寝てんのかよ」
「悪い? あんたの話が長すぎるせいよ」
ばちりと視線が交錯し、火花が散る。非常にしょうもない理由だった。
「あーはいはい。じゃあ寝たままでいいからこの紙に触れてくれ。そうじゃないといつまでたっても終わんねえー」
ち、と嫌そうに舌打ちしてから蝶をつまむように丁寧でゆっくりとさつまの手をキャリーバッグからわずかに出すと、草野が持ってきた契約書にぽんと手をついた。
すると部屋全体……正確には部屋の植物たちが一斉に光に包まれる。
光が収まると今度は契約書に光り輝くさつまの肉球スタンプが刻まれ、それを見た葵はにやにやとしたのだった。
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