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第三章
第9話 神の歴史
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自信満々に言い切った葵の言葉に真子と五月は首を捻った。
「葵さん? あの、それは解説になっていないのでは?」
「え、えっと、もうちょっとちゃんと説明して……」
「神の御心を知るのは困難ね!」
「「……」」
高らかに、ミュージカルの歌手のように宣言する葵に言葉もない。
「じゃ、次の解説。次は辞書的に解説すると、神と子と聖霊。これらは異なるペルソナでありながら同一の存在であるとされるわね」
「……え、えっと、言い方が違うだけでみんな同じってことですか……?」
「最初からそう解説してくれませんか?」
「二人の言いたいことはわかるわよ。でももしも神学の授業でこの回答をしたら多分怒られるわね。宗教学なら正解かもしれないけど」
「そ、その二つって違うんですか?」
「良い質問をしてくれたわね。神学は神様を信じる人のための学問。宗教学は神様を信じるのをやめた人の学問よ。そしてここからは三位一体の宗教学的解説。当たり前だけど一神教は神様が一つしかないの」
「それは当然では?」
「ええそうなの。でも救世教において救世主は神と同じかそれ以上の信仰を得てしまった。つまり、救世主も神に近い何かじゃないとだめだったの。そこで登場するのが三位一体という概念。神は一つという矛盾を解消するために生まれたの」
「な、なんか後付けで出てきた矛盾を誤魔化すために作られた設定みたい……」
「ええ。真子の言う通りよ。三位一体っていうのは初めから矛盾してるの。だからちゃんと説明できちゃうと困るのよ。だからよく三位一体を理解している人ほどお茶を濁すってわけ」
「だから理解してはいけないもの。そういうわけですか」
「そ。預言教や唯民教と大真面目に教義を突き合わせた場合、絶対にこの三位一体が障害になる。だって、救世教以外は救世主を神だと認めるわけにはいかないんだもの。っていうかさ、五月……」
「なんでしょうか」
「あんた外国育ちだったのよね。むしろ外国なら宗教に関してきちんと学ぶはずじゃない?」
「それは教育方針の影響ですね。特定の宗教を信じてしまうと引っ越しした時に不都合が生じるかもしれないという懸念があったようです」
「……いろいろ教育方針があるのねえ」
「話を戻しますが……何故これがギフトのヒントとして現れたのでしょうか」
「普通に考えれば救世教関連のギフトってことなんでしょうけど……もしかしたら、ギフト自体が何らかの矛盾、あるいはねじれがあるのかもしれないわね」
「む、矛盾? ねじれ?」
「例えばなんだけど救世教の悪魔の中にはもともと土着の神話の神をむりやり悪魔に貶めたものもあるし……そういう何か傷のあるギフトなんじゃないかしら……」
葵が推測を口にすると、じりりりり、と目覚まし時計が鳴るような音が聞こえた。
すると先ほどデッシーが映し出されていた窓に地図が表示された。
「ん……これ、近くの地図ね。マークがついてるとこに行けばいいのかしら。って、日向山じゃない」
「や、山登りするんですか?」
「そんなたいしたもんじゃないわよ。ちょっとした散歩のつもりで登れる山よ。駅に近いし、電車で行くのがいいかしら」
「相手にペースを握られているのはまずいですが、相手のギフトの情報も入手できるのなら、マイナスだけではありません。もう少し動きやすい服装に着替えましょうか」
てきぱきと準備を進める二人を見習い、真子も慌てないように準備を進めるのだった。
「葵さん? あの、それは解説になっていないのでは?」
「え、えっと、もうちょっとちゃんと説明して……」
「神の御心を知るのは困難ね!」
「「……」」
高らかに、ミュージカルの歌手のように宣言する葵に言葉もない。
「じゃ、次の解説。次は辞書的に解説すると、神と子と聖霊。これらは異なるペルソナでありながら同一の存在であるとされるわね」
「……え、えっと、言い方が違うだけでみんな同じってことですか……?」
「最初からそう解説してくれませんか?」
「二人の言いたいことはわかるわよ。でももしも神学の授業でこの回答をしたら多分怒られるわね。宗教学なら正解かもしれないけど」
「そ、その二つって違うんですか?」
「良い質問をしてくれたわね。神学は神様を信じる人のための学問。宗教学は神様を信じるのをやめた人の学問よ。そしてここからは三位一体の宗教学的解説。当たり前だけど一神教は神様が一つしかないの」
「それは当然では?」
「ええそうなの。でも救世教において救世主は神と同じかそれ以上の信仰を得てしまった。つまり、救世主も神に近い何かじゃないとだめだったの。そこで登場するのが三位一体という概念。神は一つという矛盾を解消するために生まれたの」
「な、なんか後付けで出てきた矛盾を誤魔化すために作られた設定みたい……」
「ええ。真子の言う通りよ。三位一体っていうのは初めから矛盾してるの。だからちゃんと説明できちゃうと困るのよ。だからよく三位一体を理解している人ほどお茶を濁すってわけ」
「だから理解してはいけないもの。そういうわけですか」
「そ。預言教や唯民教と大真面目に教義を突き合わせた場合、絶対にこの三位一体が障害になる。だって、救世教以外は救世主を神だと認めるわけにはいかないんだもの。っていうかさ、五月……」
「なんでしょうか」
「あんた外国育ちだったのよね。むしろ外国なら宗教に関してきちんと学ぶはずじゃない?」
「それは教育方針の影響ですね。特定の宗教を信じてしまうと引っ越しした時に不都合が生じるかもしれないという懸念があったようです」
「……いろいろ教育方針があるのねえ」
「話を戻しますが……何故これがギフトのヒントとして現れたのでしょうか」
「普通に考えれば救世教関連のギフトってことなんでしょうけど……もしかしたら、ギフト自体が何らかの矛盾、あるいはねじれがあるのかもしれないわね」
「む、矛盾? ねじれ?」
「例えばなんだけど救世教の悪魔の中にはもともと土着の神話の神をむりやり悪魔に貶めたものもあるし……そういう何か傷のあるギフトなんじゃないかしら……」
葵が推測を口にすると、じりりりり、と目覚まし時計が鳴るような音が聞こえた。
すると先ほどデッシーが映し出されていた窓に地図が表示された。
「ん……これ、近くの地図ね。マークがついてるとこに行けばいいのかしら。って、日向山じゃない」
「や、山登りするんですか?」
「そんなたいしたもんじゃないわよ。ちょっとした散歩のつもりで登れる山よ。駅に近いし、電車で行くのがいいかしら」
「相手にペースを握られているのはまずいですが、相手のギフトの情報も入手できるのなら、マイナスだけではありません。もう少し動きやすい服装に着替えましょうか」
てきぱきと準備を進める二人を見習い、真子も慌てないように準備を進めるのだった。
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