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第一章
第10話 善の神と悪の神
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五月が差し出した紙にはおおむねさっき五月が言っていたようなことが書かれていた。文書を読みながら尋ねる。
「口じゃ無理だから紙ってこと? それとも、ただの紙じゃないの?」
「ええ。それは契約のギフトによって造られた文書です。特別獣害対策委員会……長いので特害対の委員長のギフテッドの力だそうです」
特別獣害対策委員会。
私のさつまを害獣呼ばわりするのは不愉快極まりないが、規模の大きそうな組織に喧嘩を売れるほど理性が蒸発してはいない。
「あなたも昨日目撃した通り、私たちの戦いは記録に残りませんし、写真などにも写りません。社会的な透明人間ともいえます」
「だから規律を保つには超常の力がいるってことね。あんたや河登さんもそこに所属してるの?」
「そうなりますね。ついでに私からこの戦いについて、何故始まってどうすれば終わるのか説明します。あなたの猫、さつまでしたっけ。あの子はしゃべれないので何も知らないのでしょう?」
少し考える。私が今一番足りないものは情報だ。問題なのはどのくらいこいつが信用できるかだ。それを五月に読まれたらしい。
「信用できないというのなら……ラプラス」
五月がスマホを取り出し、ソファに置くと例の名前を読んだ。すると昨日見た奇妙奇天烈な自称悪魔が画面から立体映像のように飛び出た。
『なんだどうした小娘ども』
「これ、昨日と同じやつなの?」
「ええ。いつどこで誰が呼び出してもラプラスはこんな感じです。どうも、すべて同一人物のようですね。人ではありませんが」
こいつが一番わけわからない存在だな、と一人で愚痴を言いたくなった。
「ラプラス。私が何か嘘をついていれば指摘してください」
『めんどくせえなあ。まあ、いいけどよ』
一応中立を名乗っているラプラスが話に加わるのなら信用は増すはずだ。
「いいわ。とりあえず話を聞くわ」
「では、始めましょうか」
そうして五月はこの戦い……善の神と悪の神の戦いの始まりを語り始めた。
ある時、悪の神が呟いた。
「人間ほろぼそっかなー」
それに反対したのは善の神だ。
「何を言っている。そんなことをしていいわけがないだろう」
「いやでも、あいつらうっとうしくない?」
「そんなことはない。人間にも良い者はいる」
「でもよう。あいつら動物とか絶滅させまくってるじゃん」
「だが動物を愛する人間も多い」
「そこまで言うなら試そうぜ?」
「試す? どうやって?」
「戦わせるのさ。俺たちが選んだ動物と人間、一匹と一人でコンビを組ませて戦わせる」
「どちらの陣営が生き残るか勝負というわけか。いいだろう」
こうして善の神と悪の神の戦いの幕が上がった。
さて、悪というものがなんであるかの議論は永遠に終わることのないだろうが、悪の神は悪そのものである。
もう一度言おう。悪そのものであるということは絶対に悪を成すということである。
それを踏まえて悪の神がこの戦いを始めてすぐの発言を聞いてほしい。
「あー、めんどくせ。適当でいいか」
あろうことか悪の神は自分の大仕事をほっぽりだしたのである。
自分の存在理由を無視したというべきか、それとも怠惰が悪であるというのならば、自らの本性に従ったというべきか。
いずれにせよ、正義が勝つという言葉は正しいのだ。実力が同じくらいなら真面目な方が強いに決まっている。
人類諸君の皆。安心するとよい。悪は必ず滅びるのだ。
そのはずだった。
「口じゃ無理だから紙ってこと? それとも、ただの紙じゃないの?」
「ええ。それは契約のギフトによって造られた文書です。特別獣害対策委員会……長いので特害対の委員長のギフテッドの力だそうです」
特別獣害対策委員会。
私のさつまを害獣呼ばわりするのは不愉快極まりないが、規模の大きそうな組織に喧嘩を売れるほど理性が蒸発してはいない。
「あなたも昨日目撃した通り、私たちの戦いは記録に残りませんし、写真などにも写りません。社会的な透明人間ともいえます」
「だから規律を保つには超常の力がいるってことね。あんたや河登さんもそこに所属してるの?」
「そうなりますね。ついでに私からこの戦いについて、何故始まってどうすれば終わるのか説明します。あなたの猫、さつまでしたっけ。あの子はしゃべれないので何も知らないのでしょう?」
少し考える。私が今一番足りないものは情報だ。問題なのはどのくらいこいつが信用できるかだ。それを五月に読まれたらしい。
「信用できないというのなら……ラプラス」
五月がスマホを取り出し、ソファに置くと例の名前を読んだ。すると昨日見た奇妙奇天烈な自称悪魔が画面から立体映像のように飛び出た。
『なんだどうした小娘ども』
「これ、昨日と同じやつなの?」
「ええ。いつどこで誰が呼び出してもラプラスはこんな感じです。どうも、すべて同一人物のようですね。人ではありませんが」
こいつが一番わけわからない存在だな、と一人で愚痴を言いたくなった。
「ラプラス。私が何か嘘をついていれば指摘してください」
『めんどくせえなあ。まあ、いいけどよ』
一応中立を名乗っているラプラスが話に加わるのなら信用は増すはずだ。
「いいわ。とりあえず話を聞くわ」
「では、始めましょうか」
そうして五月はこの戦い……善の神と悪の神の戦いの始まりを語り始めた。
ある時、悪の神が呟いた。
「人間ほろぼそっかなー」
それに反対したのは善の神だ。
「何を言っている。そんなことをしていいわけがないだろう」
「いやでも、あいつらうっとうしくない?」
「そんなことはない。人間にも良い者はいる」
「でもよう。あいつら動物とか絶滅させまくってるじゃん」
「だが動物を愛する人間も多い」
「そこまで言うなら試そうぜ?」
「試す? どうやって?」
「戦わせるのさ。俺たちが選んだ動物と人間、一匹と一人でコンビを組ませて戦わせる」
「どちらの陣営が生き残るか勝負というわけか。いいだろう」
こうして善の神と悪の神の戦いの幕が上がった。
さて、悪というものがなんであるかの議論は永遠に終わることのないだろうが、悪の神は悪そのものである。
もう一度言おう。悪そのものであるということは絶対に悪を成すということである。
それを踏まえて悪の神がこの戦いを始めてすぐの発言を聞いてほしい。
「あー、めんどくせ。適当でいいか」
あろうことか悪の神は自分の大仕事をほっぽりだしたのである。
自分の存在理由を無視したというべきか、それとも怠惰が悪であるというのならば、自らの本性に従ったというべきか。
いずれにせよ、正義が勝つという言葉は正しいのだ。実力が同じくらいなら真面目な方が強いに決まっている。
人類諸君の皆。安心するとよい。悪は必ず滅びるのだ。
そのはずだった。
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