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第一章
第29話 激しい光
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時が止まったかのように、すべての戦闘行為が収まった。それと共に葵とさつま、そしてアポロを蝕んでいた体温の上昇も停止した。
『ぎゃはははは! お楽しみの時間だぜえ?』
スマホではなく、台所に置かれていた小さなテレビにラプラスの顔が映り、声が聞こえた。
「でたな自称悪魔」
『うっせえよクソガキ。てめえはしっかり解説しろよ?』
「上等。なんかボーナスくれんのよね?」
『ああいいぜ。三流の脚本家の腕前を見せてくれ』
お互いに悪態をつく。どうやら調子が戻ってきたみたいだ。
「さて。覚悟はよろしいですか。女王様?」
『構いませんわよ。どうぞ、わたくしに語ってみせなさい』
尊大な態度だ。上等。地に這わせてやる。私はともかく、さつまを一時でも弱らせたことは万死に値する。
「まず最初のアクションで私がもらった情報。これはあんたのギフトの弱点が炎だってこと」
「炎ですか? ですが……彼女のギフトは熱に関わるものです。炎はむしろ武器であるはずですが……」
「そうね。だから逆なのよ。燃やされたからこそ、神として存在する」
「殺害された凶器が自身の武器になる……いえ、それはむしろ適切かもしれません。ミツバチは熱殺蜂球を行うと、運が良ければ復帰しますが、悪ければ死亡します」
「あらそうなの? それならますます間違いないわね」
炎で死亡した神と、死することを厭わず熱を武器にすることで敵に立ち向かう蜂。
似ているわけではないが、通じ合うものがあるのかもしれない。
「で、最初のスキルがこっちを封じ込めるスキル。これ単体だと解釈が難しいのよね」
「そうですね。閉じ込める、封じ込める。そのような能力は相手を邪魔する。封印する。建物を造る、などさまざまな神話から採用されるようです」
『……』
グレイスは二人が自らのギフトを解き明かす様子を沈黙したまま見守っている。
自らの体にメスを入れ、解体されるような不快さを感じていたが、それを口に出すことは彼女の矜持が許さなかった。
「次に使ったのは花のスキルよね。まあ、蜂に関わる神ならほぼ間違いなく花ともかかわるでしょうからこっちはあまり重要じゃないわ。むしろその効果。あれ、気絶とか気を逸らすとかより、花に見入ってしまう。そんな感じじゃないかしら。それを踏まえてあなたのギフトを考察すると……スキルには精神に関わるものが多いのよね」
「言われてみれば最初の閉じ込めも物理的ではなく精神的に進めなくなる雰囲気でしたね」
「そう。だから女王蜂のギフトは熱に関わる部分を除けば、心に関する神様。さらに妻が愛の神であることも考えれば、夫であるギフトも対となる愛の神でもおかしくないわ」
もう真実は目と鼻の先にある。全員がそれを感じ取っている。
「この場合愛の解釈が重要ね。一神教における愛ならともかく、多神教……どちらかというと東アジアよりの発想だと愛は欲望につながるのよ。だからこのギフトは欲望の神でもあるはず」
「アジアなら……仏教ですか?」
「私の予想だと違うわ。仏教よりも古い多神教があるの。インドにね」
一瞬、ほんの一瞬だけごとりと何かが動く音がした。おそらくは松本が動揺したために何かに触れてしまったのだろう。
「それはバラモン教。そしてそれの発展形であるヒンドゥー教。その中で創造神ブラフマーの息子とされ、シヴァにその身を焼かれ、ミツバチの弓を持ち、愛と欲望を司るその神の名前は……カーマデーヴァ!」
突然、屋外に面するすりガラスから目がつぶれるほどの光があふれる。
その光はミツバチたちを照らす……否、焼き尽くすような激しさで部屋を満たした。
『ぎゃはははは! お楽しみの時間だぜえ?』
スマホではなく、台所に置かれていた小さなテレビにラプラスの顔が映り、声が聞こえた。
「でたな自称悪魔」
『うっせえよクソガキ。てめえはしっかり解説しろよ?』
「上等。なんかボーナスくれんのよね?」
『ああいいぜ。三流の脚本家の腕前を見せてくれ』
お互いに悪態をつく。どうやら調子が戻ってきたみたいだ。
「さて。覚悟はよろしいですか。女王様?」
『構いませんわよ。どうぞ、わたくしに語ってみせなさい』
尊大な態度だ。上等。地に這わせてやる。私はともかく、さつまを一時でも弱らせたことは万死に値する。
「まず最初のアクションで私がもらった情報。これはあんたのギフトの弱点が炎だってこと」
「炎ですか? ですが……彼女のギフトは熱に関わるものです。炎はむしろ武器であるはずですが……」
「そうね。だから逆なのよ。燃やされたからこそ、神として存在する」
「殺害された凶器が自身の武器になる……いえ、それはむしろ適切かもしれません。ミツバチは熱殺蜂球を行うと、運が良ければ復帰しますが、悪ければ死亡します」
「あらそうなの? それならますます間違いないわね」
炎で死亡した神と、死することを厭わず熱を武器にすることで敵に立ち向かう蜂。
似ているわけではないが、通じ合うものがあるのかもしれない。
「で、最初のスキルがこっちを封じ込めるスキル。これ単体だと解釈が難しいのよね」
「そうですね。閉じ込める、封じ込める。そのような能力は相手を邪魔する。封印する。建物を造る、などさまざまな神話から採用されるようです」
『……』
グレイスは二人が自らのギフトを解き明かす様子を沈黙したまま見守っている。
自らの体にメスを入れ、解体されるような不快さを感じていたが、それを口に出すことは彼女の矜持が許さなかった。
「次に使ったのは花のスキルよね。まあ、蜂に関わる神ならほぼ間違いなく花ともかかわるでしょうからこっちはあまり重要じゃないわ。むしろその効果。あれ、気絶とか気を逸らすとかより、花に見入ってしまう。そんな感じじゃないかしら。それを踏まえてあなたのギフトを考察すると……スキルには精神に関わるものが多いのよね」
「言われてみれば最初の閉じ込めも物理的ではなく精神的に進めなくなる雰囲気でしたね」
「そう。だから女王蜂のギフトは熱に関わる部分を除けば、心に関する神様。さらに妻が愛の神であることも考えれば、夫であるギフトも対となる愛の神でもおかしくないわ」
もう真実は目と鼻の先にある。全員がそれを感じ取っている。
「この場合愛の解釈が重要ね。一神教における愛ならともかく、多神教……どちらかというと東アジアよりの発想だと愛は欲望につながるのよ。だからこのギフトは欲望の神でもあるはず」
「アジアなら……仏教ですか?」
「私の予想だと違うわ。仏教よりも古い多神教があるの。インドにね」
一瞬、ほんの一瞬だけごとりと何かが動く音がした。おそらくは松本が動揺したために何かに触れてしまったのだろう。
「それはバラモン教。そしてそれの発展形であるヒンドゥー教。その中で創造神ブラフマーの息子とされ、シヴァにその身を焼かれ、ミツバチの弓を持ち、愛と欲望を司るその神の名前は……カーマデーヴァ!」
突然、屋外に面するすりガラスから目がつぶれるほどの光があふれる。
その光はミツバチたちを照らす……否、焼き尽くすような激しさで部屋を満たした。
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