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33医務室

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学園に着くと、すでに卒業式は始まっていて、外には誰もいない。
それなら、ゆっくり歩いても迷惑にはならないなと思っていると、再びシルベルト様が背後にいた。私の膝裏に腕が当たり、一瞬で抱えられてしまった。

な、なんで?
嘘でしょう!頭も身体も追いつかない。
ここ、学園内だから!
誰かに見られたら、何を言われるか考えたくもない…

「や、やめて下さい!私自分で歩けますから!今は、人もいませんし、迷惑をかけないで歩けますから!だから降ろして」
と言えば、

「しかし、痛むだろう?それに足も引きずっていたぐらいだ、時間が経った今、更に腫れた可能性もある…」

さっきまで無言だったシルベルト様から親切な言葉だけど、眉間に皺寄せて話されても。そんな顔されても困ります。
だって、あなたとても目立つ人だから、今後を考えると、余計なお世話なんですよ!

と言えない…

親切心はわかる、
それでも!
お姫様抱っこは駄目よ、また噂ネタにされるし、どこで敵を作るかわからないわ…
「お願いです!シルベルト様、おやめください」

と言っても構わず歩き出された。
嘘でしょ、全然話聞かないんだけど、この人!

「どうしました?」
と警備員の服が見えた。近寄ってきた人を見ると、あの髪色に体格、クランさんだ…

「あれ…ティアラさん?どうしました?体調が悪いのですか?」

どうしよう…
なんて答えたらいいの?心配されている…降ろして欲しいのに、私の言葉無視しているし、
「ティアラさん?」

「失礼、彼女は怪我をしまして、すぐに医務室に連れて行きたいのですが、何か警備に問題でもありましたか?」

何、なんなのこの人!めちゃくちゃ言い方にツンケンとした棘を感じる…

感じ悪い…

クランさんは親切に心配してくれているだけなのに、そんな威圧的に高位貴族ぽさを出さないで欲しいわ。

「クランさん、ご心配をおかけしてすみません。登校中にトラブルに巻き込まれて…少し足を捻ってしまいました」
と言えば、長い前髪で顔の半分は見えないのに、なんとなく心配してくれていることはわかった。

「そうですか、では、私が引き継ぎましょう。生徒会メンバーの皆様は、朝からお忙しそうにしておりましたよ。何度もログワット様がこちらに様子を見に来て、シルベルト様を探されていたようですしね。早く会場に行った方がよろしいのではないですか?」
とクランさんは言って、手を前に私のスカートに指が触れた…
その瞬間、私の視線が横にぐるっと動いて、
「結構です、医務室に行き事情を話さなければなりませんし、その後、会場には行きます。手配は終えてますのでご心配頂かなくても結構です、では失礼します」
シルベルト様はそう言ってズンズン歩き始めている。
何故か怒っている?
とてもイライラしている雰囲気を纏った、たったあの一瞬のやり取りで。意味がわからない。
表情は、まだ眉間の皺が保たれたままで…
怖い。

クランさんにも申し訳ない気持ちになったけど、シルベルト様が、歩き始めた事と背の位置にクランさんでチラッとしか見えなかった。

「校舎に入りましたし、もう大丈夫ですよ。ありがとうございました」
と言えば、
「怪我をしているのだから…」
とやはり私をおろしてくれない。
「いえ、誰に見られるかわかりませんから!トラブルの方が」
「大丈夫、今は卒業式。生徒も先生方もいないよ」

そうじゃなくて…万が一もあるし、恥ずかしいのよ、この抱えられ方が!
何故こんなにも人の話を聞かないのよ。

お互い無言のまま医務室につき、その姿を見た先生は頬を赤らめた…

やめて~!!
もう、そうなるから。
その意味深な顔は…とてもじゃないけど見たくない…噂の餌食になる未来しか見えない。

「どうしました?」
先生らしく聞いてくれた。
「は、」
話そうとすれば、また先にシルベルト様が、
「失礼、こちらに降ろしてよろしいでしょうか?」

「はいどうぞ、シルベルトさん」
とベッドに指示され置かれた。

その様子を見た先生は、ますます頬だけでなく顔全体を染める。変な誤解はしないで欲しい。
それは躊躇なくこの人は、私を降ろしてすぐに片膝をつき私の外履きの靴を外したから…

何これ!あなたは、私の従者でもないし…私は姫様でもない、なのに大切にされている感が満載で悪い気もしない。気づけば私も顔に熱を灯す。
「やめて、ください。汚いです…」
羞恥があって声が小さくなった。

それを真剣な顔をしてから、急に何かに気づいたらしく慌て、
「あぁ~、君の足は汚いわけないだろう!そうか、悪かったね。黒タイツの上から手が当たってしまった。聞くよりも勝手に行動してしまい、申し訳ない…」
と言いながら首まで赤面するのは無しよ…言っていることと行動が意味不明ですが!!赤くなるぐらいならお姫様抱っこなんかしないで~!!


「で、どうしたの?二人の世界に入らないで事情を説明して下さい。後、クラス名前を教えて」
と言われ、やっとこの何とも言えない羞恥空間から地上に戻ってこれた。

事情を説明するシルベルト様…
何故私が説明しないのか…
それは、私もよく分かってなく、ただ襲撃されたしか答えようがなかったから…

「大変なことに巻き込まれたわね、ティアラさん。ではタイツを脱いでもらえるかしら?」

「はい」


「何故シルベルトさんは、医務室にまだいるの?女生徒が素肌を見せるのですよ!出て行きなさい!」


「し、失礼しました。あ、では、少し会場を見てまた戻ってきます。ティアラ嬢、ここにいてくれ、私が戻ってくるまでここに!分かったね!!」

「え…」
と言った後はバタンとドアが閉まりドッバタバタと走る音が聞こえた。

「廊下は走らない」
という先生の声は聞こえないだろうし、私の何故あなたを待たないといけないのでしょうか、という疑問をぶつけることもできなかった。

?が頭にグルグル回るけど、そもそも何故襲撃されたのか、誰でもよかった?運が悪かったのか?怖さと怒りが込み上がってきた。

「大丈夫?少し横になりなさい。足の捻りは二、三日で良くなるわ、手の甲も消毒して大丈夫でしょう。でも心がついて来ないでしょう。少し寝て気持ちを落ち着かせなさい。もう卒業式も終わって、そのまま卒業パーティーに移行するでしょう。賑やかな声になる前に休みなさい」
と先生は温かい毛布を更に上からかけてくれた。

横になると、今まで気が張っていたのか目から涙が次から次に出てきた。

怖かった。
何が起きたかわからないぐらい、自分では何も出来なかった。

なんでこんな目に遭う…

先生は、何も言わない。
何かを書くそのペンの音だけが部屋から聞こえた。
私は、少し泣いて、すっきりして知らない間に私は眠りについた。
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