アグーと呼ばれた悪役令嬢は、不本意ですが設定崩壊したのでハッピーエンドを迎えます

犬野きらり

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12ゴリラ令嬢脱却計画4

ドミニオン商会の馬車が着いた。
降りてくる時のヘンリの表情は、いつもの調子良さげなヘラヘラ顔じゃなかった。
緊張している?

みたいだな。
まぁ、公爵に直接会うんだものね、平民がそんなの無理よね。
オッホッホッホ
ここはお友達の私の出番!

「ヘンリ、緊張しているの?大丈夫よ。ちゃちゃっと妄想話して、素直にごめんなさいすれば、子供だから許してくれるわ。お父様だって暇じゃないもの」
と言えば、

深い溜息が漏れた。
「何で俺、こんな馬鹿な悪役令嬢に話しちゃったんだろう?普通こういうのは黙って事が運ぶんだよ。変えるのもこっそりでさ。何で全然関係ないとこから横槍が入ってくるのか、ハァ~全くアグーのくせに」

ハン!?
めちゃくちゃ失礼なこと言ってくれたわね。
「アグーじゃありません、小熊ちゃんです」
とそこは、はっきり否定しなければならない。
「そこじゃないだろ~」
と恨みがこもった目で私を見てから屋敷に入る。

「ヘンリさん、まずお一人で旦那様と奥様がお話をしたいそうです。お嬢様は、後ほど、私が自部屋にお声をかけさせていただきますのでよろしくお願いします」
と執事長にいわれた。

「わかったわ」

部屋に戻ると沢山の本が並び立つ。
お土産、それは菓子じゃなくて勉強の本ばかりだった。
あの大きな木箱には7冊もの本が入っていた、まさか家庭教師がくるなんて。
健康なんだから、勉強をしても問題ないだろうって。
問題大有りですよ。
朝トレーニング、はい、疲れるのに、ここから勉強?ないよね、と思ったらお母様の剣術講座は明日より本格始動と朝食で宣言された。
しっかり覚えている母様も困ったものだ。
甘い雰囲気出しながら、話す言葉は、私への殺傷能力高めで、スープの味がしなかった。
なら、夕方のトレーニングがなくなるかと思いきや
「日が長くなりましたからね、余裕ですよ、お嬢様」
ドリーの言葉でまた打ちのめされた。

どうやら我が家全体、ゴリラ令嬢脱却計画本気モード突入らしい。絶対トレーニングから私を逃さない気だ。
恐ろしい

でもちょっとだけいい事があった。お父様に
「王都のお菓子が食べれなかったのは可哀想だから、私が王都に帰る時、一緒に帰って買えばいいじゃないか」

素晴らしい天啓の言葉
『そう、無ければ買えばいい』

その通り!
最近何かおかしいかった。あのドリーからもらったフルーツパイ。
あの時ドリーに感謝した。
なんて親切なメイドなのかと。
でも寝る時に考えたの。応接室出たあと使用人の休憩室に行ってフルーツパイ全部回収すればよかったわけでしょう。

だって、お父様が買ってきたものは私のものだもの。

夜、後悔を繰り返して、イライラもモヤモヤも何回も手から爆ぜたわ。
おかげで体調は絶好調、スッキリ穏やか気持ちいい風を感じながらのランニングだったけど…あの手から出る空気球って…?

「お嬢様、旦那様方がお呼びです」
と執事長に声をかけられた。
「はい、今いきます」

結局今の時間一ページも本を捲らなかった。

「失礼します」
と部屋に入れば、何と表してよいかわからない雰囲気だ。
一言で言えば、とても気まずいだ。
青白い顔をしたヘンリ、きっと私の両親に攻められたのかしら。

可哀想ね、

「いかがされましたか、お父様?」
と聞けば、
「ガザニスタン王国が戦争を起こすなど…そんな情報はどこにもない、簡単に言っていいことではない。とても彼の話を信じられない」
と言った。

「確かに戦争なんてびっくりですよ。起きてもいない事言ったら罪になってしまいそうです。ここは私のお友達という事で水に流して、聞かなかったことには、なりませんか?」
と父様に提案してみた。
しかし、難しい顔のまま、答えはない。

「お父様、リューエン公爵には本当にアザミという平民の娘がいるんですか?」
と今度は違う角度から聞いた。

アザミという少女がいることは、ヘンリから聞いた。私は嘘とは思っていないけど、それはヘンリがその少女に恋をして妄想が膨らませたのではないかとも思った。その子が貴族の娘かどうかは戦争有無より調べやすいと思うけど。

その平民の少女の信者に刺されて殺される役には納得していないけど。

「それは知らないな。平民に愛人がいるなんて聞いたことがないからな。メリッサ知っているか?」
と父は話を母に振る。
「聞いたことはないですわ、夫人はいつもリューエン公爵の自慢話をしているもの、それにもしそれが事実なら、彼女のプライドが平民が愛人というだけで許さないと思います」
と言う。

リューエン公爵夫人って、母様でも静かに話すほど怖い人なんだ。

「リューエン公爵に聞いたら、いけない話なんですか?」
と質問をした。
「当たり前だ。隠している秘密を暴かれるなんて」
と父様が言った。
「では、様子見ですね。昨日考えたのですが、レイモンドという会ったこともない従兄弟が突然兄妹になるより、お母様、どうにか弟を産んでくださいませ。お母様の鬼の体力ならまだまだ大丈夫ですよ」

理不尽な母様の訓練を逃れるための手段を、ずっと考えていたのですよ、
そう、私に構うより新たな生贄をじゃなく天使な跡継ぎを!
私に騎士は無理だけど、次を育てたいなら、次世代に期待すればいい。
とてもいいアイデアだ。
これで剣術も解放される、フフフ。

「なん、なんて破廉恥な、リサーナ、一体いつそのような事を知ったのですか!」
と母様は真っ赤な顔で私に言う。

「何言っているですか?神に祈るんですよね?毎日数時間祈ればきっと願いは叶いますよ」
と何を興奮する事があるのかわからない。

「神、そうだね、祈り、信仰だな。確かにね、もうリサーナは健康体だから、赤ちゃんが産まれても、大丈夫だな。確かに確かに、ね、メリッサ」
と父様は満面の笑顔で母様を見る。
母様はずっと真っ赤だ。首まで真っ赤。

さっきまでの緊張感や居心地の悪い重い雰囲気が消えた。
父様は嬉しそうだし、母様も嬉しそう!?

ただ一人目線が泳ぐヘンリを除いて。
だからヘンリは救出してあげなきゃ、お友達だもの。

「用件が済みましたか?ヘンリを連れて散歩したいのですが」
と言えば、お父様から了解が下った。

「さぁ、行きましょう、ヘンリ」
と今が見ごろのオレンジの薔薇園まで案内する。その間ずっと黙っている、ヘンリ。
「どうしたの?」

「あのさ、もし、お嬢様に弟が本当にできたら、物語が変わる。俺も知らない毎日が始まる」
と静かに話す。
それは、そんな深刻なことなのかしら?
この領地内でも一年に百人くらいの赤ちゃんは生まれているだろうし。

「ヘンリ、今の発言は変よ。今日も明日も知っているみたいだわ。まるで自分の考え、妄想話や予知夢が絶対みたいな自ら聖男って認めているわけ?やっぱり、なりたがっている人ではないのかしら?何を不安がっているの?赤ちゃん?戦争?なら、国王様にどうかガザニスタン王国には近づくなと言ってもらえば良いんじゃない?」
と言えば、
「そんな簡単なことじゃないよ、戦争は!…人が殺し合うなんて」
と言葉を吐いた。

どうしたんだろうヘンリは?私の両親に何を言われたんだろうか?

「今、私の部屋に勉強の本があるわ。言語学とか歴史とか、ヘンリがやれば良いわよ、あげるわ、そうよ、勉強してヘンリがガザニスタン王国に留学しに行って戦争反対と訴えてくればいいわ。今から部屋に本を取りに行くわ」
「いらない、それは、リサーナ様の為の勉強本だろう。俺のせいにしてサボろうとするなよ」
と正解を当てられてしまった。

「ザント男爵様には、ガザニスタン王国から連絡があったら、手紙をもらうことになっている。お嬢様のおかげで信頼と友好的な関係になれた」
とボソッとヘンリは言った。

やっぱり、自分の妄想話が絶対だと思っていて、それが怖いのかな。
自分が言ったことが事実になるって不気味だものね。

「そう、クリスのところに支援するのね、なら私も両親に頼むわ、大丈夫よヘンリ、友達だもの、どうにでもなるわ。心配ならまた権力者の友達を増やせばいいのよ。まぁ私がついているからね、大丈夫でしょうけどね」
と胸を叩いて誇示した。
そう、私は貴族のトップ、プラント公爵令嬢よ!

「一番当てにならない公爵令嬢かよ」
と笑ってヘンリは言った。
「でも、結局お嬢様に期待しているよ。俺は」
と見ごろの薔薇を愛でながら言われた。

まぁ、友達だもの困っている時は助けてあげようと心に決めた。
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