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14ゴリラ令嬢脱却計画6
「今日は、奥様がトレーニングはお休みで良いと言われました」
ダイニングで席につけば、ドリーから告げられた。
よし、計画通り!
「今日もお母様、お父様は自部屋で朝食?」
とドリーに聞くと、少し照れた微笑みで
「ハイ」
と言う。
「朝食一人は寂しいわね」
…
「そうですね、しかしこれもプラント公爵家幸せ家族計画ですから、少々我慢してくださいリサーナ様!」
とドリーに力説され、頷く。
幸せ計画なるものがあったのか…知らなかった。
「なら、アグー脱却計画は終わったのよね?お昼は分厚いベーコンのサンドウィッチがいいわ!」
と昼食のオーダーをする。
もう小熊ちゃんなんだから食べ物ぐらいね、蜂蜜だってオッケーでしょう!?
「先日言ったはずです、現在第二段階ゴリラ令嬢脱却計画中です。まだ四足歩行動物です。目指せ妖精令嬢ですよ我々は!」
「え?」
よ・う・せ・い!?
「落ち着いて、ドリー、妖精も人間じゃないわ、私、人間が良い!」
そう宣言すれば、ダイニングにいた使用人全員から、
「「「我々の最終目標はプラント公爵家に住む妖精姫と言わせてみせます」」」
いやちょっと待ちなさい。
妖精なんて妄想、空想世界の住人じゃない。そんなふわふわな存在ではないでしょうよ、私は。
我が家の使用人達みんなどこかのネジがおかしくなったのではないでしょうか?
恐ろしい~
これは、間違いなくヘンリ案件。
もしや、今、妄想物語が流行しているのかもしれない。
*
「カリツォーネ先生、今、世の中の流行は何ですか?」
と質問した。
「良いですよ。令嬢たる者、流行に敏感であれば会話術に弾みがつきますからね。そうですね、今、王都で流行している演劇は、伯爵が商人の振りをしてその町に蔓延る悪者を成敗していく捕物とある子爵令嬢が歌姫カナリヤと呼ばれるまでの成長物語ですね。王都のお菓子は今カスタードクリームの菓子が流行ってますよ」
「何ですか?そのカスタードクリームとは?聞くだけで美味しそうな響き。絶対来月の王都で食べます」
とまたしても口の中が想像しない甘い幸せに心が躍る。
カ・ス・ター・ド・ク・リー・ム
オッケー完全に記憶に入りました。
「リサーナ様、来年からは学園生活ですから、いつでも食べれますよ。それより、貴族院のことを少し教えておきますね。こちらは、貴族の揉め事に関して訴える事ができる場所です。10歳から裁判で争えますが、子供が提出した例は、お家騒動です。両親が亡くなり、叔父や叔母からの財産搾取を防いだ例があります」
「先生、貴族同士なら金銭や密約、名誉や喧嘩もありませんか?」
と聞けば、
「貴族院では、書類を出せば調査されます。知られたくないことも全部。身内の恥を隠すため、貴族籍を抜いて裁判を無くしたり、覚悟をもって争わなければいけません」
「随分と物々しいんですね」
「争うとはそういうことです。一応、知識としてね、足元を掬われたら大変ですから」
「はい、用心します」
少し学園生活不安になったよ。
「では、地理をやりましょう、ガザニスタン王国については、鉱石、鉱物の交易が盛んですね」
ガザニスタン王国か、
「この国は争いが好きなんですか?」
と質問すれば、
「突然ですね、ガザニスタン王国ですか?確かにガザニスタンが軍事強化中というのは聞いていますが、鉱石の産出国と戦いは、歴史深く関係ありますね。残念ですが」
と先生は言った。確かにね、ヘンリの妄想話では、
「スリアム公国」
とボソリと呟いた。
「次は、スリアム公国ですか?確かにあの土地は、山越えでガザニスタンとは繋がっています。しかし薬学に長けていますし、あの国のお陰で安定した薬の調合や新薬の取引が出来るわけで、守られる国ですね、知識とはそういうものです」
「薬、か~、先生、魔草って知ってますか?」
これもヘンリの妄想話だけど、聞いたことがない草だったので質問した。
「魔草、魔物退治に冒険者が使うと聞いたことがある感覚麻痺薬の原料…それは生育禁止の草よ、一部の管理区間でしか栽培されてないわ」
そんな危険な草をクリスの所に持ち込もうと企てた話を思い浮かんだのかヘンリ!
これは、お友達として注意せねばならない。
*
屋敷の前に一台の飾りも何もない簡素な馬車が到着した。
「お邪魔します、リサーナ様」
と遠慮がちなクリスと、後から降りてきたヘンリ。
「よぉ、リサーナ様」
「まぁ、挨拶がなっていませんが、ヘンリがクリスを迎えに行ってくれたから良しとします」
と満足気に頷きながら二人を見た。
「さぁさぁ、こちらへ来なさい。二人のおかげで、午後のトレーニングは無しよ、今日のお茶会の菓子はオレンジパイですって、楽しみよね~」
と言えば、ヘンリは、
「結局、俺達をダシにしてサボったり菓子目当てなんじゃないのか、お嬢様。ここの使用人達が、怖いぞ」
と笑っている。
ハーン!?実はその通りなんです。菓子の誘惑と大手を振ってトレーニングの休み…至福の時。
「リサーナ様は更にお痩せになってお綺麗になりましたね。初めて会った時と顔つきが全然違います」
とクリスが言ってくれる。
なんて良い子なのぉ~
「今、ゴリラ令嬢脱却計画中なんですって、」
と言うと、ヘンリはお茶を噴き出した。
「汚いわよ、お茶のマナーどうなっているのよ、ドミニオン商会は、礼儀を習った方がいいわね、下男達もね!」
と言うと
「マジかよ、知っていたのか、ゴリラ令嬢って言われているの」
とヘンリはマジマジと私を見る。
「勿論よ、話せば伝わるものよ、きっと他の貴族達は直ぐに不敬罪って騒ぐだろうけど、ヘンリはお友達だからね、寛容な公爵令嬢たるリサーナ様だから許しているのよ。でもやっぱり躾は必要よ、反省して、今日の菓子のオレンジパイは、私にくれても良いのよ」
「はいはい、ありがたき幸せです。リサーナ様の恩情。でも菓子はあげないな、自分の分だけで我慢しとけよ、まだゴリラ令嬢中だろう」
「ウッキー!」
と片手を上げれば、
「そこはウッホーよ」
とクリスも笑いながら参戦する。
全くお友達だから許しているのよ。
「クリス、ザント男爵領の土地は、小麦に向かないだって、カリツォーネ先生が言っていたわ。水栽培の良い作物があれば良いわね、ヘンリなにか無いの?」
と言うと、
「まじ、そういうとこ傲慢令嬢、代わり映えない悪役…感じるな。でも、それこそ妄想話が頭に流れた時にさ、コメってわかる?」
「「わかんない」」
とクリスと口を揃えて言えば、ヘンリは頭を掻いてから、
「まぁそうだよね、今捜索中の作物だ、まず原料がなければ発芽しないからな。絶対見つけたい物だ」
とヘンリは手を握り締めた。
「クリス花冠作らない?」
と私が提案すれば、クリスは笑って頷く。
「おい、俺の話ぶった斬るなよ」
とヘンリは不貞腐れたけど、興味ない話ほど面白くない。
「俺はやらないから」
といってきたから、
「ふふ、出来ないのね、残念だわ。これは強制参加です、一位の人はビリの人のオレンジパイを食べれるってどうよ~」
ふふふ、もらったわこの勝負。昨日丁度作り方を教わった私に間違いなく分があるわ!
悪いわねクリス。まぁ間違いなくビリはヘンリだろうから、クリスは自分の分を食べなさい。
狙いはヘンリのオレンジパイ!
庭に飛び出した私達三人。そして、
外のテーブルに花冠が三つ並ぶ。
一つは、オレンジと黄色の花で編んだ小さな冠
一つは、ピンクの花が所々かけていて茎が他方から飛び出している歪な冠
一つは、色とりどり贅沢な豪華と言っても過言じゃない大人サイズの冠
これは勝負にならない…
「…きょうは、勝負はやめま~す。デザインや欲しいものは人それぞれ、私は個人主義なのよ」
と言えば、
ヘンリは後ろにいたドリーを連れてきて
「順位をつけてドリーさん、これ勝負だから。売られた喧嘩は買う主義なんだ俺」
と静かに私への闘志を向けたその眼差し、嫌いじゃないけど、今じゃな~い!
「ドリー勝負はないの、個性重視よ。こういったデザインは!好きなのを好きなように愛でるそれが花!」
と言って見たが、ドリーは笑った。
それは良い笑顔で、
「一位は、ヘンリさん、二位はクリスティ様、三位は、リサーナ様です」
と宣言のように高らかに言い放った。
ヘンリは
「商人の美意識舐めんな。子供の頃から売れる物の審美眼は鍛えているし、手先は器用なほうでしてね、リサーナお嬢様。残念でしたね、オレンジパイ」
と私を見て意地悪そうな顔をした。
「嫌~~~~~」
という私のさけび声は、庭園に響いた。
遠慮しながら、仕方なさそうに食べるクリス、ザクザク大きく切っては口に入れていくヘンリ。
「あの~私に少しでも恵んでくれませんかね」
と聞くと
仕方ないなと私の分の半分が移動された。
「ヤッター」
と喜び御褒美のオレンジパイに身体が揺れる。
オ・レ・ン・ジ・パ・イ
で思い出した。
「ヘンリ、クリス知っている?王都ではカスタードクリームっていうのが流行っているんですって、王都に行ったら食べて来るわ。もしお土産に持ってこれそうなら買ってくるね」
と言うと、クリスは遠慮した。ヘンリは、
「カスタードクリーム、誰が考えたんだ?俺も一度王都に行く、調べたいこともあるしな」
「えーヘンリ君も行っちゃうの?」
クリスが悲しがった。
「直ぐ戻ってくるし」
うん!?
何やら甘い雰囲気?
「クリス、私にはそんなこと言ってくれなかったわよ?」
「そんな事ないです、リサーナ様も早く帰ってきて楽しい話聞かせて欲しいです」
とクリスは手を振り私に言ってくれている。
同じか、そうよねお友達だもの!
三人一緒に決まっているわ~
最近使用人達のせいで何だか疑い深くなってきたのよ、素直に受け止めなきゃ。
「ええ早く帰って来くるわ、またお茶会しましょうね」
と約束して別れた。
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