【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり

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16二年後

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8歳の誕生日を迎える日に手紙が届いた。カイル王子からだ。剣術を頑張っていることフランツ王子が眉と頬が動くようになったこと、まだ邪険にされてあまり目が合わないこと、そして誕生日おめでとうと小さな箱も届いた。それはとても可愛い青い尾の鳥のブローチ。
「可愛い」
と言えば、マリアも笑って
「本当に可愛いらしいですね」
と言ってくれた。なんとなくカイル王子に似ている気がする。

手紙の内容は、頑張っていると報告だったが、最初に見た死神に取り憑かれているような黒さを感じなかったので、王宮に入っても寝つけているのだと安心した。
「そうだ、来年の収穫祭は、剣術大会もいいかもしれないわね。警備隊員も気合いが入るかもね。最近の子供を拐う盗賊に対抗するためにも、一人一人が強くならないと」
「そうですね。一年ありますから村人も楽しめるかもしれませんね」
とマリアが言った。

収穫祭の日。男爵領内にハンナさん達を探しに来た盗賊が村の中にウロウロしていた事、シンさんや警備隊員達が捕まえてくれた事、王都に移送された事を私にもゆっくりと教えてくれた。取調べの内容は、あまり教えてくれなかったけど。

そしてお祖父様は、また王都に行ってしまった。

離宮

元国王と元公爵の二人だけ。
「レーリー、すまなかった。私が、まさかドミルトン男爵領にいる間に、城内の独房で始末されるとは思いもしなかった」
「いや、主犯格と思われるカイタル商会のタンという男、飄々としていながら、肝心なことを話さなかった。こちらでの取調べは限界だった」
と無念そうに言った。
「しかし、時間をかければ話したかもしれない。男爵領にいれば、始末されることはなかった。まさか刑務官のなかにもアステリア王国と繋がっている者がいるとは思わなかった」
「一度、きちんと側妃の周りの人間を調べたらどうか?こちらとしたら、カイタル商会を調査、取り締まりをしたいと言っている」
と言えば、元国王は、
「私には、それだけの力がない。国王が自ら動かねば、調査も出来ない」
「何故国王様は、動かない」
と聞けば、
「すまん、あいつは、揉め事が嫌いなんだ。問題が見えていても後回しにする。だから王妃が裏で政を動かしている。外交の取引も何度も繰り返されれば、面倒になって、側妃をもらう事でアステリア王国の外交をさせた。逃げるんじゃよ、あいつは、自分の手を汚したくないのだろう」
「それでは問題が解決しないではありませんか?元を断たねばまた子供達が拐われる」
と言えば、
「側妃に報告することで忠告したと思っているようだ。最近は、私達とも会わないよ」
いや、それで済むのか一国の王が、と心配になった。その心配を察知してか
「だから王妃は、フランツにかなり厳しい教育をしている。そしてこれは私の罪でもある。わかっているんだ、レーリー。どうにかなるかわからないが、一人、手紙を書くことにした。戻ってきて欲しいと。もちろん、話を聞いてくれるかもわからないが、頼んでみようと思っている」
と私の目の前の友人は、肩を落として小さくなってしまった。

自分の息子のせい。
自分の息子がしっかりしないからだ。

子供に甘いのは、親の性。だけど国王なんだ、それでは民はついてこない。友人だが腹が立つ。
こんな話、聞きたくなかった。私達も子育てが成功したとは思っていないが、やっぱり立場上、国王が尊敬出来ないとこの国は駄目だ。面倒くさい、争いが嫌だ、何を言っているんだ!
この国に未来が見えない。悔しいが自分も引退した身。

私は、これ以上ここにいると友人を傷つけてしまう事がわかっていたので、立ち去った。
ただひたすらに残念な気持ちを残して。

そして、魚釣りをアーシャとしてる最中に懺悔をした。

ある日、アーシャは、バカンスに行きたいと言った。
そして、アーシャは、いつものように、
「たまたまです。偶然でした」
と言って一切名前も出さず盗賊達を海に落として、カイタル商会の怪しい名簿を押収、カイタル商会の違法をアーシャがバカンスで仲良くなった貴族が摘発してアステリア王国の本店を潰した。決してアーシャのせいではないと思いたい。

しかし私は、こうなる事さえわかっていながら、アーシャにだけ言ったと思う。家族にまた懺悔した。私は、妻に叱られ、息子や義娘にも叱られ、しばらくマークも口を聞いてくれなかった。これは、我が家では、禁句な話。


そして二年後

「アーシャ、フランツ王子様のお茶会の案内が来ています。早く返事を書きなさい」
とお祖母様が急かす。
「行かないってあるのかしら?」
「アーシャ様、ないですね」
とマリアが冷めたカップを下げる。
「何を言っているのかしら、あなたは。伯爵令嬢なのだから招待されるに決まっているでしょう!」
「男爵令嬢のままが良かったですわ、お祖母様。8歳の誕生日を終えた後、まさか誘拐を防いだ功績をお祖父様や父様に与えられるなんてびっくりしました」
「まぁ、それだけじゃないけど」
「なんですか?お祖母様」
聞いたところで元国王夫妻と内密に練って出した褒賞は、お祖父様は治安維持、お父様は、領地の税収増のため位を上げるという建前だ。
本当はどうだかわからない。
「お祖母様、フランツ王子様の婚約者を決める茶会ではありませんよね?」

「大丈夫よ、アーシャ。違うわ」
「面倒なところや場違いな所に行きたくありません」

「大丈夫、です」
「お祖母様、間がありましたけど。もっとも怖いのはルイーゼ様ですよ。見る目が怖い。エリオン様の誕生日会だって、私、挨拶しただけでずっとカーテンの裏や控え室で隠れていたんですよ。護衛のシンにも聞いてくださいな。何度も殺気を感じたと証言があります」
「あの事件からルイーゼはこちらに寄り付かないようになりましたから、私は、ニ年会ってませんね。誕生日会にも行ってませんから。エドワードに手紙は送ってありますが、やはり改善は無しね。こちらの領地を目の敵にしてるようだけど、所詮は子供の戯言。イザベラ夫人も優秀な家庭教師をつけたと言ったきり、あの方も自分の事ばかりで子供を見ていないわね。わかったわ、茶会では、王都の宿に泊まりなさい。ライルにも伝えるわ。本当に今のルイーゼならあなたを閉じ込めかねないわね」
「お祖母様、そうまでして茶会に行く必要を感じません」
「カイル王子様とも全然会ってないでしょう。せっかくなら会えるのではないかしら?」
定期的に手紙のやり取りをしているが、ほとんど報告書みたいなもので、会いたいとかそういうのではないような。
収穫祭も今年は来れるか、聞いてみようかしら。
ハァー大きな溜息が漏れる。マリアは笑っているが、お祖母様は、扇子を出した。ピシッと背筋を伸ばして、
「では失礼します」
と言った。廊下では、シンさんがいて肩を上げた。
「参ったわ。また王都に行くのよ」
「エリオン様の誕生日会も公爵家に泊まりもせず、帰りましたからね」
「かの令嬢が手ぐすね引いて待ち構えていたのがわかってましたからね。全く同じドミルトンなのに、何故ああも交戦的なのかしら?」
「嫉妬でしょうか?」
とシンが言えば、ないないと手を振った。
「何故あの方が嫉妬するのかしら?身分だって上でしょう」
「身分は、そうですね。そういう事ではなくて、アーシャ様には沢山の味方がいて、何でもやってしまいますし、何でも持っているように見えるのではないでしょうか?」
「あら、取り巻きなんて一人もおりませんし、私はいつも一人で隠れています」
と胸を張って伝えると、
「確かにそうですね」
とシンは笑った。

部屋に着くと、例の紙を見た。何度も書き直しているが、また黄ばみやインクの変色が目立つ。
10歳のフランツ王子のお茶会。ルイーゼが婚約者になる…
ここ、ルイーゼじゃない人がなったなら、平和的解決するのかしら?
いやでもマリーさん出現は、学園。
やはり婚約者になった人は、惨めに感じ意地悪しちゃうのかしら?恋心というもの?
ハァー。
お祖母様の婚約者を決める会じゃないというのは信じられない。
やはり、初っ端から隠れよう。
カイル王子に手紙を出してみよう。隠れるのを手伝ってくれるかもしれない。私は、王宮なんて知らない場所だから、良さげな隠れ場を教えてもらおう。
急ぎカイル王子に手紙を書いた。


「兄様、アーシャから手紙が届きました。久しぶりです」
「良かったな」
「やはり、今度のお茶会、令嬢の皆さんは、兄様の婚約者決めの話になっているみたいですね」
「で、カイルの学友は何と?」
「王宮で隠れ場所はないかと言ってきました。アーシャは相変わらずです。今年は収穫祭に行けそうだし、私は、アーシャと話をしたいので、私の応接室に案内します」
と言えば、
「カイルの学友に兄である私が挨拶しないわけにはいかないだろう。私もお茶会は面倒なんだ、しかし王妃がしつこいし、カイルだけ逃げるのは無しだ。学友にもきちんと参加してもらえ」
と肌の色が陶器のように白い兄様が言った。
「アーシャと久しぶりに会えるんですよ。話したいことが沢山あるんです。お茶会には出たくないです」
「カイル、お祖母様や王妃に言いつけるぞ、第二王子としての責務だ」
「ハァーアーシャになんて書こうかな」
と肌の色は日に焼けて傷の変色加減が目立たなくなったカイル。遠くを見ながら嬉しそうに笑った。
アーシャの隠れようという発想が、面白かった。兄様は呆れていたけど。
「兄様、エリオンには内緒にしてくださいね」
「なんでだ?」
「兄様、エリオンのやつ、自分の誕生日会にアーシャを招待して、すぐ帰らしたから挨拶だけで、話したり会えなかったんですよ。私も招待されなかったし」
「何の意味がある?お茶会の時間的に前日に公爵家に泊まるだろう。エリオンだって知っているだろう」
「兄様、エリオンの妹がかなりやばい令嬢なんですよ。エリオンだって呆れているし、困ってるから、アーシャと妹は会わせたくないはずです」
と早口で言った。
「前も言ってたな、男爵領での傲慢で高圧的だっけ?エリオンも私には絶対に会わせたくない不出来な妹と言ってたな」
とフランツ王子が言えば、大きく頷きながら、
「今も治ってないらしいですよ。意地悪や陰湿らしく、特にアーシャは従姉妹で目の敵にされているそうですから」
と嫌そうな顔で言った。
「とにかく、学友には婚約者を決める会ではないから、隠れなくていいと言ってくれ」
と兄様は言ったが、実際は違うだろう。
「いや、私としては、早く兄様が婚約者決めてくれる方が良いんだけど…」
「何か言ったかなカイル第二王子」
顔を振り、手を振って部屋から出た。
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