プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり

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11 黒豹side

俺の後を追ってくる女。怪しすぎる。依頼者か?最近うちの盗賊団は、盗みだけでなく暗殺もやっている。まだ俺は殺していないが、何度か見張りを命令された。その内、俺にもまわってくるだろうが…
報復者にしては間抜けだなぁ。

あの角と壁側に隠れられるか?
とりあえず、気配を消せば、見つからないか。
なんで商人令嬢みたいな格好をした女が、俺を追う?考えてもわからないな。

黒豹と仲間からは呼ばれている。名前は覚えていないし、記憶もない。

まさか、俺のことを知っているのか!
子供時代とかか。
頭によぎる選択肢。

俺は、この女の前に出てみた。まず俺の足なら、撒くことは可能だ。いざとなれば戦うことも…

「何の用だ」
と聞けば、息を切らしながら、一緒に来てくれと言うし、後から侍女らしい女も来た。どこぞの令嬢か。
盗みに入った家か?
なんかごちゃごちゃ言い始めて、馬車に乗れと命令してきた。
知らないヤツの馬車なんかに乗って役人とか騎士とかいるパターンか?
こいつら囮で、周り囲まれているとかか?キョロキョロ見て、周りの音を聞くが、そんな様子はない。

いきなり頭を下げてきた。不気味だ、怪しい…

それに銀貨1、2枚で馬車に乗れとか貴族の屋敷に下見だとかどこまで知っているんだ、この女。
と初めてこの女の衣装ではなく顔を見た。明らかに貴族の娘。まだ幼い。10歳ぐらいか?子供じゃないか。

そして裏通りの最近出来た店の用心棒をしている二人組が、こっちを見ている。この子供に用があるのか?俺の事も見ている。知り合いではないが…
様子を見ることにした。

馬車から逃げてもいいと言うから、仕方なく乗った。何を知っているのか興味があったからだ。
盗賊団が知られているというのは由々しき問題だ。もし本当なら、すぐにでも拠点を動かさないといけないだろう。

騎士や警備隊はどこまで知っているか、確認をしなければならない。

馬車に乗れば、いきなり目の前の貴族令嬢は、俺に対して、黒豹と呼び敬語と礼儀を尽くした。
意味がわからない。
何故平民の盗賊に貴族の娘が頭を下げるのか?不気味すぎて怖い。
隣の侍女も目の玉が飛び出すぐらいに見開いている。

この女怖い!黒豹って、何故俺の身元がバレている?
馬車から逃げようかと思えば、いきなり俺を王子と言った。

ハア!?

頭がいかれている。お芝居ごっこなら付き合いきれないぞ!

溜息をつかれた。
何故溜息を吐くんだ?
こちらこそ溜息をつきたい。
突然始まった話に、余計に怖くなった。何故知っているんだ?魔女と呼ばれる類か?
俺は北の森で盗賊団に拾われた。確かに幌馬車に乗った。何年前だったか?もう二年は経つか?記憶もない。だから名前もわからない。何故あの場所にいたかも?回想に耽らせてくれない。どんどん先に進んでいく話に二年後王宮に忍びこんで騎士に捕まるって、あるあるじゃないか。確かに今、リーダーが、王宮に伝手を探していたと思う。まさか過去だけでなく未来もかよ。
適当に言っているのか?
俺のペンダントの話になった。第一王子の指輪と俺のペンダントが反応するだとあり得ない。ヒロインって誰だよ!
祈って記憶が思い出すなんてあり得ない話ばかり言って誰が信じるというのか。

こいつは馬鹿だ。

長い前髪の間から見たこの女の顔は、少しも悪びれた様子はなかった。
さも当然のことを言いましたとばかりに俺を王子と呼ぶ。

まさかラーニャと呼ばれている侍女信じたのか?あり得ないだろう。こんな作り話。お嬢様の夢見話。
反吐がでる。
帰ろう。
「どこに向かっている」
と尋ねれば、自分の家だと言った。馬車に紋章は入ってなかったか。さっさと何か金目な物を盗んで帰ろう。

本当は、今の生活が、嫌だった。たまに考えていた警備隊に捕まったら、自由になれるかとか。
人の物を盗らないと生きていけないって何なんだろうと考えていた。拾われたのが盗賊だから仕方ない、親がいないから仕方ない、自分に言い聞かせていた台詞。

なのに、突然なんなんだよ。これは!
家で隠れろだって。
王子認定で話進めて、隣国の王子が盗賊って困る?当たり前だろう。俺を偽物に仕立てる気か?
貴族の考えることはわからない。
他国荒らしてるとか、国際問題ってなんだよ。
想像だの妄想、夢って自分で言っていたなこいつ。
やっぱり危ない令嬢だったんだ。

めちゃくちゃ真剣に考えている、もうやだな帰ろう。ここにいるとおかしくなりそうだ。
またペンダントの事を言われた。確かにこのペンダントだけが、本当の名前にたどり着く俺の記憶。

この女の家も現在問題を抱えているらしい。俺は後回しにしたいと言われた。じゃあ、なんで連れてきた?
放っておけないと言ってこられても意味わからない。
頭を抱えてるのを見ながら、少し冷静にもなった。確かに、こいつは知りすぎている。俺の情報がこんなに漏れるような失敗はしたことはない。
明らかにおかしい。
なら、しばらくここで様子を見るべきかもしれない。
使用人、料理人?
まぁいいだろう。盗めそうなもの調べてリーダーに報告していいだろう。

馬車から降りると、少し空が赤くなった。何故かわからない何かに期待をしている自分に気づいた。
「記憶」
いや、期待はしない。



ミルフィーナの自室
買い物を終えて、一人、部屋でラーニャが来るのを待機していた。

「どうしようか?なんて言おうか、乙女ゲームでこの人知ってます。隣国の王子なんですよ。私保護しました」
って絶対駄目だよね。理由として認めてもらえないだろうその言葉に、もっと上手く伝える方法があれば良いんだけど思い付かない。

扉が叩かれた。きっと執事長だろう。勝手に黒豹さん連れて来てしまったし、たぶん全部がわかったら、
「良くやった」
と言われるのに、解決というか王子証明が出来ないし、まずそこなんだよ。
王宮に盗みに入ってもらって、王子に会う?
偶然会えるかな?騎士団に囲まれて、グサリで国際問題?
いや、正体不明なままの死体?
最悪だ。
今回誰と誰の恋愛模様に興味はないけど、この王子記憶喪失問題に関しては、ヒロインの祈りで解除ってね。
何かアイテムがあるのかしら?

ヒロインには、本編退場してもらうつもりだから、記憶喪失のままって申し訳ないのだけど。
その恩返しじゃないけど早くお国に返してあげたい。
自分の国に行けば、思い出すかも知れないし…
やっぱりヒロインパワーが、奇跡なんだろうか?
と考えるとアリサさんにお願いしたら、これから先、隣国に行くとか王子妃になるとか言いそうだ。

ハアー
なんで重なるのだろう、あっちもこっちもで、手の付け方がわからない。

「お嬢様、中々反応をしてくれませんのでこちらから開けさせてもらいます。ラーニャから聞きましたが、お嬢様がスカウトしてきた料理人ですが、名前は?」
と執事長に言われた。

肩がビクっと上がった。
あ、名前。
どうしよう。記憶喪失なんだよ。
まず隣国の歴史勉強すべきだった。
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